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排出削減目標にお墨付きをもらうってどういうこと?~SBTについて調べてみた①~
サステナビリティの世界に足を踏み入れた私が、基礎知識を身に付けるために1000日連続のnote更新をめざす挑戦。本日は9日目(Day9)です。テーマは「SBT(Science Based Targets、科学に基づく目標設定)」です。
1.はじめに
昨日の記事ではSAF(Sustainable Aviation Fuel、持続可能な航空燃料)について書きましたが、今日はSBTについて調べてみようと思います。(ああ、似たようなアルファべットばかりでややこしい…。)
調べようと思ったきっかけは、ある企業のホームページを見たことです。”当社は、温室効果ガス(CO2)排出削減目標のSBT認定を取得しました”と書いてあるのを見て、「目標が認定される」ってどういうこと?と疑問がわいたので、早速調べてみることにしました。
2.なぜSBT?
(1)SBTとは削減目標への「お墨付き」
SBTとはなんぞや?を知るため、最初に手に取ったのは、光成美樹 ・著「[環境・気候変動]情報開示ルールの潮流―規制と市場動向によるサステナビリティ経営の深化」(経団連出版、2022年)でした。
SBTとは、Science Based Targets(科学をベースにした目標)の略で、企業が設定する目標に対して、それがパリ協定が求める水準と整合した、温室効果ガス排出削減目標であることを承認する(お墨付きを与える)仕組みです。
うーん、わかったようなわからないような。
お墨付きとありますが、そもそもなぜ「お墨付きを与える」あるいは「与えてもらう」必要があるんでしょうか。
(2)ネットゼロ、宣言したのはいいけれど…
みずほリサーチ&テクノロジーズの調査レポートを読んでみたら、「お墨付きを与える」ことがなぜ必要になったのかがわかってきました。
2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質的にゼロ化する――。「ネットゼロ」あるいは「カーボンニュートラル」と呼ばれる、野心的な宣言や目標設定を行う企業が増加している。日本国内でも、設定済の企業は既に200社を超えたとの調査結果もあるほどだ。しかし、各社の宣言を比べると、対象範囲や達成手段は、実に多種多様である。GHG排出量の実質ゼロ化を目指すことは共通だが、何を以て実質ゼロの達成とみなすか。その判断基準は定まっていないことがわかる。
おお、なるほど…。宣言をすること自体は自由にできてしまうんですね。
でも、本当にGHG排出量削減が進んでいるのかを調べようと思った時、その測定の範囲や方法などが企業によって違っていたら、見る側としては困ってしまいますよね。
(3)SBTを運営しているのは
ではその「判断基準」をちゃんと作ってしまいましょう、ということで生まれたのがSBTです。SBTを運営している「SBTi」(iは「イニシアティブ」の頭文字です)は、
CDP (Carbon Disclosure Project)
UNGC (United Nations Global Compact, 国連グローバルコンパクト)
WRI (World Resources Institute, 世界資源研究所)
WWF (World Wildlife)
の4つの機関が共同で運営しています。そうそうたる顔ぶれですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1697700880582-WH9UN94v9L.jpg?width=1200)
「SBT(Science Based Targets)について」
(4)企業側にもメリットがある
さて上記(2)がお墨付きを「与える」ことのメリットや動機だとしたら、企業側、つまり、お墨付きを「与えてもらう」側のメリットや動機はどんなものなのでしょうか。
WWFジャパンのホームページではこんなふうに説明しています。
1.5度目標の達成には、(中略)温室効果ガスの主要な排出者である企業が確実に排出削減を進めていくことが極めて重要です。一方で、個別の企業にとって、1.5度目標を達成するには自社は具体的にどうすればよいのか、判断することは容易ではありませんでした。
(中略)SBTiは企業が具体的にどれだけの量の温室効果ガスをいつまでに削減しなければいけないのか、科学的知見に基づいて目標を立てられるようなガイダンスを作りました。
このガイダンスに基づき、SBTiは企業に対して科学的知見と整合した目標(SBT: Science-based target)を設定することを支援し、適合していると認められる企業に対しては、SBT認定を与えています。
また、日経新聞の記事では次のように説明されていました。
SBT認定を得るのは、投資家や取引先などステークホルダー(利害関係者)からの評価を高めるためだ。脱炭素の機運が高まるなか温暖化ガス削減を掲げる企業は増えたが、ESG(環境・社会・企業統治)評価機関MSCIの渡部健司ヴァイスプレジデントは「基準や前提がバラバラな『勝手ネットゼロ目標』が乱立した」と指摘する。信頼性や透明性などが課題となっている。
実際に投資マネー呼び込みにつながる可能性もある。環境NGO(非政府組織)の英CDPは企業向けのアンケート評価でSBT認定に関する項目を設けており、同評価はESG評価機関や機関投資家などが使う。欧州証券取引所大手のユーロネクストは1月、1.5度目標に整合するとSBT認定を受けた企業で構成する投資指数の立ち上げを発表した。
供給網全体での脱炭素が重視されるなか、取引先へのアピールも動機になる。
「脱炭素の国際認定、ANAなど360社が取得 1年で倍増 投資家・取引先へアピール」
3.日本企業の認定状況
これだけメリットがあると、日本企業は進んで認定をうけたがるかもしれないな…と思って調べてみたら、やはりそうでした。
WWFのホームページによると、日本企業で最初に認定を取得したのはソニー(2015年10月)で、翌2016年9月には第一三共が、2017年には川崎汽船、コニカミノルタ、キリンホールディングス、コマツ、リコー、ナブテスコ等12社が参加し、そこからは急速に参加社数が増えていったそうです。
SBTi参加企業数と認定を取得した企業数(2023年10月10日現在)のグラフがありましたので、お借りして貼っておきたいと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1697637083972-dVrdq04L0Y.jpg?width=1200)
SBTについてはまだまだ奥が深そうなので、続きはまた明日書きたいと思います。