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ブロックチェーン技術は建築をどう変えるのか?(様々な影響について)

ブロックチェーンとは、みんなでインターネット上にある事象の確からしさを保証する」という技術である。これは建築領域にどの様な影響を及ぼすのだろうか、基本的にインターネット上の話ではあるが、無関係ではなさそうである。

ブロックチェーンによる影響については現在、世界中で様々な事業化のトライアルが行われており、可能性は広がる。まだまだ想像も出来ない様なプロダクトが出てくると思われるが、ここでは現段階でも既に想像できるものを、いくつか考えてみたい。

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まずは、スマートコントラクトと呼ばれているものだ。これは活用範囲がとても広いのだが、主にはコピーや改ざんの懸念があり、これまでデジタル化できなった各種契約関係が、デジタル化できるようになるという部分に着目する。建築業界・不動産業界では、高価な取引きの内容を示す各種契約書の改ざんやコピーを防止する為に、今だに多くの契約関連業務が紙の書類に捺印するというのが当たり前となっていた。それは業務や手続きを複雑で手間がかかり面倒なものとし、業界の大きな課題となっていた。ブロックチェーンはここをデジタル化することを可能にする。それは業務を効率化するだけでなく、遠隔での手続きを可能にし、契約書管理などのコストを飛躍的に下げることに繋がるのである。

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続いて、住宅履歴のデジタル化である。管理者なくデータ保管ができる様になる。誤解を恐れずに(多少オーバーに)言うが、現在は、住宅履歴はほぼ管理できていない状況にある。新築時のデータすら残っていない建物も多い。住み始めてからのメンテナンス状況など、ほぼブラックボックスな状態。仮に残っていたとしてもその確からしさが疑わしい場合もある。かろうじて出来ているのは、履歴を積極的に管理して、品質を保障し、リフォームやメンテナンスでも、顧客との接点を取っていこうと積極的に考える事業者だけで、現在の新築偏重の業界においては、そのボリュームは少ないと言わざるを得ない。それが、新築時の図面や設備仕様、リフォームやDIY、設備の修理・変更・更新、更には利用状況、劣化状況などを、ブロックチェーン上に刻んでいくことが可能になるのである。もちろん、改ざんの懸念はない。

住宅履歴を武器にしている会社にとって、この話は厳しく感じるかも知れないが、実は業界としては、履歴をとりメンテナンスしていくのが当たり前になるのは、売って終わりではなく売った後の市場を創り広げていく話しであるため、結果良い方向にいくのではないかと思っている。

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そして、流通が効率化される。個々の会社内のサプライチェーンが効率化される。受注〜設計〜生産〜施工といった業務フロー上において、品質管理の結果がブロックチェーンに刻まれて、トレーサビリティーを簡単に追える様になる。どこでどういった部材が使われたか、どういった加工や工事がされたか、いつもと違う事をしていなかったか等が全てほぼコストをかけることなく、保管され、いつでも瞬時に確認することが可能になる。誰でも平等に品質を保証することができるため、これまで信用がなかった会社でも、良いものさえ作れば信用を得られる様になるし、不具合や事故があった時も、ニュートラルに原因解明ができる様になり、信用を高めることができる。

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最後に、業界構造が効率化される。現在の建築業界は、多くの会社が複雑に絡み合う構造をしている。その為に、例えば、商取引ではヒエラルキー上位の会社がファクタリングなどで資金繰りなどて有利になり、下位のものは資金繰りが厳しくなる傾向がある(もはや悪気もなく、商習慣になっている)などの構造的な課題があった。これが、会社を跨いで統一のブロックチェーン上にデータを刻むことで、ある平等なルールに基づいた商取引が可能になる。これは、不平等だった業界の仕組みを変えていくことになる。ヒエラルキー上位の会社にとっては良い話ではない様に感じるかも知れない。けれども、業界全体としては、健全し、効率化されていくことになる。小事に囚われずに、より大きな視座をもち、是非ともこの方向に業界を誘導していって欲しい。

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以上の様に、ブロックチェーンは業界の仕組みを大きく変える技術であると言える。構造的な不平等を解消して業界を健全化し、様々な業務やシステムを効率化していくことになる。なんとしてもこの技術により構造改革を成し遂げて、建築業界を盛り上げ、みんなが憧れる魅力的な業界にしていけたらと思う次第である。



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