企業が見捨てたロストジャーニーとは?声なき声を無視し続けたマーケター達が懺悔すべき7つの大罪
私は猛烈な怒りに満ちあふれている。
その理由は、Webサイト上で購入しようとした商品が、取るに足らないUXの漏れにより、購入できない体験をしたからだ。
「この会社は顧客をナメているのか?」
なにゆえ、自らが調べて購入手続きをしないこの時代において、こんな不愉快な気持ちをさせられないといけないのか?
かの、P.F.ドラッカーの至言を思い出す。
現代においては「消費者運動」とは、すなわち「炎上」「ネット上のネガティブ評判」と言ったところだろうか。しかし、必ずしも不満がある顧客のすべてが声を出すわけではない。
否。「サイレント・マジョリティ」という言葉が意味する通り、大半の顧客は「黙って離れる」のが常だ。
「お客様の声を聞かせてください」と語る企業は多い。
しかし単なる消費活動において、わざわざ自らの貴重な時間を割いてまで声を届けたいと願う顧客が、どれだけいるだろうか?
ふざけた企業がもたらした「不快な顧客体験」に対しては、9割以上の人間が黙って「NO」を突きつけるというのが現実である。
多くの企業で、カスタマーサポートやカスタマーサクセスが形骸化するのも、すべては「顧客に真摯に向き合っていないから」に過ぎないだろう。
そんな事実にすら気づかず、呑気なマーケターは顧客の痛みに気づかず、勝ち誇ったように数字とデータを眺めて今日も自らの成果を語り続けている。
これこそ、ドラッカーの言った「マーケティングにとっての恥」であり、万死に値する。
先日、PR TIMESにて「ロストジャーニー」という概念が提唱された。
いかにも、気取ったマーケターが好きそうな、ロジカルに図解化された形式ばった理論が紹介されている。
しかし、こんな生ぬるい資料で生々しいまでの顧客の痛みと怨嗟を伴う体験が伝わるのだろうか?
「顧客目線」「顧客起点」などと言うが、こんな気取った資料では、俺たち消費者が受け続けた恨み辛みは気取ったマーケターたちに届くことはないだろう。奴らにとっては、クライアントと楽しく宴会して話を通しやすくするのが仕事なのだから。
―――私はそんな「マーケター」と名乗る人種が許せない。
奴らはクライアントの機嫌取りばかりするだけで、本質的には顧客のことなどカネヅルとしか見ていないからだ。
これはそんな寝ぼけたマーケターたちが犯した罪を問うための、我々消費者が今まで企業から受けてきた”ペイン”を赤裸々に綴った、目次録だと予言しよう。
顧客を迷路に迷わせる暴食ゆえの情報設計
低価格の商品を求めてやってきた顧客が直面するのは、ただ膨大に並べられた商品リスト。例えば、食品や化粧品など、衝動的に買いたいと思った瞬間にさっと手に取れるような導線が必要にもかかわらず、彼らを待ち受けるのは複雑で煩雑な商品一覧ページ。ブランドが自己満足で詰め込んだ情報の山が、顧客の視界を遮り、まるで迷路のように彼らを迷わせる。
「どうして欲しい商品にすぐ辿り着けないのか?」
この一言が頭をよぎりながら、顧客はページをさまよう。安価で気軽な買い物のはずが、気がつけば疲労感だけが積み重なり、興味はどんどん冷めていく。そんな中、ただ目に飛び込んでくるのは関係のない商品群や視認しにくいリストの羅列。「どうでもいい情報なんていらない。欲しいのは、商品を見つける手軽さだけだ」との声は、ブランドには届かず、その煩わしい道をさまよう彼らのストレスは募るばかり。
「この企業は顧客の時間をなんだと思っているのか?」
本来ならば簡単な選択で済むはずの場面でさえも、ブランドの食い意地のような情報設計が、顧客に重くのしかかる。
必要な情報を提供しなくても伝わるという怠惰
10万円以上もする商品を前に、顧客が求めるのはしっかりとした情報、安心して購入を決断できるだけの裏付け。しかし、ジュエリーや高級家電といった高価格商品を扱う企業は、なぜか「顧客には分かるだろう」と高を括り、肝心の情報提供を怠っている。カタログのような上っ面だけの説明や薄っぺらい文句だけが並ぶページで、企業は一体何を伝えたつもりなのだろうか?
「この商品に本当に価値があるのか?」
高額を支払う以上、顧客は納得のいく説明を求めている。なぜかそれが伝わらない。それどころか、まるでブランドの名前さえ出しておけば売れるかのように、肝心の価値や品質についての情報はあいまいなまま。顧客が本当に知りたいのは、機能の信頼性やそのブランドの背景にある理念なのに、それに応える説明がない。
「なぜ、ここまで不誠実なのか?」
期待を込めてページを訪れた顧客は、やがて失望に満ちた怒りに変わる。顧客の理解に寄り添うでもなく、ただ「欲しいだろう?」と突きつけるような企業の怠惰。顧客が感じるのは、企業にとって自分が単なる「高額支払人」に過ぎないという冷たい現実だ。
不必要な外出を当然のごとく促す傲慢
不動産や自動車を検討する顧客がオンラインで情報を得られるのは当然のはず。しかし企業は、あたかも顧客の時間を軽視するかのように、ただ「実物を見に来てください」と無造作に店舗への訪問を促すばかり。ウェブで十分な情報を提供することなく、顧客に負担を押し付けるその姿勢に、傲慢さ以外の何を感じれば良いのだろうか?
「わざわざ足を運ばせるほど、何を準備してくれるのか?」
それでも、興味を持って訪問した顧客が待ち受けるのは、ウェブで見た内容とほとんど変わらない曖昧な説明や、営業トークだけ。実際に見てみたい、試したい、そうした期待に応えられる準備もなく、ただ一方的に足を運ぶよう要求するばかりだ。
「何様のつもりだ?」
チャネルを跨いで顧客のニーズを掴む努力を放棄し、実店舗に誘導することを当たり前とする企業の姿勢に顧客は憤りを覚える。貴重な時間と労力を奪われ、得られるのは企業側の都合で構築された体験のみ。顧客の立場に立たないその傲慢さが、次第に企業と顧客の溝を深めていく。
手間をかけさせる嫉妬の入力フォーム
ホテルや交通機関の予約。顧客はただスムーズに手続きしたいだけだというのに、企業は容赦なく入力を要求してくる。簡単に済むはずの予約が、複雑な条件設定や膨大な入力項目によって、あたかも顧客が試されているかのように煩雑になっていく。
「なぜ、ここまで手間をかけさせるのか?」
少しでも便利にしようと、顧客は検索条件を指定したり絞り込みを試みたりするが、どこまでも精度の低い検索機能が邪魔をする。何度も同じ情報を入力させられ、あたかも「この手続きが嫌なら他へ行けばいい」と言わんばかりの企業の態度が、顧客の苛立ちを募らせる。
「こんな面倒を押し付ける理由は何だ?」
ただ予約したいだけの顧客が、無意味に増えたページビューの犠牲者となり、画面の前でため息をつく。その手間と時間を奪い取る嫉妬深い入力フォームが、顧客の忍耐を限界まで試し、最終的には「こんな企業と関わりたくない」と思わせるのだ。
契約の煩雑さで離脱の誘惑を招くオプトイン色欲
通信サービスや保険の契約。顧客は信頼できる契約を望んでいるだけなのに、そこに待ち受けるのは延々と続く設問と煩雑な手続き。新規契約や更新の際、何度もページをめくらせ、無数の入力を強いるその姿勢に、企業の色欲が垣間見える。
「なぜ、契約一つにここまで苦労しなければならないのか?」
顧客が本当に必要な情報は、シンプルでわかりやすいはず。それなのに、企業は顧客の理解を置き去りにし、迷わせるような質問や余計な項目を次々と突きつけてくる。求める情報はすぐ手に入らず、FAQも実際には役に立たない。まるで「もう諦めてしまえ」と囁かれているような気さえする。
「こんな複雑な手続きに耐える価値があるのか?」
顧客はやがて疲弊し、契約を続ける意欲を失っていく。企業の求めるのは本当の信頼関係ではなく、あたかも顧客を縛りつけるための複雑な罠。無意味に時間を奪い、顧客を離脱へと追い込むそのオプトイン色欲が、次第に契約を無価値なものにしている。
利用者同士のライアーゲームを誘発させる強欲の奴隷
人材業界やマッチングアプリ。顧客が望むのは、信頼できる相手や案件と出会うこと。それにもかかわらず、企業は精度の低い検索機能を押し付け、顧客同士をまるで「強欲なライアーゲーム」に巻き込んでいく。信頼感のないパートナーとの無駄なやり取りや、不確実な情報のやり取りを繰り返させられるうちに、顧客の忍耐は限界に近づく。
「なぜ、ここまで無駄な競争に巻き込まれるのか?」
パーソナライズされているはずのマッチングが、実際には粗雑で、顧客の期待とはかけ離れたものばかり。結局、欲しい情報や信頼できる相手は見つからず、見知らぬ相手と不毛なやりとりを続けさせられる。この悪質なシステムが、顧客を無意味な駆け引きに駆り立てるのだ。
「信頼できる相手との出会いを求めているだけなのに、なぜここまで振り回されるのか?」
顧客の不安や希望を無視し、利益だけを追求する企業の強欲。そのせいで、顧客は「誰も信じられない」と感じ、疲弊していく。利用者同士が、互いを疑い、争うような環境を生み出しているのは企業の怠慢と強欲であり、顧客はそのゲームの奴隷にされているにすぎない。
商談破断を意識したWebサイトで憤怒のクロージング
B2B企業の商談申し込み。顧客が望んでいるのは、十分な情報を得た上で営業担当者と実りある話を進めること。それにもかかわらず、企業は必要な情報を提供しないまま「とりあえず商談の申し込みを」と誘導する。顧客は、求めている答えを見つける前に、複雑なサイトナビゲーションと不親切な情報構造に阻まれ、商談に至る前に挫折させられる。
「なぜ、ここまで迷わせるのか?」
顧客は必死で情報を探すが、画面には無関係な内容や冗長な説明ばかり。たどり着きたいのはシンプルな解答と安心感だが、企業は顧客に冷たい迷路を強いる。こうした「憤怒のクロージング」によって、顧客は最初から商談に価値を感じられず、興味が失われていく。
「これでは商談どころか、企業に信頼を置くことさえ無理だ」
顧客がいざ商談に進む前に感じるのは、苛立ちと失望だけ。情報不足と煩雑な構造のせいで、顧客の疑念は商談のテーブルに辿り着く前に膨れ上がる。顧客を支援するつもりがないとしか思えない企業の姿勢が、この「憤怒のクロージング」を生み、信頼関係の芽を摘み取っているのだ。
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