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インターネットは建築をどう変えるのか(蓄積性がもたらす変化)
インターネットがもたらす大きな変化として、消滅性から蓄積性という3次元的な変化がある。これまでは、時間の経過とともに、消えてしまったこと/消えることができたものが、デジタル化によってデータとして存在し続ける様になった。良くも悪くも、消えることなく、残り続けてしまう世界に世の中が変わってしまった。
これは建築にどのような影響を与えるのだろうか。
そもそも、時間とともに消えてしまうこととは何なのか?
分かりやすいところでは、会話(話す)、音楽(聞く)、その時々の景色(見る)などだろう。これらは一瞬にして消滅するが、記憶に残り、徐々に薄れていき最終的に記憶からもなくなる。そして、それらを時間が経っても消えないようにする為に、本、CD、DVD、BD(ブルーレイ)、写真など様々なリアル媒体が存在してきた。けれども、それらでさえ、永遠に存在は出来ない。壊れてしまったり、汚れてしまったり、色褪せてしまったり、無くなってしまったりするからである。
蓄積性という変化は、これらを永久に保管することを可能にするため、より目的として最適解に近いと言える。ゆえに、必然として、現在これらは急速にデジタル化に移行しつつあり、リアル媒体は消滅の危機に瀕している。あらゆるものがデジタル情報に変換されて、データとして蓄積することが可能になったために、リアル媒体は必要なくなってしまったのである。
こういったトレンドは、一見、建築領域には無関係に感じるが、本当にそうなのだろうか?
私は建築領域も例外ではないと考えている。
そして、いくつかの可能性があるのではないかと思っているので、以下に示していく。
まずは、リアルが消滅していく。
例えば、物理的な鍵は「ドアを開ける」ためのものであり、デジタル技術によってスマートキーとなり、何もなくても、人が近づいただけでもドアが開くということが可能にしていくだろう。
様々なスイッチやリモコンなどのUI(ユーザーインターフェイス)は、音声や目の動きといった、より無意識的なものに変わっていくため、不要になっていくだろう。
ちなみに、これらは確実性も高い変化である。
次に、データが蓄積される事で、新たな生活シーンが生まれる。
例えば、家での行動履歴(例えば導線履歴)が分かる事で、今までの非常識だと思われていた間取りが実は最適解だったなどといったことも、これからあちこちで起こると思う。AI将棋が、とんでもない一手を打ってみんなを驚かすということが良くあるらしいが、それの建築版である。具体的に、どんな家や間取りになるとは、現段階では言えないが、常識外の設計にも対応できる様な建築工法、設備機器、施工方法などを準備しておく必要があるのではないだろうか!
そして、建築の個性はデジタルで表現される様になっていく。
改めて整理すると、消滅するものはデジタル化することで蓄積型へ移行し、一方でそもそも消滅しないものは、そのままリアルで残り続ける。
この流れを建築に当てはめてみると、消滅する部分とは何なのだろうか。
私は意匠性を表現している部分だと思っている。住む人が変わったり、趣味趣向が変わったり、また劣化するなどして、意匠に納得できなくなり、新たなものに変えたくなる、もしくは変える必要が出てくるところである。
一方で、消滅しない部分というのは、機能性を表現している部分で、強度や断熱性や水密性など、人が変わっても、いつまでも求められるところではないだろうか。
だとすると、この意匠部分はデジタル化していくはずである。その方が合理的だし、世の中の流れにも合っている。
具体的には、リアルな建築としては、どの家も均一な(例えば真っ白な)空間になり、必要な機能は妥協することなく盛り込まれ、耐久性も現在よりも高くなる。そして、意匠は、デジタル技術によって、その人好みに、その時々に最適なものに変えることができる様になる。しかも、決してエネルギーを浪費することなく実現されるはずである。例えば、kindleの電子ペーパーで使われている技術等が進化していくと容易に実現できるのではないかと素人ながらに思う。
ベースの建築部分は、どの家も意匠性は必要でなくなるために、現在よりも大量生産が可能になり、コストは安くなる。そのため、現在よりも機能や耐久性を向上させたとしても、トータルコストはそれほど変わらない、もしくはLCC(ライフサイクルコスト)で見たら安くなるのではないかと考えている。
これから、これまで以上に多様で変化の激しい時代になる。
けれども。
どんな人が住んだとしても、人や家族が変わったりしても、これからは家を壊して立て替えるなんてことは不要である。変化にはデジタルで対応する。リアルな家は変える必要ない。
建築が変わることができれば、「スクラップ・アンド・ビルド」から脱却し、サステナブルな社会に大きく近づく事ができるはずである!
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