愛は地球を救うのか知らんけど、ヒップホップは私を救った
自分が自分であることを誇る
このパンチラインが心の奥底にいつもいてくれる。こいつのおかげで沈んだ感情から立ち直れた話をしたい。
いつ頃か忘れたが髪を伸ばし始めた。今や襟足はガッツリ伸び切っていて、ロングの部類といっていいだろう。「いらすとや」で検索してみたらいい感じのイラストがでてきたので、大体これくらいの髪の長さの男なんだなと思っていただきたい。
襟足を刈り上げた短髪をずっと続けていたが、ちょっと長めの髪型をやってみたくなった。周囲を見渡すと似たような髪型ばかりだと気が付き、30歳になったというのに中高生が抱くような「俺ジナルな個性」が欲しくなったのだ。
髪を伸ばしていく過程は面白かった。毎日顔を合わす人は変化に気づきにくいので何も言わない。出張で他事業所に行った時だけ久々に会う仲間から「髪の毛どうした?!」「伸ばしてるのか?」と言われるのだ。「アーティストみたいだな!」とか言われたこともあって悦に入ってしまい、以来伸ばし続けている。
たかが髪型で・・・とは思うが、私なりに「私らしさ」を見つけたつもりでいた。「あの部署のロン毛の男」でいいのだ。セルフプロデュース・セルフブランディングができたぞ、なんて思っていた。
しかし異変が起きたのは、私が伸びた髪をゴムで結び始めてからだった。「いよいよそこまで来たか?!」みたいなことを何人かに言われた。
おそらく「ゴムでまとめるほどの長さまで伸びたのか」というニュアンスで言っていたと思う。実際にはその前々日に美容院に行ったのでむしろ髪は少し短くなっていたのだが。ともかく半分はオシャレ、半分は仕事で鬱陶しいので髪をまとめてみようかなと思っただけだ。
そんなある日、上司から会議室に呼び出されサシの話し合いになった。「いつ言おうかずっと悩んでたんだけど・・・」の言葉から始まった。
特に意味はないが、せっかくなので上司に言われたことを滅多に使わないnoteの機能を使って要点を書きだしてみた。
ついに髪を縛り始めたこのタイミングなら言えると思った
そういう髪型を「社会人としていかがなものか」と思う人も多い
時々タメ口っぽい口調になっているから目上の人には特に注意して
見た目や言葉遣いで君に「損」をしてほしくない
マネージャーたちは「君が「損」をしてしまわないか」心配している
髪型を変えろとは言わないし、君の人柄の魅力もよくわかっている
でも、その見た目・言動で「損」をするリスクは知ってほしい
そして後輩からも見られていることも意識してほしい
これから部署の顔になってほしいから少し立ち振る舞いを考えてみて
期待してマス☆
大体こんな感じ。
苦虫を噛み潰したような表情だったマイ上司。きっともっと「上の方」に1回注意しとけと言われただけだろう。だから上司個人に対して何も思うところはなく、むしろよく言ってくれたと思った。
私には係長をやっている兄がいるが、彼は新入社員から「タトゥー入れたいんですけど大丈夫ですかね?」と相談されたらしい。彼も「いまどきダメだと会社が言うことはないと思うけど、周囲からどう思われるかはよく考えてね」とアドバイスしたらしい。その時の苦悩を聞いているから、中間管理職の難しさは理解しているつもりだ。
ただ、本音をいえば動揺した。
好評かはさておき、みんな受け入れてくれていると思っていたのだ。あだ名感覚で「アーティスト」と呼ばれることもあったし、オシャレも楽しみたいからヘアアレンジくらいのつもりでいたのだが。髪を結んだのがそれほどトリガーになってしまうとは。
話し方云々については自身では気づきにくいし、指摘内容に自分でも納得している。「髪型のついで」で言われた感はあったが、目上の人への言動で失礼に見えるときがあるとの指摘は真摯に受け止めようと思った。
この面談のあと数日グルグル考えていたが、この感情は「自分を否定された気がして落ち込んでいるんだ」と気が付いた。
特に目上の人に対する言動への指摘はショックだった。役員レベルのお偉いさんが相手であっても、議論がポジティブな方向でグルーヴしてきたら少し砕けた口調で話してしまう自覚はあった。それはむしろ良いことだと思っていたし、お相手の役員も不快に感じている様子ではなかったから。良かれと思ってやっていた節があっただけに恥ずかしくもなった。
こういう落ち込み方をしたときは音楽の力に頼る。手始めにAdoの『うっせぇわ』なんかを聞いてみた。当時「コンビニとかで流れまくっていて『うっせぇわ』がうっせぇわ」とか思っていたが、今は違って心に染みるよ。ごめんねAdoさん。
しかし何より絶大な効果を発揮するのはRHYMESTERだ。特に『B-BOYイズム』。
自分が自分であることを誇る
この「自分が自分であることを誇る」は厳密にはKダブシャインの『ラストエンペラー』のフックだが、RHYMESTERをきっかけにこの音楽は「ラップじゃないんだ ヒップホップだ」と目覚めた私からすると、申し訳ないがこれは『B-BOYイズム』のパンチラインだと思っている。ごめんねKダブシャインさん。
そして、こちらは同じくRHYMESTERの楽曲『ガラパゴス』の歌詞である。
入社をしたとき。部署異動をしたとき。
「新しい風を吹かせてほしい」「波風を立たせてこそ若者だ」とよく言われたもんだ。ところがここにきて「そろそろいい年なんだし、社会人らしくあれよ」と言われたのである。
納得できない。あんなふうに言われたからって「今夜にでも髪切ります!」とはならんよ。This is me とかレリゴーじゃないけども、ありのままの私で今後もサラリーマンをやらせてもらう。
新しい風を吹かせるための新種として雇ってくれたんだろ。ならばそんな古い組織のリーダーズに言ってやりたい。
個性や!自由で!ハミ出していく!(パン!パン!)ハミ出していく!それが新しい時代のサラリーマンズだ。
ロン毛に飽きたらそん時はそん時。
でもどんなときも【今の自分を誇り高く思えるか】が私の軸なのだ。そして今、こうしてnoteをコツコツ書くなど新しいことにもチャレンジしているし、仕事も充実している。今の自分を誇らしく思えているから大丈夫。
そんなふうにして乗り切れるのは、譲れない美学を貫くヒップホップを知ったおかげだ。
連休明けも髪をキュッと結んで、いい仕事をしたい。その想いは決して揺るがない。
だがしかし、こちとら北九州の血が流れとる人間なんですよ(苦笑)。
上司からの薫陶を受けたあの時、平和的な会話を心がけました。
それをネタにnoteを書こうとして『B-BOYイズム』など色々引用させていただきました。
でも上司の話を最後まで聞いたあと真っ先に頭をよぎったのはコイツです。