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『サマーフィルムにのって』松本壮士 三浦直之

ロロが大好きなのです。

脚本 三浦直之が主催する劇団ロロは、僕らの必死な生活のなかでつい見逃してしまいそうな一瞬に指をさしてくれる。

そんなところを気に入って大切に思っているのですが、今回も見事にやってくれました。

そもそも2018年末に放送された松本壮士×三浦直之×伊藤万理華の初コラボレーション作「ガールはフレンド」が未だに見返すくらい大好き(エンドロールのCHAI「ウィンタイム」の入りが最高)
なので、今作の東京国際映画祭での先行上映も逃すわけにはいかないです。
チケット販売当日は夢の国から必死に電波を飛ばしてガッツポーズしました。

2021年に公開の作品なので、多少ネタバレしてもいいかという気持ちで感想を書きます。

本作の主人公は女子高生3人組。(さながら三浦直之版映像研)
左からブルーハワイ、ハダシ、ビート板という三浦直之節のニックネームに思わず顔が綻んでしまう。

ブルーハワイとビート板を演じた祷キララと河合優実のふたりは見れば見るほどチャーミング。
河合優実なんて、ミューズ弘中綾香の青春時代かくありきというような出立ちが見事にツボをつく。



それにしても、やはり主演 伊藤万理華である。

「映画部どう?」

青春の呪いめいた質問がビート板から繰り出された時、喋り出す前に眼下の筋肉を、ほんの少しだけ、ぴくりと動かす。
それだけで言わんとすることをすべてを伝えてしまう彼女を観て、しばらくノックダウン。

その他だって、名画座でひたすら映画を観るシーンの情感の豊かさなど痺れるシーンを挙げればキリがないが、伊藤万理華は表情だけで、言葉を抜きに、語れることが多すぎる。

演技という憑依を通じて年齢や性別さえ曖昧に溶かしていく伊藤万理華を見ていると、僕らは何にでもなれる気がするな。


そして物語の途中で、はたと気がつく。
サマーフィルムの頭文字はSF。
いつのまにか物語はSFにのっていることに。

映画の息が途絶えた未来からやってきた青年が、若き日の巨匠を目の前に啖呵を切る。

「未来を変えてみせます!」
「どうやって?」
「弛まぬ努力で」

ここが痺れた。

そう。未来を変えるのは望外の奇跡ではなく弛まぬ努力なのだ。
やはり、いつだって三浦直之は僕らの味方である。


強く願って 明日を変えたい ロックンロールイズノットデッド

https://open.spotify.com/album/0ETJil8vr0LrBGRA8oxC0p?si=BzMXy2tgRsW8pRtAe5FbKA

「誠実に」という銘打ったプレイリストにラインナップしているこの曲を聴く度、山口隆のメッセージに目頭が熱くなってしまうのだけれど「自分はまさにこういうことを求めているんだよな」と改めてしみじみする。
僕も、弛まぬ努力で、強く願って、明日を変えたい。
rock'n'roll is not dead.
our future is not yet.

自分でも気付かないくらい、心の奥底で求めていたエンタメに久しぶりに出会った気がします。
次に観られるのは来年かぁ。楽しみだな

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