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インターネットは建築をどう変えるのか?(統一性がもたらす変化 設計編)

インターネットが、希少性を消滅させて、統一性へと向かう変化を起こしている状況が、建築にはどの様な影響をもたらしていくのだろうか?

言葉だけ見ると、これまであった国や地域に独特の建築様式がなくなり、どこへ行っても同じ様な建築が並ぶ街並みが増えていくということになりそうだが、そう単純な話しではない。それはこの変化を最大限に大きな時間軸で見た時のトレンドではあるが。

実際、私たちは、もう少し小さな時間軸で生活しているのし、今すぐに世界中が全てが同じ世界になる訳ではない。この統一性という流れの中で生きているのは確かではあるが、周囲にはまだまだ多様な世界があり、多様な価値観をもった人たちに囲まれている。完全に何もかもが統一された状態になるにはまだ時間がかかりそうである。だから、もう少し解像度を上げて分析する必要がある。

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ちなみに余談になるが、では究極的には、100%どこを向いても同じ世界になるかというと、その定常状態においても多少の多様性は残るはずだと私は思っている。確かにデジタルの影響を受ける部分は全て似たようなものになっていくのだろう。しかし、気候の違い、地形の違い、収入の違い、身体の違いといったリアルの世界が存在する限り、少なからずそれらに順応する必要があり、違いとなって残るはずである。万が一、これらリアルの影響すら受けなくなるのだとすると、完全に1つに統一された世界に落ち着いてしまうのだろう。それは例えば、マトリクスの様な、VRの様な世界である。そうなったら、もはやリアルな建築などはどうでも話しになる。

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では、その究極に至るまでの、途中にある世界とは一体どんな世界なのだろうか?

まず、多様な人が存在するものの、それらに関するあらゆる情報はデジタル化されインターネット上にあげられる。膨大な多様なデータではあるが、インターネットという1箇所に集まる。そして、それらはある1つのロジック(アルゴリズム)で分析され、結果、多様な人に最適化された多様な答えが導き出される。たった1つのロジックによって。

一見、夢の様な話に聞こえるかも知れないが、Google、Apple、Facebook、Amazon、Alibaba、Tencent といった巨大テックは、自分たちの得意領域において、既にこれを成し遂げている。

Amazonは膨大な購買データを分析することにより、1人1人に最適なおすすめ商品をレコメンドしてくる。それは私と、あなたでは全く違う内容であるが、それを導き出すロジックは1つなのである。

生活・暮らし領域では、まだこの影響はあまり受けていない様に感じる。けれども、この流れに境界はない、リアルな情報を、デジタル化できるのであればそれは例外にならない。そして、この流れは止まらない。

つまり、これは出来るか出来ないかという不確実性の問題ではなく、いつ出来るかといった時間の問題なのである。建築領域は、ECや SNSなどに比べて、ほんの少しだけデジタル化が遅れているだけなのである。

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では、こういった流れに対して、建築はどんな影響を受けるのだろうか?

現在は、1人1人の違い、地域の違いなどに合わせて、多様な答えを出しているのは誰か?

そう、まさに建築業界はこのノウハウを各社が利益の源泉としている。建築家、設計事務所、ハウスメーカー、ディベロッパー等の主要プレイヤーは、クライアントである生活者を満足させる最適な提案をすることを強みとしていた。生活者のことを誰よりも理解しているから、その地域のことを誰よりも理解しているから、生活者に最適なソリューション(設計提案)を誰よりも考えられるから。そして、生活者は、ソリューションに対して、対価を支払ってくれているのである。

まさに生活者を満足させる設計提案というソリューションに希少性が価値になっているのである。しかし、今後はこの希少性が失われていくのである。

ちなみに、クリエイティブな部分も例外ではないと私は思っている。顧客のニーズを聞き、それに対して最適なデザイン提案をすることは、これまではごく一部の才能ある人(クリエーター、建築家など)の特権だった。それはそのクリエイティブな能力やノウハウが直感、能力、経験といったアナログなものによって作られるものだったからである。けれども、これらもデジタル化は可能である。こんな価値観の人はこんなデザインを好むといったデータがこれから蓄積されていくはずである。であれば、その先に希少性は存在しない。たった1つのアルゴリズムによって、最適なデザインが導き出されるようになっていくはずである。


データがあれば、誰がやっても同じ答えを出すことができる世界。そんな世界で、既存の事業は成立し得ない。。。。

なかなか厳しい未来になりそうである。


ここまでは設計の話しであるが、続いて施工どうなるのだろうか?


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