Covid-19×モビリティ×建築 -コロナはモビリティそして建築をどう変えるか-
モビリティと建築、この両者はこれまであまり接点がなかった。
けれどもここの関係性に変化が生じていている。
そしてコロナによってこの変化が顕著になっていているのでは無いかと感じている。
と言うことを、ここでは考えてみたい。
もともと、モビリティと建築は、ほとんど接点がない2つの領域/業界だった。
モビリティは自動車、電車やバスなどの交通手段であり、つまり移動に使われる手段となる「モノ」のことを指していた。だから住むための手段である家という「モノ」とも交わることはなかった。
また、これまでの社会システムは、大量輸送手段による移動の効率化を追求していた。そのため、本来の出発地・目的地である家と、電車,バス,飛行機といった大量輸送手段の出発地・目的地がずれていた。移動を最適化できる場所が出発地・目的地になっていたと言って良いのではないだろうか。この観点からも両者が交わることはなかった。
けれども昨今、モビリティとは「移動」という状態を表す様になってきており、この状況が変わりつつある。
モビリティが移動を指すのだとすると、先の出発地・目的地がずれるということはなくなる。出発地・目的地はあくまで今自分がいる場所、つまり住宅などの建築になる場合が多くなる。
そして、出発地から目的地までシームレスにスムーズに移動できる様にするのがゴールだとすると、ここは一気通貫なシステムが求められることになり、もはや建築だ鉄道業界・自動車業界だなどとは言ってる場合ではない。利用する側からしたら、そこは一つのシステムとして機能してもらわなければ困るのである。
また、移動する「コト」が「モビリティ」であるのだから、移動する「モノ」が何であるかは関係なくなる。極端に言うと、自動車や鉄道で移動してもモビリティだし、家が移動してもモビリティなのである。そうなると、何を持って自動車・鉄道というのか、何をもって家というのかという定義さえも曖昧になっていくはずである。
その兆しはいくつか出てきている。
例えば、最近良く見かける様になってきている「コンテナハウス」ではないだろうか?簡単に設置/固定できるし、移動もできる、組み合わせ自由なので建物としてのフレキシビリティもある。
また、自動車メーカー、家電メーカーなどを中心に最近提案されているモビリティは、内部が居心地のよい居住空間になっている。移動のために一時的に使う窮屈な空間というよりも、移動時間を楽しむ居住空間である。
この両者はまさに、モビリティという考え方の中で、建築・自動車業界の境界が曖昧になってきていることを示している。もちろん1つ目の事例は建築業界が自動車業界側へ滲み出ている例であり、2つ目の事例は自動車業界が建築業界側へ滲み出ている例である。
若干、話は脱線するが・・・
この文脈からすると、鉄道業界はかなり厳しい状況にあると言えるのかも知れない。鉄道業界は線路と電車と決まったダイヤという完成したシステムの上に成立しており、フレキシビリティが少なく、他の業界に染み出しにくいからである。それでも超高級列車がいくつも出てきており、鉄道でありながら、究極的に居心地が良い空間による新たな旅行体験を提供したりしている。これは鉄道業界が他の業界へ染み出している事例と言えなくはない。ただ、それらも全て現システム内で完結してしまっていることには変わりなく、染み出し具合としては弱い。理想のモビリティシステムがいつでもどこにでも行けることだとすると、ここに既存の鉄道業界がどうか変わってくるのかは、あまり見えてきていない様な気はしている。
話を戻すと
このモビリティの状況を加速させているのが「コロナ」である!
コロナによって、人々はこれまでの大量輸送手段に「ノー」を突きつけた。今の輸送手段が全てではなく、人と接触しないパーソナルなニーズに応えられる移動手段を求めている。
現在はまだこの移動手段はない!
だからそういったニーズを持つ人たちは移動せずに家に閉じこもるしかない。もしくは時差出勤など空いた時間での移動や自動車での移動などをして、人との接触を回避している。
しかし、この新しいモビリティシステムができれば、人々は安心して移動ができる様になるのである。
限られた地点間で、決められた時間に提供されている大量輸送手段による移動ではなく、自宅から行きたい場所に、いつでも自由な時間に、少人数(もしくはひとり)で移動できる様になる。網の目の様な移動システムである。
では、この新たなモビリティシステムに向けて、建築側では何が求められるのだろうか?
現在進みつつあるハード面でのモビリティ側への染み出しは必要である。例えば下記の様なことが考えられる。
・家を可動可能なものにする。
・自動車を居心地の良いものにする。
・家と自動車の接点をフレキシブルにする。例えば自動車と家がドッキングできたり、家の一部が切り離せたり・・・
・道路から敷地までの段差問題、ここをモビリティ側がクリアできる様なソリューションが必要である。
もう一つソフト面でのモビリティ側への染み出しも必要になる。現在、家と自動車などが一体となって動くようになるには、家側がもっとデジタル化されなければならない。門扉や玄関ドアは空いているのか、家とはドッキングできる状態なのか、道路と敷地はどうなっているのか、などハード的な情報をデジタル化していく必要がある。
そうすることで、移動に関わる全てのアイテム(家、車、電車・・・)が1つのシステム上で共存して、今とは違うフレキシブルなモビリティシステムを構築することが可能になるのである。
この完成はまだ先であるが、ハードを含めたシステムを更新するのは、ソフトの更新と違って時間もお金もかかる。
今から少しずつでも進めていかないと手遅れになりかねない。
海外でも同じことが起こるはずである。それらに先んじてシステムを構築すれば世界に輸出するなんてことも可能になるのではないだろうか!!!
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