ラブソングの魔法
今から、11年前の話。
僕は思い切って好きな人へ気持ちを伝えた。
ただ、『好きになった』ということを伝えた。
だから、どうして欲しいとか、何も考えていなかった。
ただ伝えたいという想いに正直に。
その好きな人とその後一緒になり、息子、娘が生まれた。
家族になった。
丁度、今の時期だった。車のカーラジオからこの今日が流れてきた。
杉山清貴さんの『最後のHoly Night』
1980年代に流行った、クリスマスソング。
この曲が流行ったころは僕はまだ、小学か中学生。
特に歌詞の意味は深く考えていなかったけど『本当に好きな人と最後のイヴは過ごしたいと言ったね』というフレーズは頭に残っていた。
ラジオから流れた瞬間、『懐かし〜』『もうすぐクリスマスか〜』と思った。
80年代位から世の中はバブル経済。男女の恋愛も派手になり、クリスマスは恋人たちの祭典というイメージになった。
当時、子供だった僕もテレビドラマでこのクリスマスをテーマに描かれるストーリーやラブソングにたくさん接してきた。
そして、11年前。なぜ、この曲だったのか?
は全くわからない。
たまたま流れてきた懐かしのクリスマスソングに背中を押され、僕は彼女に告白をした。
どうしてもイヴまでに伝えなきゃ、と思った。これはただの直感。
この歌のようにイヴに一緒にいたいとかではなくて、イヴまでに伝えないと、と思った。
彼女とは仕事の同僚。同じ職場で働いていた。
休みの日、彼女に相談がある、と持ちかけ、二人で会った。
突然の告白に彼女は戸惑っていたけど、分かったと取り敢えず受け取ってくれた。
僕はその告白が上手くいくのか、いかないのか、それはどうでも良かった。
自分の身勝手だったかもしれないけど、『伝える』ということだけは絶対したいと思った。
伝えるか伝えないかは、僕に100%の選択権がある。
これは僕の問題。
それから先は彼女側にも選択権が出るのだけど、そこまで考えなかった。
僕が伝えられるか、伝えられないか。
そこが重要だった。
もし、上手く行かなかったとしても、僕は後悔はしなかったと思う。
自分の気持ちに正直に、自分の好きを伝える。
ただ、それだけ。それだけでいい。
人を好きになれたことだけで、もう最高、幸せ。
それを相手に伝えることが出来たら、もうそれがゴールと言ってもいいかもしれない。
そのゴールが、本当にゴールとなるのか、もしくはスタートになるのか、それはゴールしてみないとわからない。
でも、僕はきちんとゴールまでは走った。そのことを褒めてあげたい。
そのゴールがスタートとなって、翌年から付き合うことになった。
そして僕の妻となった。
思えば無謀な無謀な、なんの戦略もない、僕の恋心だった。
10年以上たった今でも、あの日のことは忘れない。
あの感覚は忘れられない。
ラブソングが僕の背中を押して、ラブソングで世界が満たされた。
何だか世界が輝いて見えた。
今年もこの季節がやってきた。
クリスマスソング、ラブソングが街を飾るこの時期。
やっぱり、僕はこの時期が大好きだ。
この時期はラブソングの魔法が降り注ぐ。
だから正直な気落ちを伝えるだけでいい。
ただそれだけで。