アシックス / メタスピードスカイのレビューです。
4月からこのシューズを履いてインターバル、3000mTT(8:52...!!)テンポラン、ロングラン、あと雨での走行テストと一通り履いてみたのでそろそろレビュー...!
どんなシューズでも、最初の2,3回履いただけではそのシューズの良さを総合的に掴むのは難しいかな、といつも思っている。最近は他の厚底シューズとの比較をすることによって、その良さがクッキリ明確になる、という感じ。
このシューズはその重量も含めてバランスの良い厚底カーボンシューズであると感じるが、メタスピードエッジ(履いたことないけど)と比較するとこちらのほうが鉛直方向(↑の方向)の反発性が高いので、フィジカル要求がこちらのほうが高くなるのではないかと思ってるが、実際どうなんだろう。
予想ではエッジは飞影PBのような感じの1足ではないかと思っている。
【価格 / 重量】
重さ(26.5cm):192g(個体差があります)
軽い。
定価:27,500円
どこもそれぐらいはするけど、これぐらいの価格の厚底カーボンシューズを1度に2,3足も買えないから20,000円ぐらいに落ち着くといいけど...
重さと価格の関係性は以下。
(メタスピードスカイは↓左上の192g)
(出典:今後、ランニング用カーボンシューズの評価項目で「価格」と「重さ」を重視するのがいいだろう。)
メタレーサー なんかは今後値段が下がっていくのだろうけど、アシックスのシューズでは実は自分はメタレーサーやハイパースピードが練習用では結構気に入っている。
理由は自分の場合あまりにも大きく速い動作で強度の高い練習を重ねていくと故障のリスクが高まるので、あえてそこまで速く走れないような1足をチョイスするのもアリだと思っているから(そして、それが本当の自分の実力だと思うようにしている)。
【アッパー】
アシックスは今回、これまでに使用してこなかったであろうリサイクル素材のメッシュアッパーを採用してきた。他社でいうとアディダスのセラーメッシュなんかと似ている(というか)参考にしたのだろうか。
(裏ワザで拡大しました:右になるほど拡大)
複雑な織り方をしているようにも見えるが、撥水性もありながら(水の粒を吸収しないかつ通さない穴の小ささ)通気性の良さそうなのが確認できる。基本的に通気性の良いアッパーはスケスケ度が高いので、裸足なんかではくと足の指とかが丸ごと見える。
アシックスがこのリサイクルポリエステル素材をアッパーに使うことはこれまでになかったと思うのだが(たぶん)、厚底カーボンシューズの大事な部分に軽量化、というテーマがあるので、今トレンドであるモノアッパー / リサイクル素材のアッパーはスタンダードであるといえるだろう。
(アディオスプロのセラーメッシュもリサイクルポリエステル素材)
この素材は従来の肌触りの良い繊維素材に比べて伸縮性が少ないのが特徴で、足馴染みが少し違う。
例えば、エンドルフィンプロのような伸縮性のあるアッパーは従来のアシックスのアッパーに似ているが、メタスピードスカイが今回、アディオスプロやネクスト%とかそっちのほうのアッパーに寄せてきたということは...
こういった通気性、軽量性、撥水性、耐久性の4つに優れたこの素材に変えてきた、ということは後発の旨味でもあるのだが、このスケスケアッパーが今の厚底カーボンシューズのスタンダードであるといえるのだろう。
ということで、これまでのアシックスのシューズとはアッパーの感じが少し違うこともあり、これまでのアシックスのシューズとサイズ感が異なる、という声がある。タイトで小さめに感じる人がいるようだ。
【関連記事】
私はメタスピードスカイのアッパーに関してはフィット感、ホールド感ともに申し分ないと感じたので及第点以上。
(裸足で履いた時に指が見えるスケスケアッパーは通気性が良くて軽量)
【シュータン】
ペラッペラの片側穴あき、ということでこれも軽量性を意識しているのではないだろうか。メタレーサーのシュータンはこれと比べるともっとしっかりとした作りである。
【ミッドソール(軽量性 / 反発性 / クッション性 / 耐久性)】
このシューズを手に取ってみた時、ミッドソールの部分を指で触ってみている時に独特の“音”が鳴る。
これはPEBAとかPebax特有の感じではなくて、PA12またはPA11特有の素材感。今まで20足以上の厚底カーボンシューズを履いてきたからこそ、こういったフォームの微妙な違いが少しだけわかるようになった。
でも、私は無知なのでフォームをどうやって成形するとか化学メーカーが行う製法はほとんど知らない(熱処理で発砲して成形するのであるが)。
で、このFF Blast Turboは「アシックスの軽量ミッドソールフォーム材の中で最も反発性に優れた」というありきたりの抽象的な定番のフレーズが使用されているが、詳細を明らかにしないところになんだかこだわりを感じる。
確かに軽いし、耐久性がZoom Xとかよりもありそうだな、と感じた。
・反発性:フワッと弾むってほどでもないがこのシューズは上手く乗り込めるので走っていて気持ち良い
・軽量性:確かに軽い(FF Blast Turboの密度めちゃ低そう)
・クッション性:沈み込むほどでないが適度にある
・耐久性:それなりにありそう(EVAほどではないが)
(FF Blast Turboを拡大して撮影)
(上がNYLON 12 / PA 12素材で下が多分NYLON 11 / PA 11素材)
誰かが「餅みたいなミッドソール」と言っていた。で、顕微鏡みたいに拡大までして撮影して、こんなマニアックなことまで書かなくてもいいが、アシックスは、厚底カーボンシューズに関しては“後発”ということでフォームにはそれなりに時間をかけてじっくり見極めていったのではないかと思う。
そういったことを考えると、Zoom Xよりも耐久性が高そうであるということはコスパ(パフォーマンスに対してでなく、長く使えるという意味で)がそれなりに高いのではないだろうか。
このシューズのライド感であるが、ロングラン、テンポラン、インターバル、TTとマラソンペースよりも速いどの速度域でも高い反発性を感じた。それでいて安定性もそれなりにあるので、扱いやすい1足である印象。
つまり、アルファフライのようなシューズとは違って汎用性が高いという印象を持った。とりあえずは“アシックス史上最高の反発力”という超ありきたりな表現になるが、逆にいうと2021年の春までこういった高反発(今の時代の)のシューズをアシックスは市販できていなかったのだ。
特にアシックス契約選手は待ちに待った待望の一足であっただろう。
【カーボンプレートの形状】
メタスピードスカイの特徴をおさえる上でみておきたいのはフルレングスのカーボンプレートの形状である。
例えばヴェイパーフライネクスト%のカーボンプレートはスプーン状(というよりかはレンゲ)の形をしている(以下点線の部分がカーボンが入っている位置)。
どこのメーカーの厚底カーボンシューズのカーボンプレートの形状(↑の白い部分)も微妙に異なるとはいえ、スプーン形状のものが多い(アディオスプロはカーボンロッド+ヒールにカーボンプレート)。
対照的にonのクラウドブームとホカのカーボンXはカーボンプレートの湾曲がヒールとフォア部分にしかないのとミッドソールのフォームが違うので、多くの厚底カーボンシューズとまた違った走り心地である。
(出典:RunRepeat)
メタスピードスカイのカーボンプレート↑はヒールからなだらかにくだっていき、フォアで上るという湾曲構造になっており、カーボンプレートの位置が全体的にアウトソールに近い位置にある。これは明らかにネクスト%のカーボンプレートの形状や位置との違いがある。
このようなメタスピードスカイの形状のカーボンプレートを挿入している厚底カーボンシューズは今のところ知らないので、走行感に若干の違いがあるのにもうなずける。
メタスピードスカイの特徴は走行時の高い安定性にある。それはカーボンの形状や位置も関係しているのではないかと感じているが、もう1つのポイントはグリップ性能の高さである。
【アウトソール(グリップ)】
このシューズを何度も何度も履いていくうちに、他の厚底カーボンシューズと決定的に何が違うか、というところを考えた時に、そのグリップ性能の高さが挙がる。
先に答えを書いておくと、高いグリップ性能があるからこそ、↓のようにたくさんの穴を開けて軽量化させることができるのだろう。
また、競技レベルの高い選手はほとんどが足の外側から接地するので、外側には穴が開いていない。対照的に内側は途中でアウトソールが切れていて分離している。
拡大すると、このアシックスグリップはトレイルシューズに使用される素材ということだけあって、確かにグリップ性能が高そうな見た目であるし、小さなホコリが付着して離れさせないぐらいに吸いつきが良い。
以下は路面が濡れたところを走った時についた葉の破片であるが、これがまた簡単に落ちないぐらいに吸いつきが良い。逆にいうと、汚れたときの掃除が大変である。。
これはかなりグリップ性能が高いことの現れだと思う。
グリップ性能が高いことを感じたは以下の練習の時。
・雨でのロードでのテンポ走(通常は滑りやすい場所)
・トラックのコーナーワーク
・ロードの周回コースのコーナー
特に、トラックでのコーナーワークとロードの周回コースでのコーナーでは、いくつかの厚底カーボンシューズをインターバルの1本ごとに履き替えて走ったので、そのグリップ性能の高さが際立っていた。
グリップが良いので確実に地面を捉えられるのと滑りにくいので安定性が高い。グリップが良いのと、カーボンプレートの形状も相まって、安定性が高いのが特徴ではないだろうか。
そのようなことから、短めの距離、3000mTTを走った時に、特にラストの切り替えでしっかりとピッチを高める時に地面を捉えられていたと思う。マラソンはもちろんのこと、短めの距離でもオススメのシューズではないかと思う。
3月下旬にハイパースピードで3000mTTを走った時は9:22だったが、4月上旬にメタスピードスカイで3000mTTを走ったら8:52だった。この1年間は3:05/kmよりも速いペースのインターバル走はしていなかったので、シューズの性能を最も感じたのがこの3000mTTだったように思う。
【各練習で履いた感想】
・雨のテンポ走
ほとんど滑らなかった。途中滑りやすい場所があるが、そこも問題なかった。「すげー」と思った。雨が結構強かったので4kmで走るのをやめた。笑
・ロングラン
マラソンペースで20km弱のミディアムロングラン。ロングランはリズムに乗ったらそこからはスイスイ走れるものであるが、比較的早めに序盤でリズムを作ることができたので、マラソンペースぐらいでの巡航速度では気持ち良い感じがあった。これぐらいのペースでも、ピッチが速くなっているというよりかは、どちらかというとストライドが伸びている感じはあった。
ちなみにこの日は胃腸の調子が悪くなり、ロングランにならなかった...
・3000mTT
去年の4月の3000mTTは9:36だったから、今回はとりあえず8分台が出ればいいかな、と思ってペーサーについていったらラストの1000mでラップが一番速かった(2:58 / 2:59 / 2:54)。
普段、人について走ることがないので(99%が1人での練習)、ペーサー+スーパーシューズを履くと結構タイムを伸ばせるもんだと感じた。だから、3:05/kmよりも速いペースでインターバルをしてなくても8:52で走れたのではないだろうか。
3:00/kmペースでも特に「速い」と感じることなくストライドが伸びていたように思う。自分がピッチ型かストライド型かはわからないが、中間?メタスピードスカイは今のところ、3000mからマラソンまで万能に使えるシューズだと感じた。
・インターバル(というかリカバリー長いので”レペ”みたいなもん)
3000mTTを走った1ヶ月後に行った。
① 10×1000, R8'(努力度同じでシューズ別)@ロード
1. Mile 42K Turbo 3:06
2. 飞影PB 3:04
3. FuelCell RC Elite 3:07
4. Metaspeed Sky 3:03
5. Speed Elite Hyper 3:07
6. 飞电1.0 3:05
7. 飞电2.0 Elite 3:04
8. The Artist 3:07
9. 160x 2.0 3:02
10. 160x Pro 3:01
② 5×1000, R5'(努力度同じでシューズ別)トラック
1. 飞电2.0 Elite 3:07.26
2. 160x 2.0 3:08.26
3. The Artist 3:09.16
4. Metaspeed Sky 3:03.57
5. 160x Pro 3:06.34
色んなシューズを履き比べながら、同じ努力度で走ってみるとそれぞれのシューズの特徴がよくわかる。↑の中では
・飞影PB(乔丹)
・飞电2.0 Elite(李寧)
・160x 2.0(特歩)
・メタスピードスカイ
の4足がバランス(反発性、グリップ、軽量性、ホールド感)の良い厚底カーボンシューズだと感じたし、実際に同じ努力度で走った際の走破タイムも速くなっている。
もちろん、VFネクスト%もバランスの良いシューズだとは思うので、ここで履いていれば同じようなタイムが出ていただろう。そうでなければあれだけ多くのランナーが使用し続けている状況にはならないだろう。
【総合評価】
【合計(100点満点):75点】
パフォーマンス点(70点満点):54点
反発性:8点
軽量性:8点
安定性:8点
グリップ:8点(限りなく9点に近い8点)
疲労軽減:7点
通気性:8点
フィット感:7点
コスパ点(30点満点):21点
汎用性:8点
耐久性:6点
コスパ:7点
皆さんが履いているであろうネクスト%との比較は以下。
【結局ネクスト%とどっちがいいの?】
それは、結局のところ履き比べてみないとわからないことである。
ちなみに、私は今年の3月にネクスト%をプレゼント企画でプレゼントしたので、ナイキのシューズは現在はスニーカーしか持っていない。ということで、ナイキとアシックスの履き比べは実現しなかった。
アルファフライやネクスト%はやはり反発性が高いので、それだけ股関節筋群の伸展動作がタイトになるだろう。
メタスピードスカイも同じように鉛直方向(↑の方向)への反発性が高いので“スーパーシューズ感”はあるが、どちらかというとシューズに走らされているあのトランポリン的な感じは少ない方だと感じる。
私の考えでは、この2足間でパフォーマンスの差が少しついてしまうのかもしれないが、その差は故障をするかしまいか、にも差が出るのではないか、と考えている。
つまり、高いパフォーマンスをするといういうことは、それだけ体に負荷がかかっているということである。厚底カーボンシューズの反発性の高さは過回外 / 過回内(つまり過度の“ねじれ”)を引き起こす原因にもなり、足関節付近の故障も増えてくる。
実際に、ナイキのシューズを履いて五輪代表の座を射止めた女子の鈴木亜由子、男子の中村匠吾、服部勇馬、トラックでは相澤晃、伊藤達彦が相次いで故障していることを考えると、速く走れるということは、時には“諸刃の剣”となってしまうのかもしれない。
私は厚底カーボンシューズを履き始めてから足底の張りを強く感じ始めたりするようになったし、一度もなったことのない坐骨神経痛の兆候があったことがある。逆にマメができることが激減し、シンスプリントもなくなった。
厚底カーボンシューズの多用による、これらの故障箇所の変化、ストレスがかかりやすい場所の傾向については今後も検証を重ねて答えを導き出していきたいと思う。
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