楽天やソフトバンクに先見性を感じない理由。ピーター・ドラッカーの”イノベーション”定義から分析して見えたこと
「イノベーション」とは何か?この言葉は頻繁に使われますが、真の意味を理解し、実践することは難しいです。経営学者ドラッカーは、イノベーションを単なる技術革新だけではなく、「新しい価値を生み出す行為」と定義しています。では、日本を代表する一流大手IT企業である楽天やソフトバンクは、ドラッカーの定義する「イノベーション」を起こしたのでしょうか?今回は、これらの企業の取り組みを振り返り、ドラッカーの基準でイノベーションを評価していきます。
ドラッカーの「イノベーション」の定義
ピーター・ドラッカーは、イノベーションを「既存のリソースに新しい価値を与えること」と定義しました。彼は、イノベーションは単なる新技術やプロダクトの導入ではなく、社会に新しい価値を提供するという点で画期的であると述べています。
イノベーションの重要な要素として、以下の点が挙げられます、
新しい市場や価値の創出:従来のビジネスモデルを超えた新しいアプローチを提供。
消費者行動の変革:ユーザーに新しい習慣やライフスタイルを促す。
競争優位性の確立:他社が追随できない独自の強みを持つ。
この基準を基に、楽天とソフトバンクモバイルがイノベーションを起こしたのかを見ていきます。
楽天:Eコマースのパイオニア
楽天は、日本におけるEコマースのパイオニアとして、オンラインショッピングプラットフォームを提供し、消費者と中小企業を結びつけました。これにより、消費者の購買行動を大きく変え、オンラインでの取引を一般化しました。
楽天のイノベーション
楽天が成し遂げた大きな変革は、中小企業にデジタル市場へのアクセスを提供したことです。これにより、従来のリアル店舗だけでは得られなかった市場規模に到達し、新たな価値を生み出しました。また、楽天市場を基盤に楽天ポイントなどのエコシステムを構築し、消費者と出店者の両方にメリットを提供しました。
しかし、ドラッカーの基準に照らすと、楽天の成功はEコマースという既存の概念をより大きなスケールで展開したものであり、技術や消費者行動に根本的な革新は少なかったという見方もできます。楽天のアプローチは、競争優位性を生み出しましたが、真の新市場や消費行動の変革とは言えないかもしれません。
ソフトバンク:価格破壊と通信インフラ
ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)は、日本の通信業界において価格破壊を起こし、競争を激化させた企業として知られています。特に、iPhoneを日本に初めて導入し、通信市場の勢力図を変えたことが注目されました。
ソフトバンクのイノベーション
ソフトバンクモバイルの真のイノベーションは、新しい価値を提供することよりも、既存の市場において価格競争を加速させた点にあります。iPhoneの導入により、スマートフォン市場の成長を促進し、消費者に新しいモバイル体験を提供しました。しかし、これは技術革新というより、優れたマーケティング戦略と海外製品の導入による消費者行動の変化に近いと言えます。
また、ソフトバンクは、通信インフラの強化や企業買収によって、事業の多角化を進めましたが、これらは既存技術やサービスの拡張であり、新しい市場を作り出したわけではないという側面もあります。
イノベーションの定義から見た楽天とソフトバンクモバイルの限界
ドラッカーの定義に従えば、楽天とソフトバンクモバイルは、イノベーションの一部要素を満たしていますが、既存の市場や技術を強化・拡大するアプローチが主だったと言えます。新しい技術やサービスの提供はもちろん重要ですが、ドラッカーが説いた「既存の資源に新しい価値を与える」という真のイノベーションには、既存の市場の枠組みを超える挑戦が必要です。
楽天やソフトバンクモバイルが成功を収めているのは、既存市場での卓越した戦略によるものであり、ドラッカーが定義するような本質的なイノベーションを遂げたかどうかは議論の余地があります。
まとめ
楽天やソフトバンクモバイルは、各業界で大きな成功を収め、多くの価値を生み出してきました。しかし、ドラッカーの「イノベーション」の定義に照らし合わせると、彼らのアプローチは既存市場の最適化や拡大にとどまっており、本質的なイノベーションの達成には至っていないとも言えます。これからの日本企業に求められるのは、既存の枠組みを超えて、新しい価値を生み出す真のイノベーションを追求する姿勢でしょう。
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