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がっつりお腹を満たしたい時は #金子半之助 Otemachi One店
大手町近辺で天ぷらを食べるとすれば、選択肢は主に2つある。以前は"天ぷら"そのものを楽しみたい時のお店を紹介したが、今回は天ぷらを通してがっつりお腹を満たしたい時のお店を紹介する。
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この店で一番豪華な天丼は穴子がメインに置かれているようで、海老は大きすぎず、他の具材も過不足なくバランスよく配置されていた。見栄えの良い海老に重きを置きすぎて全体として物足りなくなってしまうよりも好感が持てる。味噌汁を一口飲んで簡単に胃を温め、天丼を自分のそばに引き寄せる。
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「江戸前」の名前に恥じぬラインナップで満たされていた。好きなものを最後に食べたい私は、奥の穴子を目指して丼をかき分ける。まずは中心を陣取るかき揚げを解体。烏賊をメインに構成された淡白なダイス上のかたまりも、タレの染みた派手な衣を纏って空腹に押し寄せる。嫌な油ではないので胃がコーティングされ、次の一口を誘う。一旦海苔で軽くリフレッシュしてから海老を食べることでより甘みを感じ、中盤の山場を迎える。残る穴子と半熟卵を前にして、ししとうで緩急をつける。
適量のご飯を残しつつ穴子と半熟卵を中心に移動させ、他の具材が盛り上げてきた丼の主役に躍り出る演出。すぐに割れてしまいそうな半熟卵を慎重に穴子の上に乗せ、衣に捉えられていた黄身を解放する。この時期の穴子は脂が落ちる分さっぱりしていて、卵の濃厚さを加えても食べ疲れしない。それに加え、転々と散りばめられた柚子の皮がアクセントになって旨い。
基本的に茶色いものは美味しい。ただ、その美味しさが持続せずに飽きてしまうことも多い。それを決めるのは自分の食べる順番だったり、お店側の些細な工夫だったりするのかもしれない。
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天ぷらの油切りにも、先付けとしても食べられる「がりごぼう」は金子半之助を支える名脇役。ごぼうの力強い香りがあるおかげで、ただのがりでは実現しがたい先付け=小料理のような可能性も秘めている。
"天ぷら"そのものを味わいたい時はこちら↓