My Father 「火星になんて、行ったりしないでね」
父と手をつないで歩いている記憶が映画みたいに映像として立ち上がってくることがある。たぶん、わたしが小学校3年生の頃で、親戚のお見舞いで東京の江古田の病院に向かっている道中の場面だ。
父とわたしは手をつないで歩いている。
父がおもむろに「こうして手をつないで歩いてくれるのも、今のうちだよね。きっと今に手をつないでくれなくなるよね」とつぶやくように語りかけてくる。
急に寂しくなったわたしは、「そんなことないよ、大人になっても手をつないで歩くよ」と必死になって否定する。
ベタなドラ