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想定外の災害に対応する建築とは? 〜しなやかな建築システム〜

近年、想定外の災害が頻発している。

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年々その傾向は強まっていることを考えると、この先もずっと、今の建築がそれらに耐えられ続けられるかは甚だ疑問である。想定される最大規模の災害にも耐えられる頑強な建築を作るというシステムがそろそろ限界に来ていると考えている。

どんな災害が起こるか分からないという時に、それでも最大規模を想定してそれに耐えられる様な建物にするとのはナンセンスである。

地震、風、積雪・・・・全てを今の2倍くらいに想定して、津波があっても、竜巻があっても、とにかくあらゆることを想定して、とにかく頑強なものを作るということは出来るのかもしれない。

が、それはいつ来るか分からないものへの過大な投資であり、お金の無駄、資源の無駄、時間の無駄、・・・ということになる。

更にはその想定さえも超える「何か」が起こったとには、それこそ目も当てられないような、それこそ未曾有の被害を被ることになってしまうのである。

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では、どうしていけば良いのか???

キーワードは「しなやかさ」!!!

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壊れることを前提にした仕組みづくりと言い換えても良い。

何があっても大丈夫だと思って、壊れないのが当然だと思っているから、いざ想定外のことが起こって、壊れた時にはショックを受けるし、想定外な甚大な被害となり、その状況を見てからどうしようかと考え始めるから、なかなか立ち直ることが出来ないという状況に陥ってしまう。

 東日本大震災然り

 昨今の各地で起こる豪雨による河川の氾濫然り

 更にはCovid-19も然り

途方に暮れるしかないような壊滅的な被害となってしまうのである。


けれども、ここがマインドセットになるのだが、「壊れるのが当たり前」という考え方が、生活者にも建築業界(というより社会システム全体)にも周知されていれば、あーまたやられちゃった、じゃぁまた直しておこう という感覚になるのでは無いだろうか?

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建築物は、どの程度の災害レベルから被害を受けることになるのか、その閾値(しきいち)を設定して、それ以上なら被害を受ける様にしておく。

この敢えて被害を受けるようにする事がポイント!!!

けれど、建物全てが無くなり辺り一面更地になってしまう程の被害を受けるのではない。基礎や構造体は頑強だが、それ以外の設備などは被害を受け易くしておく。全部が耐えられる様な設計・構造になっているから、ゼロイチ(ビクともしないか、全壊するか)でギャンブル的な状況になり、被害を受けるときは甚大なものになってしまう。

窓ぐらいは割れていいし、もしかしたら壁なんかも剥がれてしまう位が良いのかもしれない。その代わり躯体は守られるのである。単なるスケルトン・インフィルに聞こえてしまうが、そうではなくて、敢えて壊れ易く作っておくという事が大事だというのがポイントである。躯体は今よりも頑強にする代わりに、それ以外は壊れる全体なので、もっともっと簡易なもので良いはずなので、トータルのコストも下がるのかも知れない。

この辺りは、守るべき部分と、捨てる部分を、どこで切り分けるかを良く考える必要があり、これからの災害に耐えられる(?)新たな建築工法として検討を進めていくべき部分になるが、恐らく最適解があるのではないかと思っている。

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また建築物だけでなくて、社会システムとしても、これらを支えていくものに変えていくべきだろう。

例えば、東日本大震災の時は、東北にある材料や部品メーカーが被災しただけで、機能停止してしまう会社が何社もあり、その会社が関係するエコシステムが機能しなくなるという事があちこちで起こった。

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こういう事は避けなければならない。

どこか一ヶ所の会社だけに頼るといった事は、しなやかさがあるとは言えない。何があってもエコシステムは動き続けられる様に、ありとあらゆる機能を分散させる。一つの会社に権力や機能を集中させないと言った考えを持って、社会システムを再構築すべきだろう。

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また、建築物(もちろん住宅も)については、家が自分の資産の大部分になっている状況を変えていくべきだと思う。つまり、自分が住む家ではあるのだが、そのお金を出すのは自分(だけ)ではなくて、投資家だったりする。そんなことあり得ないと思うかもしれないが、ここはマイクロファイナンスや、ブロックチェーン技術を用いた資金調達の仕組みなども出てきており、意外と実現されていく世界観なのかもしれないと思っている。

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更には、損害保険会社や銀行のローンなども、これらの仕組みに合わせて、既存のシステムを変えていく必要があるだろう。

また建築業界のゼネコン、ハウスメーカー、そして部品メーカー、建材メーカーなども、変わらなければならない。家の工法を変えるだけではなく、メンテナンスや、災害対応の仕組み、サプライチェーンのあり方など、多くが抜本から見直さなければならないとは思う。

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結局、将来の不安がある限り、人はわざわざ大金を払って家を買おうなんて思わない!

年々ひどくなる災害に対して、もやもやした不安が多くの人にあり、それが大きくなっていくという状況において、その不安をなくすことが、私たち建築業界の責任であるし、生き残っていくためにもやるべきことでは無いだろうか?

「しなやかな建築物」と、それを取り囲む「しなやかな社会システム」によって、常に自己再生してアップデートし続けるエコシステム。これさえ出来上がれば、この先、更に温暖化が進み、災害レベルがひどくなったとしても、安心して、家を購入し、そしてそこで暮らし続けることが出来る様になるはずである。

ぜひ、そんな未来を実現していこうではないか!!!


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