義務化後初の有報・人的資本情報開示に見られた「3つの課題」
1.はじめに
この文章は、新米サステナビリティ担当者である私が、日経電子版・2023年9月25日掲載記事「響かぬ人的資本の情報開示『人が資本』の経営は本物か」を読んで学んだこと、重要だと思った部分の備忘メモとして作成したものです。
日経の会員限定記事のようですが、リンクを貼っておきます↓
このメモが、私と同じようにサステナビリティ分野について学び始めたばかりの方々や、日々更新されるこの分野の情報へのキャッチアップに苦労しておられる方々のお役に立ちましたら幸いです。一緒にがんばりましょう!
2.この記事から得た学び
この記事では、上場企業などが2023年3月期の有価証券報告書(有報)から義務づけられた人的資本の情報開示内容の課題について、民間の調査結果をもとに論考されています。
課題は大きく3つあったようです。
1)海外を含む連結ベースの開示がまだ進んでいない
今回の制度改革の目玉のひとつになっていたのが、「男女賃金格差」「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」の3つの指標を開示すること。
今回の調査対象となった企業群では、いずれの指標も「単体ベース」での開示実施率は90%以上と高かったものの、海外グループ企業も含めた「連結ベース」で開示している企業は10%台から20%台にとどまっていたとのこと。
2)経営戦略と結びつけた説明が不十分
より具体的には、
経営戦略を実現するための人材像
そうした中核的な人材の育成方針
の記載ができていた企業が少なかったとのこと。
なお、これに関しては、そもそも「重点事業を担う人材に必要な能力や資質を、企業が定義できていない」のではないか、との専門家の指摘も紹介されていました。
3)人権への言及が不十分
現時点では有報への記載ルールが設けられていないこともあり、有報で人権への言及があった企業数そのものも少なく、また、記載内容自体も
大きな方針のみ
細かな取り組みのみ
のいずれかになっている、つまりバランスのとれた開示ができていない状態にあることが指摘されていました。
3.まとめ
義務化後初の有報・人的資本情報開示に見られた「3つの課題」とは:
1)海外を含む連結ベースの開示がまだ進んでいない
2)経営戦略と結びつけた説明が不十分
3)人権への言及が不十分
4.あわせて読みたい(発展学習)
今回学んだ内容に関連する新聞記事や論考、書籍などをピックアップし、追記していきます(随時更新)。
■企業持続可能性報告指令(CSRD)
EUで今後始まる「企業持続可能性報告指令(CSRD)」では、「人」に関する開示項目がかなり細かく規定されており、人権重視の方針が見て取れるとのこと。
CSRDは今後、日本の指針作りにも影響していくはずなので、2022年11月改訂・公開済みの報告基準草案の原典を読んでみたいと思います。
(内容を確認してメモを作成したら、ここにリンクを掲載します)