インターネットは建築をどう変えるのか(暮らしの変化スピードへの対応)
インターネットは、私達の暮らしを大きく変えている。これは言い換えると、変化のスピードが従来よりも早くなったということである。
これまでの暮らしは、インターネットの前後で大きく異なる。情報伝達の速度が遅い時代では、暮らしの変化は小さく画一的であった。
それが変わった。
インターネットというテクノロジーは、生活スタイルや、生活習慣、周囲の環境など、ありとあらゆる領域に影響を及ぼし、私達の暮らしを、従来とは比較にならないスピードでドラスティックに変えていくこととなった。
では、建築は変わるべきか?
ここが考えるべきポイントである。
これまで建築というのは、静的で普遍的な存在だった。建築とは変わらないものという常識があった。何十年、何百年、時には1000年以上も。
このままであるべきか、あらざるべきか。
私達はこの岐路に立たされているのである。
しかし、まだ答えは出ていない。
現状をみると、多くの人は、建築とは変化とともに変わるものだとは思っていない。私たちは、日々の暮らしの中で、変化が起こったとしても、それに合わせていちいち家を変えようとは思わない。変えるのは、家の中にある家具や設備機器といった、住宅と切り離された部分である。そしてどうしようも無くなった時、例えば家族が増えて家が狭くなったり、体に支障をきたして今の家では生活が難しくなった時などに、大掛かりなリフォームをしたり、引っ越したりするといった状況が一般的である。
これで問題なければ、このままで良いのかも知れない。
けれども、今まさに問題が生じてきているのではないだろうか。
変化スピードが早いという事は、時間の経過とともに、家を建てたときとのギャップがこれまで以上に広がっていくという事を意味する。つまり、我慢の限界に到達するまでの期間が、短くなってしまうのである。
もはや、建築は関係ないとは言えない状況にある。
では、どうすべきか?
私は、大きく2つの方向があると考えている。
1つは、「それでも住宅は変わらずにいる」という方向性。
もう1つは、「住宅はもっと変わるべき」という方向性である。
もちろん、この2つの中間で、ハイブリッドというのもあるが、話が複雑になるのでここでは、この2つに絞って話しを進める。
まず最初の住宅は変わらずにいるという事だが、ギャップを放置するということではない。建築側では対応せずに、建築意外のシステムで対応するという方向で、主要方策としては、住み替えがある。ただし、今ある住み替えの仕組みでは対応できないだろう。
従来システムが機能せずに起こっている社会課題へ対応する必要があるのだから、現在の住み替えシステムでは対応できない部分が必ずある。賃貸で住み替えていく、都度家を購入して引っ越し続ける、とったことではなく、新たな仕組みが求められているのだろう。
最近、注目されている定額住み替えサービスなどが良い例だと思うが、これが最適解かどうかはまだ確定していない。こういった従来の発想を変えた仕組みが今後必要とされていくのだろう。
そして、この方向性は、新たに住まいを建て直す必要がないので環境にも良く、また全国の中古住宅や空き家を利活用する可能性も広がるなど、多くの社会課題の解決にも繋がるのではないだろうか?
ちなみに、この場合、建築側は何もしなくても良いということではなく、住み替え用住宅へのリノベーションは必要である。
そうすることで、空き家や、使われていない部屋など、いわばお荷物に感じていた資産が、とたんにお金を生み出す装置に変わるのである。それに気づいた瞬間、自分の家を魅力的なものにして、少しでも高く住み替えに利用してもらおうと多くの人が思い、住み替え住宅リノベーションが促進される。
そして、日本中に沢山の大家さんがいるという世界になっていくのである。
次に、住宅がもっと変わるべきという方向性についてである。
ここは、前のnoteでも書かせてもらった部分に近いが、住宅をもっともっとフレキシブルにしていくべきという話しである。
具体的な方策はいくつかもあるが、例えば、リアルな建築ぶぶんは耐久性や必要機能を担保し、可変性は、素人でも簡単に住まいがいじれる手軽リノベーションの仕組みや、3Dプリンターやその他デジタル技術を用いるなどがあるのではないだろうか。
そうすることで、生活者が変化したら、有機的に住宅も変化するという、より人に寄り添った関係性が構築されていく。
現在の、住宅は箱という概念は薄れていき、住宅と人は密な関係性になっていくことだろう。
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