# 65 悩める人間
行動経済学には特殊用語が多い。不確実性の中で選択を強いられる医療現場では行動経済学は有用であり、この様な言葉が汎用される。
サンクコストバイアス、現状維持バイアス、現在バイアス、ヒューリスティック(利用可能性の、代表制の)、プロスペクト理論(確実性効果と損失回避)、フレーミング効果、選択過剰負荷、情報過剰負荷、限定合理性、平均への回帰、メンタルアカウンティング、アンカリング効果(係留効果)、極端回避性、同調効果、ナッジ、等々。
これらはそれぞれ納得できるものであり、意思決定にあたり、偏った判断に陥る傾向を抽出し説明している。
インフォームドコンセントを手術の前に行うのだが、混乱している患者さんはそれを聞いても、合理的な意思決定は出来ないバイアスがあることが多く、すれ違う。患者さんの優柔不断、医師が患者ん気持ちを分かっていない、そんなすれ違い、ジレンマがあるのだ。
だからこそ、バイアスを患者も医師も知ることが求められる。
ではどうすれば良いのか?
バイアスを逆手に取り、患者さんを不公正な判断から救うことができる。
医師と患者さんのすれ違いを少なくする効果も期待できる。
そんな方法がある。
我々医師は知らず知らずにこれを使っているのだが、やり方はナッジ、すなわち囁きである。患者さんはそんな呟きに耳をそばだてている。
ナッジは使い方次第では悲劇となる。だが、正しく使うと不安とバイアスから患者を救う事が出来る。
これにより、意思決定において、患者に選択の余地を残して、経済的な負担もなく、行動変容を促ことが可能だ。
かなり込み入った話題であり、今後、ポツポツと数回に渡り記載するつもりである。
医者の不養生というが、自分もいざとなればバイアスの負けてしまう。自分が患者の立場になると、主治医の呟きに一喜一憂する。
そんな自分のためにも、綴ってゆきたいのです。