好きなものが見つからないのは、なんでも好きだからかもしれない。

『よし、じゃあ好きなものについてプレゼンする資料を作ってみて』

研修の講師が言った。またこれだ。

『自分の好きなものについてだったら、簡単だよね』

いやいや簡単じゃないんだって…

僕はわりと器用なので、研修の課題とか、初めてやる仕事とかであっても、ちょっとやれば容量をつかんで、なんだかんだ何とかなる。
スポーツもそう。初めてやる競技であっても、ちょっとやれば、その日のうちに中の下くらいは出来るようになる。
ビギナーズラックなのか、たまーに上の中くらいの働きをすることだってある。

でも、お前はだめだ。

難しく考えなくていいから、好きなものをお題にしたらいいよ。

何度この問題が目の前に立ち塞がったか、数え切れないし、思い出したくもない。
そんなことを言う人のことを嫌いになることも多かった。
嫌われる側からしたら、とんだ迷惑な話だとわかってはいる。わかってはいるのだけれども！

だから、お前のことも嫌いだ。そう。履歴書の趣味特技欄。お前のことだ。

さらに、好きなものがないからか、僕は優柔不断でもある。
小さい頃からずっと。

レストランでなかなかメニューを決めないのはもちろんのこと、購買のパンや、自販機のジュース、コンビニのグミに、新しいケータイ、さらには、積まれた漫画の何冊目を買うかとかまで、ひたすらに決めれなかった。

アラサーと言われる年齢になっても、性格はそのまま。
変わったといえば、悩む対象だけだ。
食べログを見て悩み、Amazonレビューを見て悩み、路線案内で安さと時間どちらを優先するかで悩み…
ずっと決められないまま。

悩んで悩んで悩んで結局『ま、時間はあるしな』なんて言って、遠いけど木評価の高いラーメン屋や、遠回りだけど安い路線を使うことが多い。
だから、無駄に何もしない時間だけが多い。

昨日も徒歩20分のラーメン屋に向かいながら、考えた。

『なーんで、決めらんないかな。』

そして、ふと、気づいたことがある。

ところで閑話休題。これは昨日食べたラーメンなのだけれど。

ピーマンって美味しいですよね。

天ぷらにすればサクサクだし、おひたしはたまらないし、青椒肉絲の主役はピーマンだし、肉詰めはほぼ脱法ハーブだ。
そう、ピーマンは美味しいのです。今も昔も。

なのに、子供の嫌いな食べ物で一番有名といえば、ピーマンのはずだ。
あ、今調べたらゴーヤらしい。
ゴーヤも好き。

何が言いたいかというと、子供の頃から嫌いなものがなかった。
にんじんも、ネギも、椎茸も、ゴーヤですら、全部食べられたし、全部美味しいと思っていた。
それによく食べた。炊飯器の最後のご飯を食べるのは僕だったし、出されたら全部食べてしまうから、夕飯の残りが朝出ることも少なかった。
だからまぁ、自分で言うのもなんだけど、母さんは献立を考えるのが実に楽だったと思う。
いい子供だなぁ。

この頃から、好きなものがあった記憶がない。
たまに実家に帰った時には母親から

『今夜何食べたい？食べたいものを作るよ？』

と言われる。その時には決まって、『ほうれん草サラダ』って言うのだけれど、別に好きなわけじゃない。こないだ帰った時も食べたからだ。
嫌いじゃない。美味しいんだ。
でも、好きなものと言われたら困る。グラタンも美味しいし、味噌汁も美味しいし、炊き込みご飯も美味しいし、湯豆腐も美味しい。
でも、好きじゃない気がする。

というか、好きって何なんだろう。

ここまで体感30秒。ここで、気づいた。

好きって、何か一つを選ぶと言うことでしょう？

自分がそう思っていることに気がついた。

僕は映画も見るし、落語も見るし、アニメも見るし、ラジオも聞く。でも、どれか一つをずっとし続けられるかと言ったら、無理。全部やっちゃう。じゃあ一つを選べないよね。だから、趣味じゃない。

自分で言うのもなんだけど、僕は本当に人当たりがいいから、どんな人ともくだらない話ができるし、笑い合える。初対面であっても。でも、ご飯食べるのも飲みに行くのも笑うのも、誰とでもするじゃん。一人じゃないよね。だからみんな、友達じゃない。

伊集院光のラジオを聞いてるけど、1番好きだったら2年くらい聞かない時期ないはずだしね。
神田伯山の講談を聞きに行ったけど、1番好きだったら有名になる前から聞いてるはずだしね。
星野源の歌を聞くけど、1番好きだったらウォーターボーイズの時に気づいてるはずだしね。

ここまでだらだら考えた時にさらに気づいた。

たかが好きごときで気持ち悪いな！！！

最近思うのだけど、人間の価値観が変わるのにいつでも劇的な体験があるわけじゃない。運命の人にそう簡単に出会わないし、頭をぶつけたりもしないし、家族は幸いみんな元気だし、インドにはいかない。

まじで急にくる『あ、俺キモい』の波そうなった瞬間に、価値観がころっと変わる。

ところで閑話休題。これは今日食べたラーメンなのだけれど。

あ、そうそう、今更だけれど、今回のnoteにはお題がある。
普段、きっかけがなきゃ、文章なんて描かないもんだけど、ちょうどタイミングのいいことに昨日は僕の30歳の誕生日なものだから、これからの目標を書こうと思う。
https://twitter.com/chikazukuze/status/1331222274699972610

思った。

結局嫌いな食べ物がなくて、好きな食べ物もないんじゃなくて、食べ物みんな好きなのかもしれない。

人だったらそうはいかないよ。嫌いな人もいる。
嫌いな仕事もあるし、嫌いな映画も、嫌いな服も、本も。

でも、同じくらい。多分、僕の場合はそれ以上に、きっと今まで気づかず好きだった人やものがたくさんあると思う。

気付くのに29年かかったけれども。
昨日30になった。
多分これから、好きだって気付くことがたくさん増えるだろう。

そんなものたちに、人たちに、自信を持って、元気に、『好き』っていう。
それがこれからの目標だと思う。
恥ずかしいから、断言はしないけど。
きっとそうだと思う。

きっとラーメンのことも好きだと思う。

#アド弁当カレンダー に誘ってくれたオナンちゃんも好きだと思う。ありがとう。一回しか会ってないけど。
明日のSAKIさんも知らない人だけど好きになるかもしれないし。
https://twitter.com/sa__topseller

友達に好き好き伝えたら鬱陶しがられたから、多分限度はあると思うけど。

多分、自分で思っているより、もっと色々好きなんだと思う。