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聴いたよ新譜2021 vol.11
お世話になっております
暑くなってきましたね。上半期ベストの記事の方もたくさんの方に読んでいただき誠にありがとうございます。なかなか無いことでとても嬉しいです。私のような半端な知識と半端な文章ながら楽しんでくださる方がいるのだとしたらとても嬉しい限りです。
さて、余韻に浸っていたらあっという間に7月も終わりにさしかかってしまいました。2週間に1回upしたいと思いつつなかなか新譜を聴けていないなあと思っていたのですが、今月聴いた新譜を10作品まとめていけたらなあと思います。
思いついた順で列挙してますので順不同です。
いつもありがとうございます。
1. Darkside - Spiral
8年ぶりのアルバムなんですね…ニコラスジャーとデイヴハリントン。NYのインディ、エレクトロシーンでは各所で出現した才能の塊みたいな人たちですがこのコンビでのアルバムは8年ぶり
バレアリックサウンドとクールなエレクトロ、ギターのグルーヴで沈黙すら気持ちいい。最高のバカンスを味合わせてくれました。
暑い夜にこれを聴きながら仕事の帰路についていた時、何度も「本当にいいアルバム…」と反芻していました。ミニマルさとグルーヴィなセッション感、そしてバレアリックなサウンドで完全にトリップしますね…その展開もまたストーリー性があって毎曲惹き込まれる。シームレスというより場面転換に近い展開なのですが、楽曲内にダイブして楽しめるところがあります。何より全音カッコいいんですよ…才能を浴びに浴びてまるでそれこそ色んな意味でトリップした感覚を味わえる…(運転には集中しています)
素晴らしいバカンスをありがとうございました。
2. Clairo - Sling
アメリカはアトランタのSSW。
前作「Immunity」は元Vampire Weekendのロスタムが手掛けたのもありベッドルームポップの名盤としても話題になりましたね。宅録らしさと抜群のセンスで僕も何度も聴いた素晴らしいアルバムでした。今作はそこから2年ぶりの2ndアルバムとなりました。
圧倒的メロディセンス、奥行きある音像…2作目にして証明されてしまった感のある名盤だと思います。
チープさも含めて愛していた前作があり、先行配信の時点では「インディフォーク的路線かあ…最近多いしな…」と思っていたのですが、リリースされたアルバムを通して聴いた時完全に手のひらを返しました。インディフォークはインディフォークなのですが、メロディも声のニュアンスやバランスも、音像の奥行き、楽曲ごとの適度なバリエーション、ローファイらしさとウォームさの落とし所もすべて黄金比率で「え、なんでこんなにすごいの…?」と何度も何度も聴いてしまうアルバムでした。
クラシカルなSSWとしての才能が発揮されつつもルーム感はしっかりとあり、その距離感とインディらしさがまたClairoをさらに好きにさせる要因だと思いました。僕の中では年間ベスト10確実な作品です。好きすぎる。
3. Emma-Jean Thackray - Yellow
UKポストパンクシーン、サウスロンドンのジャズシーン共に界隈を賑わせる中でEmma-Jean Thackrayは全く違う系譜を感じさせるジャズアーティストという印象でした。
唯一無二のセンス、しかしながら根底にルーツとしてのジャズの軸をしっかり感じる。
かっこよすぎ…
これまでダウンテンポ、チルアウトな切り口の楽曲やダブ、エレクトロニカテイストのものなど様々あってどれも最高に心躍らせてもらったのですが、今作はファンキーな楽曲が多く、そこにブレイクンビーツやエレクトロ、アフロなどの様々な要素と圧倒的引き出しやインスピレーションの小技が展開され聴きながら脳汁ドバドバ出てしまいました。
出てしまいました。
ボーカル入りの楽曲も多くてアルバムとしての作品らしさ、飽きなさもしっかりとあり、個人的に言えば「今最も聴きたかったアルバム」という感じです。ポストロック、インディ好きの人に是非聴いて欲しいアルバムです。名作すぎる
4. Hollie Kenniff - The Quret Drift
Helios、GoldmundことKeith Kenniffの奥様ことHollie Kenniffのアルバム。美しい光のあるアンビエントが気持ちいい作品です。
Goldmund的サウンドスケープにデビッドリンチにインスパイアされたノイズのストリームが幻想的
まず言いたいのはこの夫婦の製作スピードおかしすぎるんですよ…昨年からHelios、Goldmund、夫婦ユニットのMint Julepでもそれぞれ毎年のように新作を作り、Mint Julepに至っては今年アルバム出して7月にまた新曲配信してますし…(めちゃくちゃいい曲でした)
そんな製作ペースながらこのQuiet Driftは作品としてもかなり完成度が高く、キラキラすぎない朝の雲海のような美しさがある作品なんですよね。カバーアートも素晴らしく、つくづく才能に驚くご夫婦です。素晴らしい。
5. Mom - 終わりのカリカチュア
Momの楽曲はこれまでサブスクやラジオで時々聴くくらいであまり聴いてこなかったのですが、今作を聴いて完全に痺れました。
ラッパーでもバンドマンでもない彼の現在の声、現在の音が詰まった作品。多岐のアプローチの後ろには凄まじい情報量があって、目を背けたくもなるけどとても綺麗
Hiphop的アプローチ、トラップライクなフロウ、ボイスサンプリングとフォーク的節回しの歌が絶妙に合わさる楽曲がイメージとして強い中でギターサウンドのあるポップな楽曲もある。歌の内容としてはドメスティックながら切実さも見え隠れしてリアルそのもの。
僕自身はこのジャンルがあまり元々好きではなかったのですが、このアルバムを通して聴くと全然違って聞こえて、細かく練り込まれたアレンジは全て芯が通っておりハッとさせる展開や所々で出るクセのある節回しもフォークのフッドをしっかりと感じさせてとにかく素晴らしい作品だと思いました。
しっかりと「現在の音」なのですが「現在世間で流れる音」ではなくて、この情報量や機微を愛する人によって大事にされて欲しい作品だと思います。メディアによって若者興味欲しさに殺されてはいけない重要な作品。
6. Drug Store Romeos - The world within our bedrooms
ロンドンの新人バンドのデビュー作
と聴くと最近のwindmil勢のようなテイストを思い浮かべるかもしれませんが、このDrug Store Romeosはミニマルなドリームポップバンド。
アイドル性も高く、曲の展開やサウンドスケープの気持ち良さもあるドリームポップ。なんだかんだ言ってこれ聴いてひと息ついてしまう
4ADらしいサウンドと言えばそうなのですが、特徴としてはやっぱりbroadcastやmúm、Au Revoir Simoneを思わせるキュートな歌声だと思います。そしてミニマルシンセとリバーブの効いたギター。とにかくリバーブで震わせて浮遊感のあるサウンドはまさにドリームポップです。
ジャンルに括ったり似た嗜好のバンドを挙げることはいくらでもできるかもしれませんが、楽曲としては独自性のあるリズム遊びや壊さないレベルでの楽しさある転調も多く、個人的にはとても好きな作品でした。
7. YeYe - おとな
デビューから10年、WONKの江崎氏、ミツメの川辺氏、BASIなどを迎えたミニアルバムとのことで早速聴いてみました。
弾き語りによる生々しさとシティポップによるリアル感じつつ、飾らなくてアートな作品。ちゃんと音がトレンドにより過ぎずカッコよくてそれがすごい
これまでも様々なジャンルのポップネスを持つ楽曲をリリースされていて、僕も「どの曲も好きです!」というほど聞いていなくて、やはりMOTTAINAIなどのインディ、オルタナティブなテイストこそ好みでした。前作の雰囲気もなかなか好きだったので、今作の剥き出しの生感あるテイストとそれこそ大人っぽい「おとな」には痺れました。
ジャーマンポップのノリも感じつつ、所謂シティポップらしさもありつつ、しっかりとインディ感を持ち生々しさを感じさせてくれる歌声が前面に出ていて素晴らしい作品だと思いました。
8. K.D.A.P. & Kevin Drew - Influence
カナダを代表するインディロックバンドでもあるBroken Social SceneのメンバーKevin DrewのソロプロジェクトK.D.A.P.の作品です。
00年代初期僕たちを興奮させた音で作られた渋くて優しいエレクトロニカ。イージーリスニングにも深く潜るにも良し
Broken Social Scene(以下BSS)と言えば僕にとって青春と言っていいほどたくさん聴きましたし新作も出るたびに聴いておりますが、今回感染症によって活気を失ったグラブシーンに向けて光を…とのことで製作したとのこと。楽曲としてはBSS的カラッとしたギターと、ビンテージシンセのエレクトロニカが合わさっている。一曲通してビートを曲げずシークエンスを変遷していきギターサウンドが乗っていく流れはBoards Of Canada(以下BOC)を思わせる。あのジリジリ感がBSS的爽やかなサウンドで光ある優しい音像になって包み込んでくれるんですよ…
たまらない
09. 食品まつり a.k.a foodman - YASURAGI LAND
もうアーティスト名からしてツボではあるんですが、実はかなり新譜を楽しみに待っていたビートメイカーです。
名古屋在住ながら今年イギリスのHyperdubと契約を交わしたことでも少し話題になったfoodmanですが、パーカッションを軸にしたミニマルで爽やかなエレクトロニカがとにかく聴いていて気持ちよすぎるんですよね。
BGMになりすぎずフックやアクセントもいいところに持ってきてくれる所も憎く、どこか異質ながらも自然と入り込んでくるアットホーム感。それこそfoodman自身が強くイメージした「平穏」とはこういうことなのかなと実感します。
10. Billie Eilish - Happier Than Ever
あんだけ売れちゃうと僕みたいなリスナーはひねくれた目線で新譜を聴いてしまうわけで、彼女の音楽性もよくわからずに髪の緑色だけイジってるクソメディアも思い出すわけで。そんな軽い気持ちで新譜を聴いた結果、僕は1つの壮絶なドラマを見終えた後のように放心状態なっておりました。
メインストリームに埋没せず独自のアングラ感を貫いた上、さらに光と闇の狭間を往来し最後には回収する素晴らしい作品
もはや言うことがないくらいのモンスターアルバムだったので逆にベストに選びたくないくらいなんですよ。そしてここで語るのすら躊躇します。色んな人が語るでしょうし、それこそ軽薄なメディアでも雑に取り沙汰されるでしょうし…
でも書きますけど…
サウンド的な素晴らしさがまず1番でした。生音とデジタルを絶妙に使い分けて世界観乱さずアンダーの魅力を保ち続けています。その上で乗るメロディ、歌の良さがしっかりとこのアルバム全体で表現できています。
そして誰もが書くと思いますがアルバム終盤の表題曲のクライマックス。ここまでの過程と盛り上がりが素晴らし過ぎますね…
歌メインのアルバムで56分ってかなり攻めてると思うのですが、それをしっかり聴き尽くさせる魅力とパワーを持ったアルバムってなかなか無いと思います。
7月
思えばあんまり新譜を聴けていなかったかもしれませんが…やっぱり夏をイメージするようなエレクトロニカやアンビエントに気持ちが寄っていくところもありつつ、Clairoのようなインディフォークの素晴らしい作品もあり、月末にはビリー・アイリッシュのとてつもないアルバムがある。素晴らしい月でした。8月も素晴らしい作品がたくさんあるので聴いたらこちらでレビューします。(METAFIVEの件は本当に本当に悲しいですが…)
というわけで下半期もよしなに
お疲れ様です。