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軟骨夫妻 〜なんこつふさい〜①

漫画「軟骨さん」単行本出版記念

副音声的夫婦対談(というか雑談)


コミックMeDu にてWeb連載されていた漫画「軟骨さん」(作者:佐藤達木)が企画の始まりから5年目の2023年4月28日についに単行本化されました。
このテキストは2023年5月4日に作者夫婦(結婚14年)がお菓子を食べながら録音した軟骨さんにまつわる2時間の雑談をAIに文字起こししてもらったやつに手を加えたものです。なおここでは作者自身は「私」、妻は「妻さん」など呼称を変換していますので(恥ずかしいから)ご了承下さい。漫画「軟骨さん」単行本(紙でも電子書籍でも)ご購入の方向けの特典副音声的なものとしてお読み下さい。なお長いので何回かに分けて更新する予定です(忘れなければ)。


目次

● 出版にあたって一言
● 妻の活躍と妻について
● パース、グリッドの協力
● アパ活のフォロー
● 夫についての良いとこ悪いとこ
● 健康状態
● 妻から見たササトウは本人と比べると?
● 現代のエロ需要
● 見た目についての認識
● 妻から見るササトウはちょっとアカンやつ
● 作者から見たササトウは?
● この大人は敵か味方か
● 創作は趣味か仕事か
● 技術レベルの問題



● 出版にあたって一言

「はい。 じゃあ、まあ、なんか、 一応ね、軟骨さん出版記念 ということで、軟骨さんの作者佐藤達木とその妻の対談というか雑談みたいなね。 軟骨夫妻みたいな感じで、 これ録音したものを、文字か何かに起こそうかなみたいなやつなんで、 途中ここはあれだなってのは、 編集ってか使わないんで、 別にそんなにこう、気張らないで、 普通に喋ってて。  まあとりあえず、 じゃあ最初ね、 まず出版にあたって、 一言ずつ。 」

「私も言うの? 」

「いや、言うよもちろん。 軟骨夫妻(なんこつふさい)って言ってるから。 どうぞ。」

「 作者から。」

「作者から。 まあこれ、 えらい時間かかったけども、 どうにかね、 本が出ることができたというね、 途中でもヒヤヒヤした時あったよね、 個人的にはね。 まあこれは、 妻のおかげとかね、 いろいろ、 編集の人に泣いてもらったりとか、 ありましたけども、だからまあね、 おかげさまで、 まあどうにかね、 物になったってことで、 妻さんも一言まず。」

「 お疲れ様でした。」

「 ありがとうございます。 」

「一冊でも多く読んでいただけると嬉しい限りですな。本当にね。」


● 妻の活躍と妻について

「 いいですか、それで。じゃあ次、妻の活躍について、もしくは妻についてとかね。 これまあ、 私からまず。これほら、 読む人、 この作者って何で夫婦で喋ってんだよみたいな感じに、 まずなるんで、 まず夫である私がその経緯を説明して、妻の説明とか色々ね、 するから、 その後に今度、 妻が、 まず漫画家以前の、 一夫として、 どういう感じなのかっていうのを ちょっと一回説明してもらうというか。じゃあまず妻について。 まあ、 仕事柄も、 グラフィック的な、 グラフィックのね仕事して、 あと長いこと同人活動もやってたり、 漫画も描いていましたと。 」

「うん。」

「 でまあ、 二人のね、 出会いもそもそもなんかそういう、 私が妻さんのね、 絵柄とかにちょっと惚れ込んで、 そこからこう、 ね、 あの、 今に至るみたいなのもあるんで、 そもそも画を描く人だし、 あとデザインをこなせる人ですよっていうのがまずあると。 ただ今回の漫画に関しては、 まあ、 私もあんまりその家族を巻き込みたくないというか、 これ、 軟骨さんの最初の同人誌版の時に、 妻さんを巻き込んで、 すごい妻さんだけ、 なんか、 あの、 残業じゃないけど 」

「あー、 最後出版までのなんかデータ作りの、 ブラッシュアップの段階は、 徹夜してたから。 うん、 私しかできなかったし、 しょうがなかったけど、 つらかったね。」

「 あれで私はもう自分の漫画のために人の睡眠時間まで削りたくないよと思って、 だから今回はできるだけ、 自分でね、 描こうと思ったんだけど。」



● パース、グリッドの協力

「まあ要所要所に、 その、 妻さんに手伝ってもらう、 手伝ってもらうというか、 なんかその、 なんだろう、 例えばね、 絵のパースとか私、苦手だから、 パースこれ大丈夫?とか、 そういうの妻さん得意だから、 そういう、 ここちょっとおかしいとか 」

「ちょっとびっくりしちゃったんで、 そうそう、 さすがに黙ってはいられないな、 これって。 」

「袋餅編とかの、 最初の方の建物とか、 私も2時間くらい粘ったけど、 描いたやつ、 妻さんに見せたらちょっとおかしいって言われて、 まるまるそこカット、 てか描き直したっていうのもあるぐらい、 やっぱパースとかに関しては、 私、本当にめっちゃ苦手だから。あとはグリッドって呼んでるんだけど、一つのパースみたいなもんだけど、 ベースになるような当たりの線みたいなもの自体を妻さんに一回作ってもらって、誕生編で、ブラックホールみたいに吸い込まれるところとか、 」

「あれなんかこう… 同心円みたいな楕円。」

「 ドーナツが何重にも重なってるみたいな、 あれが綺麗にラインがあったところに絵を載せたいなと思ったんで、あそこもね、作ってもらって。 」

「そういうのはパソコンで作る方が簡単なのよね、 むしろ、夫さんが苦労して同心円を作るより、 こっちがバッとやった方が全然早いし、夫さんがやるより。」

「そういうのもやってもらったし、 あとまた他のグリッドも作ってもらった気がする。 何かなかったかね? 同心円のやつ… あ、あれか!本の表紙を。」

「 ああ、そうか、これね。 この表紙の軟骨さんのバックの… 綺麗にこの軟骨さんの形が大きくなるようにっていうのをイラレでやったり。 普通にやると変な風になるんだよね。」

「あたりの線をイラストレーターで作ってもらったりして、 それをトレース台に乗っけて、自分がさらにそこから上に絵を描くみたいな。」



● アパ活のフォロー

「そういう部分の協力みたいなのもそうだし、 あと生活で言えばね、本当にね、結局時間無いよっていうのがずっと… こんなの、いつ終わるんだっていう感じで、 最初は土日休む、絶対休むということで始まったけど、 これもう到底間に合わんということで、 なんかほら日曜日とかに、俺が一人でアパに… アパ出張…出張ってか近所なんだけど。 テレワーク応援プランとかがあったから。 ちょうどコロナで、アパも客室を埋めるためにテレワーク応援プランやり始めて、 それ結構良かったんだよね。 アパ原稿。アパ原。それで割と安めに半日とか借りられて、 やっぱり小さい子供がいると、なかなか家で休日とかに隙をついてやるっていうのも、 これもなかなか難易度高くて。」

「 静かに遊んでるなって思ってたら、もう1分後に来るで。 」

「来るね。(笑) 」

「1分後じゃないな、もっと早いかも。 だからもう… ずっと来るから。」

「 だからもうこれちょっと無理だなっていうか、 特に最初の誕生編の頃とかの、本当に中盤ぐらいからアパとか使いだしたんだけど、 やっぱり良かったと思ったよ。 9連続で見開きが来るようなあたりとかも集中してやれて。 あれもバッチリ、アパで描いたんだけど、やっぱりすごい集中力増したから。 」

「アパポイントも溜まって。 」

「アパポイントもいっぱい溜まったしね(笑)」

「でもなんかテレワーク応援プランなくなっちゃったもんね。 」

「テレワーク応援プランね、うまいことにね。 コロナが終わる頃にはなくなったから。 なくなっちゃったから。 そういう意味でもついてたんだよね。 だから私、この軟骨さん、いろいろ後で言うかもしれないけど、 いろんな奇跡的なね、 後書きでも書いてあるけど、出会いみたいなタイミングが揃ったなって思うんだけど、 そのやっぱアパのテレワークプランがちょうど始まったところに借りれたっていうのもすごい大きいし、 だからそこに行かせてくれたっていうのはね。」

「 テレワークプランが始まる少し前から使い始めたんだよね。 だから最初の1、2回は本当にちょっと高いから、12時からの何時間とかの休憩みたいな。 短時間のね。 短時間のやってみたり。2回どころじゃなくて、最初ね、なんかしばらくそうだった。 だけどテレワークプラン始まったら8時間とかね、結構長いこと。」

「 うん。 本当にがっつり。 あれがなかったらね、本当に進まなかったから。 だから結構その間、その時間に子どもの面倒を見るっていうのは、妻さんが引き受けてもらったわけだから。 だからそういう部分でももちろん支えてもらったっていうのは大きいんじゃないかねっていう。 だいたい後でまた話出てくるかもしれないけど。」

※テレワーク応援プランはコロナ禍にアパがやっていたサービスで、日帰り利用(最長8時間ほど)の料金が安く設定されていた。



● 夫についての良いとこ悪いとこ

「 で、今度は妻さんから夫についてどんな感じなのかっていう。 」

「どんな感じって、ざっくりしすぎてどこを言ったらいいんでしょう?っていう。 」

「漫画家佐藤達木じゃないところを。」

「じゃないとこ言っちゃっていいの? ディスリばっかりだったらどうするの。」

「いいよ。」

「じゃあ言うよ。端的に言う。 真面目で優しくて常識があり 、頼りがいのあるしっかりした お兄さんのような、友達のような夫 」

「なんかちょっとやらせ臭くなるな、逆にダメだそれ。」

「だってこれ本当にそうなんだもん 。」

「私が言わせたみたいな、メモ渡してコレを言えみたいな(笑)」

「だって漫画じゃないところでしょ?そしたらそうでしょ? 悪いところ言ってほしいって? 分かった悪いところ言います。脱いだ服全部自分の椅子に重ねるとこ 。片付けろよって。私たまに片付けるんだけど 。なんかこれ本当にイラつくって 。」

「生活感あるわ(笑)」

「あとは、いいんですか? いいの?細かいこと言っても ?」

「作者のひととなりが知りたいって人もいるんじゃない?」

「いいの言っちゃって 。」

「いいよ別に。」

「キッチンの洗い物カゴがあるでしょ? 野菜を洗ったり使ったりして結構使うわけよね。 で私は自分がテレワークや休日だった時は拭いてこうやって乾かしていくんだけど 、そういうこと私がやらないと夫さんは一切やらないと。見ると裏がうっすらカビっぽいのが 。なんか食べ物洗ってなんかする時も使うのに。 こういうところに気づかないのかね 。でも私がそこフォローするのか 、しょうがないんだろうけど 。なんかちょっとそこが 、私も結構ズボラだけど また違うところでズボラなところもありますよっていう 。だから 、家事をやらせても早い、 なんだけれど細かいところがどうでもいいや っていうところは普段の生活にあるかなっていう 。死にはしないがちょっと気になるなっていう 。ね? もうやりたくないでしょ?」

「 いいよ別に。どれだけ使うかは分からんけどね 。」

「そうだよね今のところは全部これカットでいいと思う 。意味ないし。聞いても何も面白くない。」

「 でも面白いと思うよ 、うちと同じだなって思うと思う 。なんや、あんな頭おかしい漫画描いてるけど、結構普通な人なんだなとか。思うかもしれない 。うちと同じやんみたいな。」



● 健康状態

「 あと普段の夫さんは快便であること。」

「 何?」

「 普通の人ってたぶんだけど 、便の回数って1日に1回じゃないかって思うのに 、なんか聞くと 、食事ごとに出ると。食事ごとに。3回 。すごいなと 。」

「本当にウンコばっかりしてるなって思うときあるよ 。」

「すごいなっていう 。私は本当にお腹をゲリで壊したりしてね、 あとノロにかかったときとか 、ああいうときしかないんで 。」

「でもなんか去年とかねちょっと 、その便が出悪くなったから 、それでヤクルト1000買ったってのもあるけど 。あと睡眠がちょっとおかしくなった。」

「 睡眠のことは常に言うね。 あの変なサプリメントも余っとるのに使わへんし。 」

「あのサプリメントね。 あんなもん効くわけないじゃん(笑)」

「やっぱり老眼とかが進行していることや 、前立腺のところが何か炎症を起こしているために 、そのお薬をね 、月に一回もらいに行ってとかが、私の見た漫画家以外の夫ですかね 。そんな感じでいいですか ?」

「この作者の健康情報こそ完全に無駄(笑)。無駄すぎて笑える。」



● 妻から見たササトウは本人と比べると?

「じゃあ妻から見て漫画の主人公ササトウは 、本人(作者)と比べるとどうだっていう。」

「 ちょっとアカンやつよね 。」

「何がアカンやつ? 」

「1話の時に自分が無駄遣いしたことを思い浮かべたら、なんか『エロ』とかでてきたのが嫌だな 。ソープとか通ってそう。」

「ソープとかじゃない (笑)」

「ソープなんてすごいお金かかると思うと、そりゃお金なくなるわ!と。」

「 男はわかると思う 。こんな金なかったら 、ソープなんか行けないってのは。ソープは無い(笑)。」

「だからエロってとこに引っかかるんだよね。」



● 現代のエロ需要

「これのネームを書いてたあたりでも、もうズレてたんだけど、まだエロって言うと、エロDVDを借りたりとか、そういう時代があったわけなんだよね。 過去にはね。 今やもう無料で結構ドギツイのが見れたりする時代になっちゃったんで。 だからそこの、何のお金なんだっていうのは確かに思う人はいるかもしれないね。 昔は何でも、エロ本でも何でもお金必要なんだけどさ。 お店なんて行くわけ無いじゃん。 お店は無いよ。お店なんか何万て取られるんだよ。 」

「だからね、彼女とも別れたとかいうことだから、もしかしてデリヘルかもしれないし。」

「 なんでやねん(笑)」

「わかんないじゃん。だってエロとしか書いてないからね。だからなんでお金使うかねって言ってさ。 」

「まあね今だとね、お金、貧乏だったら使わないだろって感じだよ。 エロに使うのはすごいもったいないじゃん。 今だったら使わないで済ませることもできると思う。」

「 だからそこはなんかちょっと、こいついかん、ちょっとあかんやつ。 」

「そこはね、だからやっぱり時代のちょっと、ズレで。 ただまあ、ほら、一人の、まだ31歳とかでしょ。  なんかそういう部分も書いてないとちょっと不自然になるっつーかね。一人の男性であると。一応ちょっとそういう要素も入れて。 読者層は31辺りから上とかその周辺とかを設定してるんで、 やっぱその読む人に置き換えて、 なんかこいつエロとか何も興味ないのかみたいな感じだと、ちょっと感情移入できないかなってあるんで、 エロもちょっと入れないと親近感湧かないっつーか。 だから私もそれは考えたんだ。別に無くてもよかったんだけど。 やっぱちょっと入れるよねっていう話です。 リアルな30代前半の男性というイメージでね。 」



● 見た目についての認識

「あとは、まあそうだね。よかったんじゃない?ササトウ。お金もさ、返せたし。 しかもちょっと最後の猿ぐしゃみで随分稼いじゃったから。 むしろ返さなきゃいけないよりも、ね、稼げちゃったし。よかったんじゃない? あの首取られたかと思ったけどちゃんと戻ってきたし。 あと自分が美形だと思ってたのが面白かったし。」

「 ああ、でもああいうのはね、あると思う。 私もだって家の鏡で見る自分とさ、 他のどっかの駅の薄暗い、むしろ明るいのか。 明るいとこの鏡で見たらギャーッとするもんね。 こんなに老けてたかとかさ。」

「なんか私もユニクロとかのフィッティングルームで自分の体、本当に見たくない。 」

「私は体っていうか顔なんだよね。 」

「顔はもう諦めとるで、体にびっくりして。 」

「だからああいう、自分の『こうである』っていうのがあって、 他で見た時のギャップみたいなのがあるよね。 思ってたのと違うみたいな。」



● 妻から見るササトウはちょっとアカンやつ

「今、ササトウの話じゃなくて、佐藤達木の話になっちゃってますよ。 」

「いや、ササトウの話してますよ。作者本人と比べるとどうだろうっていう。」

「 本人と比べると?夫さんよりちょっとアカンやつや。 」

「ちょっとアカンやつって感じなんだ?」

「だってさすがにあんなカード止められたことないじゃん。 」

「いや、あるよ。」

「 あったの? 」

「妻さんに会う前にある。 」

「止められはしないでしょ?止められちゃったんだよ。 だから夫さんよりはアカンやつや。 まだ夫さんは切度があったんだよ。 でもそいつはちょっと切度がなかったんだよ。 だから夫さんに比べるとちょっとアカンやつや。 似てるかもしんないけど、漫画も描いてるとか言うし、 でもほら彼女とも別れちゃってるし、 なんか性格もちょっと悪いんじゃない?夫さんより。 何かダメだから別れることになっちゃったんじゃない? 」

「…まあね、別れるっていう風にしないと。 」

「独り身の方が動かしやすいっていうのもあるでしょうし。 だから別れないと彼女を頼るみたいなことで、 別に借金しなくてよかったりになっちゃうから。 」

「そうそう、なっちゃうから別れさせた。 東京に来る理由も彼女ってことで東京に来たってことにできるしって。 」

「なんだけれど別れたからちょっとアカンやつなんじゃないかな。 」

「アカンやつなんだろうね。 」

「愛想尽かされたわけだね。 彼女がどういう人か知らないけど、 ササトウが夫さんがモデルでも、彼女が私がモデルではないかもしれないんで。 」

「そこまで考えてないからね。 」

「もっと違うのが好きな人だったかもしれないから。 でもまあ、やっぱササトウは夫さんよりはちょっとアカンやつよ。 」

「まあそうかもしれないね。もしかしたらね。」



● 作者から見たササトウは?

「 夫さんから見てササトウは?」

「自分と比べて? ああ、なんか…自分のことは知りすぎてるからね(笑)」

「 作者から見ると確かに比べにくいと思うんですけど。 」

「ひどいとは思わないんだけどね。 でもなんかやっぱ違うよなとは思うんだよね。 でも実際俺もね、カード2枚作って膨らみすぎて一つにしたとかっていう経緯もあるし、 東京に来てもまだリボ払いのやつ残ってたりとかして、 妻さんに一時、立て替えてもらったりとかもしてたけど。 だからまあね、どうだろうな。 フィクションっていうかあれなんだけど、そんなにすごく違うってわけでもないよな。 若い頃の自分だなって思う。 若い頃って言っても30だけど。40代くらいになってくるともうちょっと違うんで。 まだ若い頃の同人活動とか一生懸命やったり、個展とか一生懸命やってる頃の自分をモデルにしてるんで。 」

「でも時代は現代だよね。 」

「時代は現代だけど、キャラクターとしては自分の若い創作活動とか一生懸命やってたけど、 あまりうだつが上がらないっていうか、パッとしないような時代の自分を設定してる。」

「 いろいろ模索中だったじゃない当時は。立体をやったり平面をやったりとか。 そういうのをモデルにしてるわけね。 」



● この大人は敵か味方か

「だから、タキミが『いいじゃない』とかってさ、『好きなことやってね、そのために働いていいじゃない』とかって、 タキミはすごい物わかりいいように言うけど、あんまりそういう風に言う人は実際はいない(笑)。 そういう風に思ってる大人は本当はいないのよ、実はね。 」

「そうなんだ(笑)。 」

「いないよ、そんな人は。バイトしてる頃も絵を描いてるって職場で言っても良いことないなと悟って、そういうこと一切言うのやめたしね。ある時から。 」

「タキミは本音で言っとる? 」

「本音で言ってないと思う(笑)。 客商売だからさ、本当はどうでもいいんだよね。 」

「いいんじゃない?心の中で『どうでも』が最初について、みたいな(笑)」

「 どうでもいいんだよ、はっきり言って。 ただ、お客さんだからあんまり悪い気させてもしょうがないじゃない。あんまりそこに心はないと思うんだけど、 そういうことでちょっとほっとしたりするみたいな。 そういう風に言ってもらうと安心するのよ。 そしたら、この人敵じゃねえなって思うわけ。 」

「タキミも上手ですな。 」

「創作やってる身からしたら、この大人は敵か味方かって目で見ちゃうんだよね。 で、タキミは『いいじゃないじゃない』って言ってね。 褒めるじゃないけど、肯定するみたいな感じで入ってきてる。 共感というのか。 でも聞くじゃん、ササトウが作品を作っているとか、同人の漫画を描いて即売会で売っているとかっていうと、 タキミが『それはプロってこと?』みたいな感じでさ。」

「 そうやね。」



● 創作は趣味か仕事か

「 いや、プロっていうかね、『世間からは趣味って思われるかもしれないですけども』、みたいなさ。 ササトウが。」

「言うね。 」

「別に、ただ自分は趣味だとも思ってないんだけど、プロになりたいんだけど、まだなりきれもせずみたいな時代ってあるよね。 」

「あるね。あるある。」

「 あの辺のモヤモヤした感じの状態にいるササトウだよって感じだよね。 」

「そんな感じだよね。昔、デザフェス出てた時に、夫さんのブースで客に話しかけられてね、 『この絵描いてる人はプロなの?』って言って、おじさんみたいな人が。 プロではないですって言って。 なんか、あれでこう、おじさんが言いたいのは、何かお金取ってやらないと意味がないみたいな、 うちの父みたいな考え方を持っていそうだなっていう感じの会話をその時した思いがあって。 でもなんか、やりたいからやってるのに何?絶対金稼がなきゃいけないのかよってその時も思ったし、 何て返事をするのか、その人が納得できるのかわからなかった。」

「 そうだね(笑)、おじさんの気持ちもね、わからんではないんだけどね。 確かに、じゃあどうするのって話だよね。 描きたいもの描きました、見ました、わかりましたけど、 あなたどうするんですかこれから?って感じじゃない? これ売り物にするんだったら売り物にした方がいいって言うかさ。 だから外国のアーティストなんかは全部売り物にしちゃうから、お金つけるの。 値段つけるのよ、たいがい。 だからやっぱり本当はそうした方がね、もっと緊張感出るっていうかさ。 人に買ってもらうってことで緊張感も出ると思うんで。 」



● 技術レベルの問題

「だからまあ本当はね、そこら辺も、ただ人に見てもらいたいだけなのか、 それをどうにかお金に変えてやっていこうっていうのかってのは本当はあるんだけど、 なんかいかんせん技術レベルがさ、そこまで達してない状態の時期だってあるわけなんだよね。 」

「タキミも客商売をしてるからお金にならないことには理解ができないのかな?」

「理解できないっていうか、どういう状況なのかなって思ってるんじゃないの。フリーターってことで、なんでそのカードを作れたのかって聞いてくるし、そのカードの話からササトウが借金40万くらい?あるってわかるっていう。だからその背景を知りたいわけだタキミは。借金があってフリーターで、そんな別に創作で稼げてるわけでもない、画家でも漫画家でもない人が来たなっていう情報を知りたいわけだ。」

「まあね、質屋としてはちゃんとお金が返せる人かわからなかんもんね。」

「返せなきゃ返せないでね、質流れしてそれ貰うだけなんだけど。どういう人なのか知りたいだけなんじゃないの。」



次回に続きます

漫画「軟骨さん」発売中

佐藤達木/コミックMeDu 


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佐藤達木
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