【小説】コンビニポリス
2 ソーラーパワー全開!?
コンビニは、原則、独立採算。交番ごとに売り上げを求められる。
立地でだいぶ売り上げが変わってしまう。
電気代も倹約。基本消灯。
「それじゃ、交番の意味がない」
警ら部長の怒声が響く。
「そもそも、『夜の灯台』などと言うのが売り文句だったんじゃないのか」
「そうおっしゃっても交番ごとに配当されている予算は限られてますから」
「そもそもが予算が給与の最低保証額のみというのからしておかしいだろう」
「最低賃金はクリアしてます。あとは売り上げに応じた歩合給になっていますので」
「どう考えてもおかしい、歩合給ってのは。業務に身が入らん」
「いえ、販売も業務ですから」
「警察業務を言ってるんだ。そもそもがだ、給与以外にも、もろもろ金はかかる」
「消耗品は現物で支給していますから大丈夫です」
「ガソリン代は」
「一人あたり月十リッター支給です」
「十リッター!?」
「使わなければ、翌月に繰り越せます」
「十リッターなどすぐなくなるぞ」
「ですから、皆さんもっぱら自転車を活用されてます。もちろん無償貸与です」
「無償って。有償のものがあるのか」
「四輪は、原則有償です」
「聞いてないぞ。いつからだ」
「今月初めから。全署掲示板に掲載しましたが」
「文書で通知しろ」
「経費節減ですので。紙媒体は原則NGです」
何かを言いかけ、ぎろっと目をむくとそのまま部屋を出ていく警ら部長。
「あんまり怒らせちゃだめですよ。あの人、血圧高そうだから」
「なら、煙草やめればいいんですよ。今も、どうせ一服しに行ったんでしょうし」
「あたしたちも一服しましょう」
そう言うと机の引き出しからチョコの詰め合わせを取り出すお局様。
「おお、これは『ピエール・マルコリーニ』じゃないですか。いや、いつもすみません」
相好を崩し、一粒口に入れる経理担当課長。
「でも、やっぱり交番が真っ暗っていうのもねえ」
お局は、そう言いながら、焼き菓子を二つ取り出す。
「おや、もしかして…『ツマガリ』!お取り寄せですか?」
お局は、フフッと笑うと
「お茶でも入れましょう」
と言って席を立つ。
「まあ、このご時世、節電はあたりまえですから」
ピエール・マルコリーニをもう一つつまみながら、思い出したように返事をする経理担当課長。
「お金、そんなに厳しいわけでもないでしょうに」
「多分に、パフォーマンスですけどね」
「大変ね」
湯気の立ったティーカップをお盆にのせて戻って来るお局様。カップはウェッジウッド、メイド・イン・イングランド。
「そのうち、もっと部長をカッカさせるお達しが出ますよ。ここだけの話ですけど」
はて?という顔のお局。
「電気は自前で」
「どういうこと」
「太陽光発電。ソーラーパネルを交番の屋根に乗せるんです」
一か月後、全部署に通知が発出される。もちろん電子媒体で。そして、間をおかず知事の記者会見。
「このように、大学発ベンチャー企業と連携して、来るべき未来に向けたソーラーパネル推進事業を展開していこうと……」
こうして、主役置き去りのまま、産学官連携のエコ事業が、あさっての方向の抱きあわせで華々しくスタートすることになる。
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