野生動物を保護したいなら、植林や寄付より食事の肉を減らしましょう。ビーガンが環境に良い理由ついて分かりやすく説明します。
畜産が提供するカロリーは全食料の18%ですが、畜産の土地利用は全食料の83%です。我々が肉を食べなければ手つかずの自然がたくさんあり、すでに絶滅してしまった多くの生物が地上を闊歩していたことでしょう。
牛一頭が一日に排出するメタンの量は160~320L(風呂桶1杯分)と言われています。全温室効果ガスの5%が畜産による反芻動物のげっぷやおならに由来していると推定されています。
肉食の問題点
現在、世界中で肉を食べない人(ビーガン、ベジタリアン)が増えております。肉を食べることが問題視されている理由は上げるとキリがないのですが、大きく分けて①倫理上の問題、②地球環境への悪影響の問題があります。
多くのビーガン、ベジタリアンが①倫理上の問題、すなわち畜産や屠殺は暴力と搾取と見なすため、肉食を止めています。また、地球上では飢餓に苦しむ人がたくさんいるのに、多量の穀物やマメを動物に与えて肥やしてそれを我々が食べること、屠殺する人の労働条件等、肉食には多くの倫理上の問題を抱えています。
しかし、本ブログは環境問題がテーマなのでここでは②の地球環境への悪影響について書きます。
②地球環境への悪影響は大きく分けて②ー1野生動物への悪影響、②ー2地球温暖化への悪影響の二つがあります。肉食の問題をまとめると
①倫理上の問題
②地球環境への悪影響
-1.野生動物への悪影響
-2.地球温暖化への悪影響
なお、筆者は環境問題に気づいて行動してから肉を牛肉は9割以上、肉全体は2/3くらい減らしましたが、家族の嗜好もあり完全な菜食主義者にはなれていません。偉そうに肉食批判してすみません。
0.畜産による環境問題の元凶、飼料要求率
飼料要求率とは畜産物を1kg成長させるのに必要な飼料の量です。牛6、豚4、鳥2程度と言われています。つまり、肉を得るのに大量の飼料(穀物やマメ)を消費します。我々が肉1kg食べようとすると、穀物やマメがその数倍必要になるということです。しかし、これはあくまで1kg成長させるのに必要な重量です。食料として考えた場合には、これに加えて牛は食べられない廃棄部分が多いです。可食部は、牛40%、豚50%、鳥60%と言われております。我々の農業生産が無尽蔵で、地球に豊かな土地で溢れているなら問題ないのですが、後述の通りそんなことはありません。これだけの農作物を必要とする畜産は地球環境に大きな負荷をかけています。
1.野生動物への悪影響
人間の土地利用のメイン
我々人間が生まれる前、大地は豊かな自然に覆われていました。森林、干潟、河川、草原な多様な生物が繁栄している場所がたくさんありました。しかし、人間は主に食料生産のため、森林や草原を開墾して、干潟を埋め、河川の形を変えてきました。非常に多くの野生動物が人間のため住処を失い、土地を追われ、死に絶えました。土地をたくさん使う産業は野生生物の絶滅に貢献してると言えます。
畜産が人間に提供するカロリーは全食料生産の18%です。しかし、畜産が使用している土地は全食料生産の83%に登ります。1)畜産自体に土地が必要であることと前述の飼料要求率で触れたとおり、動物の飼育に多くの食料が必要であるためです。
肉の需要増は森林破壊と生息地破壊の主な推進力になっています。我々が人間が肉を食べなければ今も手つかずの原始の自然が地球上にたくさんあり、すでに絶滅してしまった多くの生物が地上を闊歩していたことでしょう。
水の浪費と排水による生態系の破壊
日本の平均降水量は世界の平均降水量の2倍ある水の豊かな国です。このため、あまり感じづらいのですが降水量は土地によって大きく異なり世界では飲み水にも事欠く土地もあります。また、地下水や湖水のくみ上げによる持続不可能な水使用をしている地域もあります。
川の水が足りなくなると川の生物が減少して、場合によっては絶滅します。また、排水の状態次第では下流や海の生態系が大きな影響を受けます。
我々が利用している食品はたくさんありますが、それぞれ生産するのに必要な水の量が異なります。米は水田で育てるので麦の1.5倍程度水が必要とされます。では肉はどうでしょうか?牛肉を生産するのに必要な水の量は(飼料生産に含まれる水も含むので)、同量の米を生産するのに必要な水の量の約10倍です。さらに多量の水使用は、必ず多量の排水を伴います。畜産による排泄物を含む排水は河川の富栄養化の原因となり、水の生態系に大きな負の影響を与えています。前述のとおり畜産が人間に提供するカロリーは全食料生産の18%です。しかし、畜産の水質汚染は全食料生産の57%に登ります。1)
※水問題については以下の記事もあります。
水資源と環境問題① SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」を解説します
水資源と環境問題② 水不足と排水による環境影響について
その他の問題
その他にも問題はたくさんあります。多量の大気汚染物質の排出、多量の抗生物質の利用等ですがきりがないのでここで終わりにします。
2.畜産の地球温暖化への悪影響
反芻動物のげっぷとおならの問題
鳥と豚は雑食ですが、牛は草食動物です。つまり、鳥、豚は芋や米などの穀物や虫などの肉を食べるように身体が設計されています。しかし、牛、羊、ヤギなどは草を食べるように体が設計されています。草食動物は食物繊維を分解して栄養とするために反芻という特殊な消化をします。反芻とは一度咀嚼して飲み込んだものを、もう一度口まで戻して再度咀嚼する消化です。草の食物繊維を咀嚼で再度物理的に破壊して、唾液と混ぜて胃で消化します。この時、食物繊維は低分子に分解されますが、メタン等の水に溶解しないものはげっぷやおならとして利用されずに排出されます。
牛一頭が一日に排出するメタンの量は160~320L(風呂桶1杯分)と言われています。メタンは二酸化炭素の28倍の温暖化効果があると言われており、全温室効果ガスの5%が畜産による反芻動物のげっぷやおならに由来していると推定されています。2)
また、温暖化は生態系に多くの影響を及ぼして、野生生物絶滅の原因となっています。
肉を減らすアイデア
環境破壊や野生動物の絶滅の原因となることを知ってしまうと肉を食べるのに罪悪感が生まれます。しかし、肉を突然辞めるのは難しいですよね。家族がいるなら猶更です。でも、量を半分に減らす程度でしたらチャレンジすれば家族の食事の満足度を下げずにできるようになります。肉を減らすと環境に優しいだけでなく、とても食費が減るのでちょっとためしてみませんか!
牛肉を避ける
牛肉は飼料要求率の観点からも、可食部の観点からも環境負荷が多いです。また、鳥や豚はメタンを排出しませんが、牛はメタンを排出します。牛肉を避けて豚肉や鶏肉にするだけでも地球環境への負荷は下がります。また、牛肉を買わなくなるとスーパーでの買い物が家計にとっても優しくなります。
回数を減らす
ミートレスマンデーという取組みがあります。月曜日は1日中肉を食べないという取組です。してみると、肉なしでも生きていけること、野菜には野菜の満足感があること等が分かります。マンデーに限らず、肉なしの食事を出す回数を増やしてみましょう。料理や食材のレパートリーが広がりますよ!
量を減らす
からあげ、とんかつ、ステーキなどの肉メインの食事では量を減らしてみましょう。足りないかなという程度しか作らないと、ありがたみが増しますし、腹八分目でフードロスも削減できます。
すき焼きを肉豆腐に変える、ハンバーグに豆腐を混ぜる、とんかつを豚汁に変える等をすれば肉の消費量を減らすことができます。
まとめ
肉を食べることには大きく分けて①倫理上の問題、②ー1野生動物への悪影響、②ー2地球温暖化への悪影響の問題があります。
②ー1野生動物への悪影響の理由としては土地利用、水利用が多いことが挙げられます。②ー2地球温暖化としては牛によるメタンの排出が挙げられます。メタンは二酸化炭素の28倍温暖化を促進するので全人類の温室効果ガスの5%が反芻動物由来と推定されています。
対策としては肉を減らすことがあります。いきなりビーガンになる必要はありません。少し減らしてみませんか。家計にも優しいですよ!
1) ダミアン・キャリントン、「肉と乳製品を避けることは、地球への影響を減らすための「単一の最大の方法」」、 The Guardian、2018年5月31日
2)https://wired.jp/2019/01/09/strange-war-against-cow-farts/
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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