TNFDの特徴についてちょっとまとめておこうと思います
12月18日の日経電子版記事によれば、環境省は企業の事業活動が水や森林、生物多様性といった自然資本にどのような影響を与えているか開示するよう求めるとのこと。
TNFDを「参考にする」とのことで、ええ?!また別の開示ガイドラインが出るってこと??と頭が混乱しておりますが… とりあえず今できることはTNFDへの理解を深めることしかないのでしょうね。
ということで本日は、TNFDの特徴について今わかっていることをちょっとまとめておこうと思います。
Q:TNFDのマテリアリティへの考え方は?
(参考:NTTデータ)
基本的には財務マテリアリティアプローチですが、ただし、開示する企業がダブルマテリアリティを適用したい/する必要性がある場合は「インパクトマテリアリティアプローチを追加してもよい」と記載しているようです。
Q:v1.0は前回(v0.4)からどう変わった?
(参考:NTTデータ)
開示推奨項目に、先住民族と地域コミュニティ(IPLCs)、影響を受けるステークホルダー、その他のステークホルダーに関する人権方針と管理活動に関する新たな勧告が追加(ガバナンスC)
LEAPアプローチのスコーピングフェーズ項目の変更
LEAPアプローチの「L2:影響と依存のスクリーニング」として重要な影響依存に関係する事業や部門、バリューチェーンをスクリーニングする項目が追加
LEAPアプローチの「E4:影響の重要性評価」「A4:リスク機会の重要性評価」として、それぞれ影響とリスク・機会の重要性評価の項目に変更され、ISSBやCSRDの要求項目に整合
Q:TNFDと他の開示枠組みとの関係は?
TNFDはTCFDとISSBの両方の文言、構成、アプローチに従って気候変動と自然に関連した報告を統合することができると明言しており、要約から本文まで読み進めると、CSRDやGRIにも言及されています。
ISSBとの関係
ISSBが今後検討する挙げている新たなテーマ候補に「生物多様性、生態系、生態系サービス」があります。TNFD提言にも「ISSBが自然に関する基準を検討する際には、TNFDの取り組みが参考にされる」という言及があります。
GRIとの関係
(参考:NTTデータ)
インパクトマテリアリティについて、GRIとESRSの定義を比較したうえで、規制上のガイダンスがなければGRIの定義に沿うことを勧めている
GRIについては、GRIにおけるインパクトマテリアリティの決定プロセスを引用し、GRIの4つのステップがそれぞれLEAPアプローチの分析フェーズと対応関係があることを示しており、プロセスについても一致するものであることを示している
CSRD/ESRSとの関係
TNFDが、EFRAG との間で自然関連報告推進に関する協力協定に署名したとのニュースが2023年12月21日に発表されました(出典:EFRAG)。その中で、ESRSの開示とTNFDは特にどのような点で整合性がとられているのかについて、下記のように説明されていました。
Both the TNFD disclosure recommendations and the ESRS reporting areas are organised around the four pillars of the disclosure recommendations of the TaskForce on Climate-related Financial Disclosures (TCFD): Governance, Strategy, Risk and Impact Management and Metrics and Targets.
(TNFDもESRSも、TCFD開示の4つの柱=「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」を中心に構成されている )
Particularly, both the TNFD and ESRS put high emphasis on the need to disclose on nature-related impacts, risks and opportunities (IROs), as well as dependencies from nature to the extent they generate material risks.
(TNFDとESRSは特に、①自然関連インパクト ②リスクと機会(IROs)③自然への依存について、これらが重要なリスクを生み出す範囲での開示を重視している)
All 14 recommended disclosures of the TNFD are addressed in the ESRS.
(TNFDが推奨する14の開示はすべてESRSに含まれている)
The ESRS require its disclosures to be based on a double materiality principle. The TNFD framework has been designed to accommodate an impact materiality perspective, facilitating alignment with the ESRS.
(ESRSはダブルマテリアリティに基づく開示を要求している。TNFD のフレームワークは、ESRS との整合性確保のためインパクト・マテリアリティの観点に対応するよう設計されている)
The TNFD developed the LEAP approach, a suggested guidance for market participants to identify and assess nature-related issues. The ESRS state that companies can conduct their materiality assessment on the sustainability matters pollution, water, biodiversity and ecosystems and circular economy using the LEAP approach phases.
(TNFDはLEAPアプローチを開発。ESRS は、企業が LEAP アプローチを活用して汚染(Pollution)、水と海洋資源(Water and marine resources)、生物多様性と生態系(Biodiversity and ecosystems)、循環型経済(Circular economy)に関するマテリアリティ評価を実施できるとしている)
※IROsとはimpact, risks & opportunitiesの略
Q:TCFDを経験していればTNFD対応は楽勝?
(参考・出典:大和総研「生物多様性の開示が本格化」)
TCFDの推奨開示項目と同じく「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標と目標」の4つに分類されているところに共通点があります。
一方「TCFDでは開示の対象が機会とリスクであるのに対し、TNFDでは機会、リスクに加えて、依存、影響についても開示しなければならないなど、いくつかの相違点も見られる」ため、注意が必要なようです。
Q:TNFDはいつ義務化される?
2023年11月の朝日新聞デジタル記事には「さまざまな指標の測定・分析方法が未成熟といえるため、短期間での義務化は難しいと見られています」とありますが、一方で、来年(2024年)はコーポレートガバナンス・コード改訂の年であるため、日経クロステックの記事では「その際にTNFDについても同様に情報開示が義務化される可能性がある」としています。
なお、TNFDではありませんが、ISSBが今後、自然資本に関する開示基準を策定した場合、それがSSBJ策定の日本版ISSB基準に反映→有報での義務化、というプロセスをたどる可能性が、との指摘もあります。
以上サステナビリティ分野のnote更新1000日連続への挑戦・75日目(Day75) でした。それではまた明日。