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Fintechスタートアップでの挑戦。機械学習によって加速する新たな投資運用戦略の構築とは

「ドンピシャでやりたいことができるのが、日本ではsustenだけだったんです――」。

今回は新卒で大手金融会社に就職し投資運用の経験を経て、現在sustenでポートフォリオマネージャーとして活躍する殿本さんへのインタビューです。大手金融から創業間もないスタートアップへ入社した理由や、sustenでの働き方、投資戦略を作るといった仕事について詳しく語っていただきました。

殿本 隼仁(とのもと はやと)
2016年株式会社みずほフィナンシャルグループ入社。Asset Management One USAに出向経験があり、Quantitative Strategiesにて機関投資家向けの計量投資戦略の開発、実装に従事。高流動性資産に限らず、インフラやエネルギー関連の低流動性資産への投資経験を持つ。2021年9月、株式会社sustenキャピタル・マネジメント入社。投資判断部にてポートフォリオ・マネジメント業務に従事。大阪大学大学院基礎工学研究科修了(修士)。

理系大学院から金融の世界へ

ーー殿本さんは新卒で大手金融機関に入社されたそうですね。もともと金融業界に興味があったんですか?

殿本隼仁(以下、殿本):金融業界に興味を持ったのは就職活動がきっかけでした。理系の大学で物理を専攻していたのですが、もっと経済やビジネスについて知りたいと思うようになって金融業界に惹かれていきました。

大学での研究は実験が中心で、新しい理論を発見するというよりはそもそも理論があり、それを勉強して実際に自分のフィールドで試し、新しい事象をを発見するといったことを行っていました。そういう意味でも金融の分野は、もともと投資理論があって、それを学びながら投資戦略を作って、実際に効果があるか試していくといったプロセスがすごく近いなと感じて、理系の考え方と相性がよさそうだと思ったこともあります。

ーー金融の中でも特に投資の領域に興味を持たれていたんですね。

殿本:そうですね!理論を知って学んで試して、といったPDCAを回していくことが面白いなと思っていて、当時からこのアセットマネジメントという業界を見ていました。新卒ではみずほフィナンシャルグループに入社したのですが、当時グローバルマーケット採用というものがあり、アセットマネジメントのポジションを募集していたので「これしかない!」と思って応募しました。海外で働いてみたいという気持ちもあったので、一石二鳥でしたね。

ーー当時はどんな業務を担当されていたんですか?

殿本:入社してから、インフラファンドのファンドマネージャー(※1)を3年半ほど経験した後ニューヨークに異動し、今のsustenで行っているようなクオンツ(※2)のファンドマネージャー、リサーチャーといった業務に携わりました。ニューヨークでの業務はトレーニー制度で1年間限定だったので、日本に戻ってまた半年ほどみずほで働いた後、sustenへの転職を決めました。

※1…ファンドマネージャー:投資信託の運用を行う専門家のこと。運用会社に所属して業務を行う。
※2…クオンツ:高度な数学的手法を用いてさまざまな市場を分析したり、さまざまな金融商品や投資戦略を分析したりすること。または、その分析をする人。

ーーニューヨークでの経験が転職の決め手になったんでしょうか?

殿本:まさにそうで、実はニューヨークでの業務と今sustenでやっている業務はほとんど同じなんですよ。ニューヨークで初めてARPという投資手法に触れて、こういう戦略があるんだとすごく興味深くて、クオンツとしての経験に加えて、もう少しARPの経験を積みたいと思っていました。日本でARPの実務経験がある人はなかなかいないので、ユニークな経験を積んで個人としても貴重な人材になれるのではないかと。

ただ、いざ転職活動を開始したのはいいのですが、そもそもアセットマネジメントでのARP運用ポジションの募集が少なく、ARPを取り扱っている外資企業のセールスなども受けていました。そんなときに山口さん(現susten CIO)からスカウトの連絡がきて、業務内容も自分のやりたかったこととドンピシャだったので、転職を決意しました。やりたいことに挑戦できる企業が日本だとsustenしかなかった、という感じですね。

独自の改良を加えながら実装。sustenの投資戦略作りとは

ーーsustenでは具体的にどんな仕事をされているんですか?

殿本:現在は、ファンドマネジメント、リサーチ、プロダクトマネジメントの3つの役割を担当しています。メインの業務がポートフォリオマネージャーとして、日々ファンドのトレードやリバランス、先物ロールなどの判断だったり、キャッシュ・マネジメント、といったことを管理して運用していくファンドマネジメントの業務です。

二つ目のリサーチは、投資の戦略を作って、社内システムに実装していく仕事になります。現在データサイエンティストのポジションを募集しているんですが、この部分の役割をメインにお任せすることになるかと思います。

そして三つ目のプロダクトマネジメントは、顧客管理部から上がってきたお客様からのお問い合わせに対しての回答を作成したり、投資に関する記事の執筆なども行っています。

ーー投資戦略を作るってどういうことなんでしょうか?

殿本:まず、sustenではR、B、Gという3つのファンドを所有しています。この中でR、BはETFといってマーケットに連動している金融商品を主体に構成されているのですが、Gファンドは絶対収益を目指すARPという投資戦略のファンドです。Gファンドについては、ファイナンス領域の学術論文などの知見をもとに、独自の改良を加えながら実装していく形になります。

僕が入社してからこの半年間でやってきたのは、簡単に言うとファンド内のARP戦略で足りないピースを埋めていくといった戦略開発です。株、債券、通貨、コモディティといった資産が横軸、キャリー、モメンタムといったスタイルファクター(※3)が縦軸です。一つでも多くのマス目を埋める、すなわち様々な戦略に投資をすることで、ファンド全体で特定の戦略への偏りがなくなり、リスクが分散されるのがメリットです。そしてその戦略一つ一つは、長期的な観点で投資に値するのかということを確認しながら作っています。

※3…スタイルファクター:株式や債券など、ある特定の資産の中で銘柄に共通する価格を動かす要因の総称。

ーーすごく難しい仕事というイメージがあるのですが、どうやってキャッチアップされていったんですか?

殿本:もちろん入社してすぐに全てを理解できたわけではありません。まずは現状を理解するところから始めさせてください、と上司である山口さんに伝えました。それを理解しないことには足りていないピースもわからないし、自分が注力すべき分野も理解できないと思ったからです。どういうロジックで戦略が作られているか、そしてマーケット環境とその戦略がどう結びついているかを理解する、ということを重点的に行いました。ひたすら内部資料や実装されているコードを見てロジックを解き明かして、それでもわからない場合は山口さんに質問するといった感じでしたね。まあほとんどは山口さんに質問して理解するというパターンが多かったです(笑)。

ーー理解ができて初めて新しい戦略を作ることができるんですね。

殿本:前職での経験も少し生きていて、ニューヨーク時代に相当な数のARP戦略を見ていたんです。自分でたくさん戦略を作ったというわけではないんですが、作られた戦略がどのカテゴリーに属しているかを判断したり、どういうロジックでその戦略作られているのかを理解するといった経験があったので、記憶の糸を手繰り寄せてsustenでの業務に当てはめて、新しい戦略を作っていきました。

投資戦略の立案から運用まで。少数精鋭だからこそのやりがい

ーー働く中での一番のやりがいはどういった部分になるのでしょうか?

殿本:戦略立案、検証、実装、運用の一連の流れをすべて経験できて、なおかつ新しい組織なので自分がスタンダードを作っていけるというところですね!sustenのようにファンドの組成から運用まで全てを自社で行っている会社は日本ではほとんどないと思います。

細かいところでいうと、自分が考えた投資戦略が効果を発揮したときは心の中でガッツポーズですね。戦略を作るといっても、アイデアをちゃんと見つけてこれるかというところがまず難しいんです。なかなか新しいアイデアが降りてこないんですよ。基本的には論文をもとに見つけてきているのですが、いざコードに落として検証してみるとダメだったということもあり得るので…。

ーーコードに落として効果のあるなしを検証するんですか?

殿本:そうですね!まずはコードに落としてグラフ化します。論文は結果しか書いていないので、過程の部分でもきちんと計算ができているのかといったことを確認する必要があるんです。実際に論文の通り投資するとどうなるのかというのを検証して(戦略バックテスト)、出来上がったバックテストが良好だと追加戦略の検討に移ります。ここでの結果はあくまで過去のデータを使うとどうなるかという話しなので、次は将来はどうなるのか、このままずっと良好な結果が期待できるのか、結果に対してどこまで自信がもてるのかといったことを色々な角度で検証していきます。

例えば、1年、1か月、3か月、5年と複数のパターンのグラフを比較して、1年では効果があるのに3か月にすると効果がないとか、そういったことがあると怪しいじゃないですか。あくまでもデータなので、たまたまよかったということが起こりやすいんです。なのでデータの検証結果が偶然ではなく、再現性があるのかといったことをいろんな角度で見ていきます。それでOKだったら、投資政策委員会(※4)での提案、決議を行い、本番で実装という流れですね。

※4…投資政策委員会:当社の投資信託サービスのパフォーマンス維持向上のため、月に1回開催される。運用に係る投資戦略、運用体制および運用プロセス等に関する事項を協議、決定。

ーー1つの戦略が出来上がるまでに相当な労力を費やしているんですね…!

殿本:戦略作りには日々新しいアイデアを探していくといったことがすごく重要になってくるので、常にアンテナを張って、新しいことを探して理解していく必要があります。一筋縄ではいかないところが面白さでもあるんですよね。自分で作った戦略やリサーチでの発見をチームの資産として残していけるという点も、自身の貢献が実感できてとても大きなやりがいを感じます!

ーー少数精鋭で行っている分、一人一人の裁量も大きくなりますよね。

殿本:入社してから一度もマイクロマネジメントをされたことがなくて、基本的には週に1回の定例MTGで全員がそれぞれ考えてきたものを披露して決めていくスタイルです。もちろん方針についてチームメンバーに相談に乗ってもらうといったことはあるのですが、思いついたことをどんどんやっても良いという環境なのですごくありがたいですね!

ーー基本的にはひとりで黙々と作業することが多いのでしょうか?

殿本:一人一人が自立して仕事をしてはいるのですが、sustenの良いところはアイデアを独占しないというか、「これは俺のアイデアだから渡さないからな」みたいな気持ちは誰ももっていなくて(笑)。新しいアイデアを見つけたら、Slackに貼って全員で共有していくんですね。なのでそれを読んでリサーチを考えても良いし、誰がアイデアを見つけたから偉いみたいな感覚は全くなくて、チームとして「どうファンドを良くしていくか」といった考えをベースとして仕事をしています。作業自体は一人で進めることが多くても、一つの目標に向かってチームで動いているといった感覚は全員が持っているんじゃないかと思います。

自分自身で組織のスタンダードを創っていく面白さ

ーーこれから入ってくる人にはどんな仕事をお任せすることになりますか?

殿本:今募集しているのがデータサイエンティストのポジションなのですが、リサーチをメインにお任せすることになります!金融業界出身の方であれば、ある程度マーケットについて理解しているかと思いますので、まずはマーケットに基づいた戦略のアイデアを見つけてくるといったことをお願いしたいです。

逆にデータサイエンスが得意で金融は未経験といった方には、最初から戦略開発が一人で完遂できるということは求めていないです。先ほど少しお話したようにチーム内でアイデアがあり、データを集めてコードに落とし戦略を作り込んでいくというプロセスの中で、データの計算方法や加工方法、戦略のモデル作成方法も1パターンではないので、より良い方法をどんどん提案してもらって先導して進めていただきたいです。

最近でいうと機械学習ベースのモデルを作ったのですが、無数の機械学習モデルがある中で、どのモデルを使うのがベストか、結果の検証方法はどのような手法が良いのか、など色々試しながら探り探りでやっています。なのでそこも知見を活かしてsustenのリサーチ基盤を整えていただきたいと思っています。今まで金融以外の分野で行ってきたデータ分析の経験を金融の領域で活かしていくイメージですかね!

ーー物事に対して突き詰めて考えたり、没頭できる方だとマッチしそうですね!

殿本:そうですね!あとはこの領域って予測の正答率がめちゃくちゃ低いんですね。52%くらい予測できれば良い方みたいなところがあるので、よりデータの精度を高めて正答率をあげていくことができれば、ファンドの戦略としてもどんどん向上していくんじゃないかと思っています。そういった細かい部分まで突き詰めて考えられる方であれば、面白いと思ってもらえる仕事なのではないでしょうか。

ーー今後チームで挑戦したいことはありますか?

殿本:これまでARP戦略をたくさん開発して必要な戦略は揃ってきたので、次はその一つ一つの戦略を使って効率的なポートフォリオの構築方法を探していくことになると思います。もう少し俯瞰的にポートフォリオを見て、アロケーションを考えていくといったところですね。その中で機械学習を活用して戦略の精度を向上させたり、ARP以外の分野にも挑戦したりしていきたいです。

ーー機械学習が入ることによって、具体的にどう変わっていくんでしょうか?

殿本:今まで捉えられなかったものが捉えられるようになるというイメージです。今までは一つのアイデアから一つの戦略を作るというのがスタンダードだったのですが、機械学習を使用することで複数のアイデアから一つの戦略を作ることができるようになりました。しかも、今効果を発揮していているのがどのアイデアなのかというのを機械学習の中で判断して、配分まで行ってくれます。アイデアとなるデータを入れれば入れるほど、この精度が上がっていくというわけです。

ーーなるほど。より精度の高い資産運用が可能になるということですね!どんな方であればチームのカルチャーにマッチしそうでしょうか?

殿本:学ぶ意欲が高くて、主体的に動ける人でしょうか。良い意味で細かくマネジメントされることがないので、自分が今何をするべきなのかを考えて行動していく必要があります。なので確立されたリサーチプロセスがない状況の中で、「何をすれば良いかわからない」と感じるのではなく、「何でもやっていいんだ」とプラスに捉えて、楽しみながら働いてもらえる方であれば、よりパフォーマンスを発揮していただけそうです!組織のためにやるべき仕事を見つける能力が求められる会社だと思います。

ーー仕事から何から、自分たちで作っていけるというのが醍醐味ですよね!

殿本:まだないものを0から作って組織を大きくしていくことだったり、戦略やシステムをもっと強靭なものにしていくこと、そういうプロセスを面白いと思える人にはピッタリの環境だと思います!自分のつくったものがいつの間にか組織のスタンダードになっている。そこに挑戦できるチャンスがたくさん転がっています!0から「創る」といった経験ってなかなかできないので、そこから得られることってかなりたくさんあるんじゃないかと思いますね。

最後に…

sustenは2019年に設立したFintechスタートアップです。2021年におまかせ資産運用サービス『SUSTEN』をローンチし、更なるサービス成長の加速を目指します。「家族や友人に勧められる投資運用サービスの創出」をミッションに、事業を一緒に盛り上げてくれる仲間を大募集中です!少しでも興味をお持ちいただいた方は、ぜひ一度お話しましょう!

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