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無職タイム
変な質問かもしれないが、皆さんは無職に向いているだろうか。
義務教育を終え、社会に放り出されると突然始まる労働のマラソン。休暇はあれど、終わるもの。労働が始まってしまうと「あーー無職になりてえーーー」なんて、思う。会社員だった時の夢は「1ヶ月近く余っている有給をまとめて取得すること」だった。
会社員の時は、走って、走って、走りまくって、転んでも走って、そういう感じだった。ある日、「あ、もう立てないかも」と思い、開業の計画は立てていたけれどとりあえず自分の気が済むまで一回休もうと思った。それが1ヶ月で気が済むのか、それとも3年くらいかかるのか。自分のことながら全く想像が出来なかった。
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いざ本当に辞めるとなると有給は1ヶ月半程残っていて、全部取るのはどうなんだと上から言われ一揉めしたが何とかぶんどることが出来た。個人事業主になると休みの日は当然ながら無給で、有給休暇とはとても素晴らしい会社員の特権なので周りになんと言われようが皆ガツガツ活用すべきだと思う。そうでないならフリーで仕事した方が良い。
最終出勤日の帰り道、「これで自由だ!!」と心のウニフラッシュが爆発したあの時の感情は今でも忘れることが出来ない。それから寝て、起きて、仕事に行かなくて良いという幸せを暫く味わった。ここで表題に戻るが私は恐らく無職にあまり向いていない。2週間も経つと「そろそろ開業の準備をしなくては…」とソワソワしはじめた。そして気持ちは焦り、身体は安堵し、結果ずっと張り詰めていた糸が緩んだのか滅多に引かなかった風邪をひいた。風邪を引いてしまえば物理的にもう何も出来ないししなくて良いのだと思えて、そこから少しゆっくり過ごした。有給を使い果たして更に2ヶ月経った頃、「あ、ヤバい。そろそろヤバい。」と無職であることの不安がかなり強くなってきて、店舗物件を探し始めたり、お店のインスタを作ってみたり、バイトを始めたりした。無職が楽しいのって最初の1週間だけだよね〜なんて友人と話したりするが、正直貯金額にもよるかも。もし宝くじが当たったら最大どれくらいの期間無職を心から楽しめるんだろう。転職のタイミングで一年くらい休む人もいるし、もっと休む人もいるし、勿論人それぞれで良いと思う。体調にもよるし。結果自分がフルで休んだのは有給含めて4ヶ月弱だったけど、時々ふと「別に一年くらい休んでもいいよな」と思う。もっと言うと3年くらい休んで世界放浪の旅とかしたい。そんなことはどうでも良いとして、開業準備の約1年間はバイトをしていたとはいえ失業保険受給可能な範囲内で労働時間も少なかったし、会社員時に比べて休日も取りやすく比較的自由がきいた。今になって思うと、その「無職タイム」に出来たことが結構今に生きているのだ。
「無職タイム」に何をしていたかというと、まずは勤労感謝の日に「マジの勤労お疲れ会をやりたい」と(自分が退職したからといって普通に会社員の友達に無茶を言って付き合ってもらい)ダル着で遊ぶ会を催した。そもそもアパレル販売もといサービス業は大体シフト制なので土日休みの友達と昼間から遊ぶということが中々出来ない。遊ぶとしたら自分が商業施設の忙しい土日に休み希望をとるか平日に相手に有給をとってもらうしかないので、そこまでするとなると結構しっかりした予定が立つことになる。ダル着で友達と家で遊ぶなんてことは、贅沢な遊びなのだ。
それから、その時のメンバーと良く会うようになった。服飾系大学の友人なので、そのうち「手芸会しよう!」ということになり、編み物したり、飽きたらお互い持ち寄ったおやつを食べたり歌ったりした。そんなことしているうちにただ美味しいものを食べようというだけの会になってしまったのだが、自分がお店をはじめてからはやはり土日に丸一日空けるのが中々難しくなってしまったので、それも貴重な時間だったなと思う。そして、その手芸会のメンバーの作品をお店で売らせてもらったりしているので公私共に大事な友達となっている。無職タイムの時ほどではないが今でもよく会っていて、もし退職してからすぐにバリバリ仕事をしていたら関係性が違っていたかもしれない。
これはほんの一例で、あの時はよく休み、よく遊び、その時の人間関係が今の私を創っている。藤子・F・不二雄先生が仕事において自分の「好き」を何よりも優先してきたと語っていたが、私の人生もそんな感じになってきた。遊びが仕事に生きてくる。でも大人というのは良くない側面があって、「休んでいて良いんだろうか」とか、「何にも生産的なことをせず遊んでしまった」とか、そういうことに罪悪感を持つ。絵を描く人なんかは特にそうで、きっと最初は楽しくて絵を描いていたはずなのに、段々何か描かなければサボっているような罪悪感に見舞われるのだ。クリエイターというのは、大人の自分と子供の自分を上手く均衡とりながら表面に出る部分をコントロールする能力がある人なのかもしれない。
(多分)高校の現代文の教科書に「謎の空白時代」という随筆文が載っていた。1200年前に中国に渡り真言宗開祖の高僧となった空海が、18歳で大学をドロップアウトしてから31歳で遣唐使船に乗るまでどこで何をしていたか全く分かっていないという話だ。授業で読んだ時は私もまだ10代だったので「ヘ〜」という感じだったが何となく記憶に残っていて、今になって読み返してみると今の私の年齢的にもグッとくる文章だ。まあ空海が修行や勉強をしていたのは間違いないが、空白の7年間で意外と休んだり遊んだりしていて、それが良い方向に生きたってこともあるかもしれない。
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現在2024年の私は開業届を出し一応お店を営んでいるので無職タイムは終わっている。先月、2年に1回くらいのスパンで会う友人がお店に来てくれて、偶々今無職タイムだというので声をかけて店内でPopupをやってもらっている。自分勝手かもしれないが、後から思い返した時にあの時間が良かったと思ってもらえたら嬉しいと思う。勿論お客様にとっても一期一会の良い機会なので、是非お立ち寄り下さると大変嬉しいです(宣伝)。
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