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(対談)リボルビングドアはじめました

マネーフォワードでは、官公庁や公的機関の出身者が事業の現場で活躍しています。官と民の間を人材が行き来することがリボルビングドア(回転ドア)と呼ばれる昨今、民間・ベンチャーの世界に来て数年たった今、どのように感じているのか、インタビューをしてみました。

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    インタビューの様子(左:瀧、中:神田さん、右:忍岡さん)

話すひと (※肩書は当時のもの)

忍岡(おしおか) 真理恵(経営企画本部経営企画部)
2009年経済産業省入省、特許法、民法(契約法)等の改正プロジェクトに従事。米国ペンシルベニア大学ウォートン校にてMBA修了したのち、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社。2018年マネーフォワード入社、「マネーフォワード おかねせんせい」(ユーザーに最適なお金の行動をアドバイスするサービス)の立ち上げや事業開発、社長室長を経て今は国内外のIRなどを担当。ショートカットはじめました。
神田 潤一(執行役員 マネーフォワードエックスカンパニー COO)
1994年新卒で日本銀行に入行。2015年から2年間金融庁に出向し、Fintechの制度企画や業界調整を担当。2017年マネーフォワード入社、銀行とのAPI接続や金融機関との協業による新サービスの構築を推進。Fintech協会常務理事。最近豆柴を飼いはじめました。

聞くひと

瀧 俊雄(Fintech研究所長 CoPA)
創業以来、様々な裏方系の役割、カスタマーサポート、研究や政策提言活動等を担ってきた。近年は複数の業界団体で、金融エコシステムの拡大に注力中。最近オールブランはじめました。

~民間へ移ったきっかけ~

瀧:今日は、お二人が公的機関から民間企業に移ってきた中で、感じてきたことをお聞きしたいです。よろしくお願いします。

最初の質問なんですが、そもそもいつごろから官の世界を目指していたのかを、教えて頂いてもいいですか。

忍岡:私は小学3年生までアメリカにいたのですが、国旗を掲揚したり、国家を歌ったりが頻繁にあったんです。一方で、日本に帰国すると、なんだかそれをやっちゃいけない、みたいな雰囲気を感じて、その文化の違いから「そもそも国って何だろう」と思ったことがあったんです。

社会のことをあまり良くわかっていないながらも、みんなが日本の事を好きになれるような仕事がしたいなとぼんやり考えていました。

瀧:私も小学6年生までイギリスにいたのですが、現地の学校で毎週何らかの理由でGod Save the Queenを歌っていた覚えがあります。忍岡さんは大学で法学部に進学して、司法の道に行く予定だったんですか?

忍岡:そうですね。ただ、法律の勉強をすすめる中でも、やっぱり社会の制度やあり方そのものを良くするような事をやりたいという気持ちがありました。なんとか司法試験には合格できたのですが「国を前に動かす!」という熱さに惹かれて国家公務員の道を選びました。

瀧:官僚になったころは、「いずれどんなふうになりたい」みたいなビジョンを持っていたのでしょうか?

忍岡:難しいですね・・・。ただなんとなくではありますが、本当に国家公務員を続けるだけでやりたいことに辿り着くのかなという疑問はあったかもしれません。

私は経済産業省(以下、経産省)に在籍している間に特許庁や法務省へ出向して、特許法、民法(契約法)、商品先物取引法などの法改正の仕事に長く関わっていたのですが、民間の事業者の意見を聞く機会がとても多く、社会的な問題の本質を理解するためにはビジネスをわかっていないとダメだと感じました。

その後、「どうすれば国家公務員の組織をより良くできるのか」といった問題意識をもってアメリカに留学したのですが、そこで金融やコンサル出身の優秀なビジネスパーソンたちが社会を変えるために全力で社会起業に取り組むのを見たのは大きかったです。だんだんと「パブリックな仕事をするのに、霞が関にこだわる必要はないのかもしれない」とか、「国という大きなものにじっくり働きかけるだけでなく、経済の力をレバレッジしてスピーディに社会を変えていくことにもチャレンジしてみたい」と思うようになったんです。

それで留学2年目から企業への転職を考えるようになり、マッキンゼーに転職しました。

瀧:ありがとうございます。いったんここで、神田さんにもお話しを聞いてみたいと思います。神田さんは日本銀行(以下、日銀)にいた頃は民間で働くイメージってそもそもお持ちでしたか?

神田:あまりありませんでした。「日本全体の役に立ちたい」と思って第一志望の日銀に運良く入れた事もありましたし、その頃の日銀は特に「勤め上げる職場」という雰囲気が強かったように思います。なので、当時は自分も定年近くまで日銀にいて、支店長や局長を目指していくんだろうなと思っていました。

瀧:私も学生の頃、日銀で働きたいなと思ってました。社会的にとても重要で、知的好奇心が満たされそうだし、いろいろな仕事の幅がある素敵な職場だと今でも思います。

神田:そうですね。日銀でしか経験できないやりがいのある仕事も多いし、中長期的な視点で研究をする仕事も含めて非常に幅広いので、好奇心が途切れることはなかったですね。

瀧:神田さんは日銀に入行してから、考査畑が長かったと記憶していますが、どのようなキャリアをお持ちだったのですか?

神田:キャリアをスタートした時点では、経済や景気調査などに関わる仕事がしたいなと思っていました。留学中も主に国際経済を勉強していたのですが、90年代後半からの金融危機を見ていて、いま日銀がやるべきことは経済よりも金融じゃないかと考えるようになりました。

そんなこともあり、2000年代中盤から金融機関のモニタリングや考査(金融庁でいえば検査)の領域でキャリアを積んでいこうと考えていました。ただ、考査って金融機関の取り組みに「ブレーキをかける」イメージの仕事なんですね。金融危機の時はすごく大事ですが、回復期には金融機関の新しいチャレンジを潰しかねない仕事なので、リーマンショック後の回復期に何をすべきか、悩みがあったのも事実です。

そんな時、金融庁に出向し、Fintechの担当になったんです。そこでFintechがこれからの金融機関や金融サービスのあり方などの答えになるんじゃないかと考えるようになりました。

瀧:神田さんが金融庁に出向された当初は「オペラの人」というイメージが強かったです(笑)金融庁から日銀に戻られるタイミングで、民間に移りたい、と思われたんですか?

神田:実は金融庁から戻るタイミングでも、日銀を辞めるつもりはなかったんです。日銀にはFintechセンターという部署がありましたが、そこへの配属ではなく、元の考査の仕事をする事になりました。

そこで、考査の仕事を続けようと一度は思ったんですが、やっぱり今Fintechの仕事がしたいという思いが強くなっていきました。特に金融庁で企画に携わったオープンAPIの取り組みが日本でスタートした時期だったので、このタイミングでFintechから離れてしまうのはすごく残念だし、これからの人生で自分がしたい仕事を真っ直ぐ貫きたいと思って、民間への転職を決めました。

瀧:公務員(日銀は準公務員)として長くキャリアを積むと、自分の今後の人生設計とか家庭の事とかでなかなか踏み切るのが難しいですよね。

神田:私は、経済条件とか役職とかよりも、やりたい仕事をしないと自分の人生がつまらなくなる、という思いが強かったですね。

瀧:いやー、いつもながら素敵です。

~民間に移って意外だったこと~

瀧:民間に転職されて、意外だったことってありますか?

忍岡:そうですね・・・。正直、思ったより官も民も変わらないなと感じました。法律を作る事もコンサルティングをする事も、結局は課題を抽出して問題の本質を探し、ソリューションを提供するという点で共通しているなと思います。

でも民間企業では、公務員としての行動様式やルールだけで仕事を回すことは難しくて、必要があればある程度反論したり、議論をするスタイルに変えていかないと価値を生み出すのは難しいと感じました。

経産省は省庁の中でもかなり闊達な議論がある場だったと思いますが、それと比べてもギャップはありました。相手が社長でも違うと思ったら違う、疑問に思ったら議論するという態度が必要です。大臣を相手にこれはなかなかない場面かもしれません(笑)。これは官から民に転職した人の多くが感じる事かもしれないです。

瀧:お二人とお仕事してると、色々なアジェンダを取りまとめる能力が高いなぁと感じることが多く、私なんかは日頃から相当に甘えてます(笑)。神田さんが驚かれた事はなんでしたか?

神田:やはり最初に驚いたのはスピード感ですね。社内のコミュニケーションをチャットで行うという事に最初は慣れなくて、チャットを追いかけるのにかなり苦労しました。ただ、複数案件が同時進行で進むことが効率的だとすぐに気づきました。

また、これは「マネーフォワードらしさ」でもあると思いますが、立場とか年齢とかキャリアに関係なく、みんなでいいものを創り上げていくというそのフラットさやスピード感がむしろ心地よく思えるようになったので、今ではストレスなく働けています。

忍岡:私もそう思います。役職や関係性を意識しすぎずに、自分の意見を出した上で最大限に貢献するというのは、フラットな職場環境に入ってみて初めて実感できることかもしれないですね。

瀧:たしかに、うちの経営会議を外部の方が見たとしても、会話の雰囲気から役職や関係性を推測するのは難しいかもしれないですね(笑)。そういう風通しの良さはこれからも残したいですね。

神田:私がマネーフォワードに入社した時からは、社員も4倍くらいに増えていると思うんですが、ベンチャー企業のいい部分や、会社のカルチャーは、前よりも浸透しているのではと思っています。

経験とやる気のあるメンバーがカルチャーを揃えて仕事を進めるという点で、私が入社した時よりも更に良い方向に進んでいると思います。

忍岡:私は、特に社内の若手の方が自分に与えられた枠を超えてチャレンジするチャンスが開放されている事が、マネーフォワードの良いところかなと思っています。年齢や立場に関係なく意見を言い行動することが讃えられる文化があって、皆が実践できているのはすごいなと思います。

そのような環境で若手としてのキャリアを積めれば、成長するスピードも高まると思いますし、自分の可能性を制限せずにいろんな事ができると思います。

~民間でのキャリアを検討されている方へのメッセージ~

瀧:今回のインタビューは、主に公的機関で働いておられる方々に読んで頂けたらなと思っていて、最後にそのような方に向けて特にマネーフォワードってこんなとこだよ、というメッセージをお願いします。

忍岡:そうですね。まず、「パブリックな仕事をしたい」という気持ちは民間でも実現可能だなと私自身感じたことですね。国家公務員として、政策の実現に携わるのはとても意義深いことなんですが、企業で現場に近い環境に触れることで最先端の情報を得ることができ、本当の意味で良い提言ができる事もたくさんあるだろうなと思います。

一方で、私自身も公務員時代に思っていたことではあるのですが、「自分が民間に出て評価されるんだろうか」という恐怖心を持たれる方も多いのかなと思います。

でも、これまでの経験や、さっき瀧さんが言っていたように「論点や問題をまとめる力」など、官僚ならではの強みを活かせる場もたくさんあるので、あまり懸念材料にならないんじゃないかなと思います。

神田:宣伝しすぎかもしれませんが、どんどん新しい制度ができるFintech領域に深く関わり、企業として新しい業界を創る事ができるこの職場は奇跡的だと思います。一つの企業に所属していながら、国家の新しい政策を提言し、政府や官庁と一緒にディスカッションできるのは、凄く稀有な環境だと思います。

また、例えば業界全体とマネーフォワードの利害が必ずしも一致しない場合でも、中長期的には会社のためになると信じて、業界全体のエコシステムを構築することが許容されている点がマネーフォワードらしいし、ありがたいなと思っています。

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                       (インタビューの様子)

「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを掲げ、すべての人のお金の課題を解決する世界観を目指すことも、公的な目線を大事にしている背景にあると思うんです。

そういう意味では「自分のやりたいこと」と「自分がやるべきこと」がほぼ一致しているので、やりがいを感じて働けているのだと思います。

瀧:ありがとうございます。最後に、今日は「リボルビングドア」ってタイトルをつけているんですが、米国のように今後日本でも、一度企業に移られた人がまた官公庁に戻られるケースって今後増えると思いますか?

神田:個人的な思いになるんですが、私は増えるべきだと思います。変化の激しい時代こそ、企業の現場を知っている専門家の知見を官の政策や制度整備に役立てていくことは、今後更に必要になってくると思います。

他にも、マネーフォワードが常に「ユーザーフォーカス」を意識するように、組織や昇進のためでなく、「本当に国民のためにやるべきことは何なのか」と考えることやフラットでオープンな議論の重要性などを経験して、改めて公務員として仕事をすることは、きっといい影響を与えるのではないでしょうか。

忍岡:私も、企業側の知見や文化を官に取り入れることは良い政策を作るのにとても大事なことだなと思います。逆に、ベンチャー企業のスピード感や知見をもって、国家公務員に戻ったらすごくいい仕事ができるのではとも思います。今では実際にいろんな省庁で門戸を開いてきているので、私ももっと成長できたらいつか一度戻ってみたいなと思います。

瀧:ありがとうございます。民への片道切符感というよりは、制度は皆で作っていくものでもあるので、私たちも一事業者として、リボルビングドアを力強く回す側でありたいなと思っています。

今日はありがとうございました!


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当社におけるパブリックアフェアーズ活動については、下記の記事もご覧ください。



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