知らないと恥をかくマーケティング現場でやってはいけない7つのNG事項。私はこれで干されました。
マーケティングというと、いかにも頭が良くてアイデアと企画でヒット商品を生み出すような仕事だと思われるが、それはごく一部の優秀な人が多い現場のみだろう。
大半のマーケティングの仕事では「それっぽい仕事が卒なくできるヤツ」のほうが好かれるし評価される。
たとえば、Excelやスプレッドシートで言われたとおりにデータ収集できたり、当たり障りないWebブログ記事を書けるような人が、マーケターとして適性が高い。
そういう職場では、下手にマーケティング本を読んで触発されたような素振りは一切見せず、従順なしもべを装っておくほうがいい。じゃないと、だいたい潰される。マーケティングというのは陰湿な仕事なのだ。
この記事では、私自身が実際に体験したことをもとに「消されるマーケターの7つの地雷行為」を、紹介していこうと思う。
ユーモアや比喩が通じない人が意外と多い
マーケティングというと、大手広告代理店のイカしたアイデアマンの伝説的なエピソードや、キレッキレのプレゼンで関係者をあっと言わせて動かす華やかなイメージが強い。
でも現実は全然逆で、むしろロジカルで冗談が通じない機械みたいな人たちが圧倒的に多い。感情や情熱を出す人間は「なんだあいつ?」と疎まれ排除されやすい。
また、コンサルタントみたいに「バリバリのロジカル」ってわけでもない。どちらかと言えば、なんとなく難しい言葉を並べて「それっぽく見せる」だけの「雰囲気だけロジカル」が一番ウケる。例え話や比喩も通じないし、説明もなるべくストレートにしないと「で、何が言いたいの?」と無表情で返される。
なので、明快でシンプルなことだけ言っておくコミュニケーションを心がけておくと、いいだろう。比喩や複雑な表現をしたら、それだけマジでキレられて「使えないヤツ」扱いされるのがオチだ。
マーケティング用語はマウント用の道具
マーケティングの現場では、マーケティング用語は実用的というよりは、「知ってれば知ってるほど、使えば使うほど、すごさをアピールできる呪文」くらいの認識でいたほうがいい。
自分の知っている定義と少しでも違う使い方をしている人がいれば、ここぞとばかりに「それ、意味違いますよね?」「Google検索の意味と違うですよ」と公然と指摘して、相手の鼻をへし折る。それができるやつが「優秀なマーケター」扱い。これ、本当にあった怖い話ね。
3Cや4Pといったフレームワークも、内容なんかそっちのけで、なんとなく「フレームワークを埋めてそれっぽく見せる」ことが重要視される。キレイなデザインで資料を作れれば、完璧だ。分析として正しいかどうかの議論や、実際に成果が出るかの検証なんてのは、大半の人が気にしていないのが現実だ。冗談のように思えるかもしれないが、これが多くの現場での実情。
いわば、マーケティング用語は「知ってて嬉しい知識コレクション」「マウントを取るための道具」でしかないのだ。ガンガン、みんなの知らないマーケティング用語を覚えて、自分の優位性を示そう。
下手にデータ解析しようものなら鬱コースまっしぐら
「データドリブンマーケティング」なんて概念があるけれど、実際のところ、それをちゃんと理解している人は意外と少ない。解析ツールを見てはいるものの、そこから示唆や仮説を出せる人はごくわずか。
ダメなマーケティングの現場では、解析ツールから拾った数字がそのまま横流しされることも珍しくない。まるで「わかる人いたら、どうにかして」とでも言いたのか、それとも本気で目立った数字だけ流せば活かせると勘違いしているのか、それはわからない。
そういう状況に耐えかねて、下手に「自分、解析ツール使えます!」「数字読めます!」みたいなムーブをしたら最後、地獄を見る。
それに加えて「データベースちょっとわかります」「プログラミングできるのでGTMの設定もできます」なんて素振りを見せようものなら、鬱まっしぐらコース。
そういう現場では、下手のことを言わずに「LTVって平均購入単価 ÷ チャーンレートらしいっすよww」と、どっかのオウンドメディアに書いてる方程式をそのまま適用しておくのが、間違いない。
「洞察」よりも「形式」のほうが死ぬほど大事
マーケティングでは「インサイト(洞察)」が大事だと言われるが、そんなに大事ではない。インサイトは目に見えないものなので「エビデンス(根拠)」や「ファクト(事実)」が求められる現場では、存在しないも同義だからだ。
そんなものを主張したら最後、「あいつは妄想を語る変人だ」と白い目で見続けられることとなるだろう。
そんなものより、大事なのは「形式」だ。
「ニーズを細かく追求して見つけた独自の洞察」よりも効果が大きいのは「キレイに整形された誤字脱字のない文体のお上品な報告資料」や「シンプルで整理されたわかりやすい資料」だ。たとえば、マーケティングに関する説明も「超人パワー100×100×回転=1万」ぐらうにシンプル化したほうが、伝わりやすいしインパクトもある。
なるべく数字と図表でシンプルかつ整った資料のほうが、多くのマーケティングの現場では評価される。逆に整ってない資料であったり、整理されてない思考でアウトプットすると「無能」の烙印を押されるので、注意しよう。
履歴書をキレイに手書きで書く感覚こそが、マーケティングの現場でも重要なのだ。
「顧客目線」とか大ウソで上司やクライアントへの忖度が重要
マーケティングの現場で暗黙的に最大の地雷ワードとなっているのが「顧客目線」だ。
ここでいう顧客とは、BtoCであれば消費者やエンドユーザーを指しているし、BtoBの受発注であってもクライアントが扱う商材がBtoCなら、同様だろう。
もちろん、マーケティングの現場では、実はそんな深いことは考える必要はない。
「顧客目線」とはシンプルに、自分に何かを頼んでくる「上司」「社長」「取引先」なのだから。
なので、たとえネット口コミやユーザーインタビューで顧客ニーズを掴んでいても、それを口に出したり、実務で反映しようとしてはいけない。
なぜなら、そんなものは大半の企業は見ていないし、見る気もないからだ。
単に「うちは顧客目線です!」「顧客起点マーケティングをやってます!」と唱えておけば、なんか許された気がする程度の免罪符でしかない。
もちろん、真のマーケターを目指すなら顧客目線の追求は大事だが、そんな理想などは上司や社長の気分や評価の前には、ゴミみたいなものだ。
社員のお客様は上司や社長。顧客対応があるなら取引先。消費者やエンドユーザーなんてものは二の次。数字の足しになればどうでもいい。
それで消費者運動が起ころうが、自分には何も責任がないのだから、気にするだけ無駄だ。
セールスとマーケティングはまったくの別物
私はドラッカー信者なので「マーケティングの目指すところはセールスをなくすこと」という言葉に感銘を受けている。すなわち、マーケティングの理想形とは、販売やセールス(営業)行為がなくとも、集客や販売が成立する状態を目指すことなのだ。
そのためには、セールスについての理解も必要だ。たとえば、優秀な営業部門が使っている営業資料をサイト内に転用できたら、それだけでセールス時の負担が減らせるかもしれない。
しかし、そういう理想論は現実のマーケティングでは一切、求められていない。
まず、一般の会社では「別部門の仕事は別の仕事。自分たちには関係ない」というスタンスが当たり前だ。下手に部署間を越えて動こうものなら、周りから疎まれる。
そして意外なことにマーケターの多くが「なんでセールスの話が出てくるの?」という認識でいることも多い。それも集客後の顧客対応が必要となるBtoBでもだ。
なので、マーケティングの仕事をするなら「自分たちはマーケティングをやっている!」という矜持を持ちながら、他の部門の仕事にはできるだけ無関心でいたほうがいい。もちろん、営業部門と連携したほうが全体の売上向上につながるなんて頭のおかしいことは言わないことに越したことはない。
なんなら「あいつら、わざわざ外に出て営業とかやってるww時代遅れのフィールドセールス乙ww」「俺達は少ない労力で効果的に集客できる頭脳派だ」と気取っておこう。他部門を見下す選民意識をひけらかすことも、社内政治で優位性と掴むためには大事だ。
周りで流行ってる手法を真似しておけばOK
「マーケターは流行りを生み出す側だ!イノベーターとしてトレンドを作り出してやる!」
そういう意気込みは悪くないが、ほとんどのマーケティングの現場では疎まれる考え方である。
正直言って「テキトーに流行りに乗って真似しておく」のが、9割のマーケターの仕事だと思っておくほうが、痛い目を見なくて済む。
たとえば、オンラインセミナー集客が流行ったとしたなら、どこかで見たことあるテンプレートバナーと告知文を真似るほうが社内でのウケもいい。なぜなら「前例があること」や「周りがやっていること」は、確実で安心感があるからだ。
マーケティングというのは、言ってしまえば「周りと同じことをやる空気を読む仕事」なのだ。価値創造とかそういう理想論は、やろうとするだけ無駄。TikTokで踊る動画がバズれば、大手企業もそれを真似するのが定石だ
。そうすることで多くの人が「なんかすごい仕事した気」になって喜んでくれる。それで経済は回るのだ。
上司やクライアントにも、できる限り「前例があって具体的に説明できること」をプレゼンしたほうがウケがいい。挑戦的なマーケターなどほとんどいない。守りの姿勢こそ、クライアントや上司から一目置かれる、できるマーケターとして必要な資質だ。
森岡毅のような「劇的V字回復」なんてことは、まったく求められていないということにいち早く気づき、周りと同じ成功事例の多いことをやろう。
最後に:マーケティングを仕事にしようとしてる人へアドバイス
以上のように、マーケティングなんていう仕事は「専門書に書いてる理想論を鼻で笑う態度」と「顧客目線なんてキレイゴトに流されないで上司やクライアントに媚びる姿勢」こそが、上手くやっていくための秘訣だ。
間違っても、ドラッカーやコトラーの本に触発されたり、伝説的なマーケターの奇跡の打ち手に憧れてはいけない。
「会社に入ったのなら、会社が絶対的神であり、ルールである」
この掟を忘れてはいけない。
もちろん、君がフリーランスや派遣社員のような部外者であっても、社員のように会社に従順な奴隷として振る舞わなければ、疎まれて消される未来が待ち受けているだろう。
大半の企業やマーケターにとって「顧客目線なんてどうでもいい」というのが本音であり、データドリブンマーケティングのようなトレンドワードも「やってる風に振る舞っておけばカッコいいし最先端なことしてる気になれる」ためのファッションでしかないのだ。
本質なんてものは追わないで、形式通りにやっておくのが一番いい。
たとえ成果が出なくても、形式通りにやっておけば評価されるし、逆に成果を出しても形式通りにやっていないと「本当に君の成果なの?」と疑われて左遷待ったなしだ。
もちろん、そうじゃないマーケティングをやっている会社も、中にはある。君が本来のマーケティングをしたいならそういう会社を見極めて入社するべきだ。
ただここで紹介したような「本に書いてあるのと全然違うマーケティング」を行っている会社も多いらしい。
こういった職場では「僕の知らないマーケティング」「専門用語を唱える儀式みたいなマーケティング」というの意識して、顧客や市場ではなく上司やクライアントの方を向いた業務態度が重要となる。
ぜひ、私が干された体験を参考にして、君たちは君たちの環境に合ったやり方で、上手く立ち回ってほしいと思う。