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視察レポート〈ぎふメディアコスモス〉

こんにちは、すさきのすづくり編集部です。
須崎市の新しい図書館等複合施設をつくるために、このプロジェクトでは全国の先進事例に学んで須崎流のあり方を模索しています。

2024年4月17日(水)、岐阜市へと視察調査へ行きました。
岐阜駅に隣接する岐阜市立図書館分館を出発点に、「ぎふまちライブラリー」参加店を回って「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を訪れました。

写真:岐阜駅から岐阜城周辺の地図を指差している手
岐阜駅から北へ、ぎふメディアコスモスを目指して街を歩きました

岐阜市立図書館分館+ファッションライブラリー

岐阜駅に隣接した施設の地下一階に、岐阜市立図書館の分館があります。午前9時から夜21時まで開館していて、学校帰りや仕事帰りの人、岐阜から名古屋方面への通学・通勤で駅を利用する人にも便利です。

分館といっても館内は広く、POPや企画コーナーで新しい本との出会いが見つかるようになっていました。

写真:図書館の本棚。棚の側面や中に本が面陳されています。

この分館には、「ファッションのまち・岐阜」の文化を支援するファッションライブラリーが併設されています。

国内外のファッション雑誌や専門誌がずらりと並び、館内のテレビではファッションチャンネルニュースなどを放映しています。手芸の入門書なども揃い、ファッションやアパレル関係者に限らず誰でも利用できます。

写真:図書館内のテレビでファッションショーの映像が流れています

市内の学校や地域の市民活動の発表の場にもなっており、訪問時には東北コットンプロジェクトや絞り染めの展示が行われていました。

写真:藍色の絞り染め作品

ぎふまちライブラリー

岐阜駅から柳ヶ瀬商店街を抜けて、「ぎふまちライブラリー」に参加している3つの店舗を訪れました。

「まちライブラリー」とは
お寺やカフェなど、まちかどに本棚を置いてみんなで共有する小さな図書館です。金華地区の伊奈波界隈で「ぎふまちライブラリー」を展開しています。まちのお店やお寺など店先の本棚を見ることで、店主たちの人柄なども見えてくるかも? たくさんの本がある大きな図書館だけでなく、たまにはどこかの誰かの好きなものだけの図書館を見に、「ぎふまちライブラリー」へ行ってみませんか。

ぎふまちライブラリー

「ぎふまちライブラリー」では、ピラミッド型の本棚にそれぞれのオーナーがセレクトした本が並んでいました。

小さくても印象的なこの本棚は、まちの人が自発的にメディアコスモスの建築メンバーに発注したそうです。これが繰り返しまちの中に出現することで、「まちライブラリー」コンセプトが伝わる仕掛けになっていました。

写真:たくさんの紅茶のパッケージが並んだ店内に三角形の小さな本棚が置いてあります
annon tea house(紅茶専門店)
写真:お店のカウンター前に置かれた木製の三角形の本棚
かし是(パン屋)
写真:ガラス張りの店内に置かれた三角形の本棚
AND LADY(洋菓子店)

みんなの森 ぎふメディアコスモス

ぎふメディアコスモスは、市立中央図書館、市民活動交流センター、多文化交流プラザ、展示ギャラリー等からなる複合文化施設です。

ひろびろとした外構空間

ぎふメディアコスモスの向かいには岐阜市役所の本庁舎があり、これらを囲むようにひろびろとした外構空間がデザインされています。

写真:みどりの木々が木陰をつくる小道にベンチがあり、休んでいる人がいます
せせらぎの並木

遊歩道のベンチで休む人、キッチンカーの出店を楽しむ人、カフェのオープンテラスで飲食する人、庁舎前の広場で休憩時間を過ごす人など、多様な過ごし方が共存できます。

写真:建物を囲むようにベンチが配置されています
庁舎前のベンチ
写真:なだらかな曲線を描く屋根の建物。入り口前にはキッチンカーが出店しています。
エントランスの隣にはカフェが入っています

まちライブラリー@メディコス

ぎふメディアコスモスの1階にも、まちライブラリーがありました。ここでは、「誰かに読んでほしい本」をみんなが持ち寄って本棚をつくっています。それぞれの本には、本のオーナーからのメッセージカードが付いています。貸出ノートに本のタイトルと日付を書けば、誰でも本を借りられます。

写真:六角形の本棚

ノートやコメントカードを介して生まれる、利用者同士のゆるやかなコミュニケーションが心地よく感じられました。

写真:ノートをめくる手元
毎日、本の貸し出しがあります

シビックプライドプレイス

館内には岐阜の魅力を集めた「シビックプライドプレイス」があり、まちの歴史やディープな街歩き情報に触れることができます。

写真
長良川を模したカウンターに、タブレットやパンフレットが並んでいます
写真:街の見どころが細かく書き込まれたイラストマップ
地元のイラストレーターを起用した街歩きマップ

「岐阜な人」のコーナーでは、岐阜にゆかりのある偉人・文化人と並んで、地域で活躍する人々を紹介するしおり型のカードが配布されていました。地域のホットでユニークな活動をしている人「珍ちんな人」インタビューは、ウェブサイトでも読むことができます。

写真:並んだしおりを見る人たち
写真:ドーム状の天井

「子どもの声は未来の声」子どもたちとの接点づくり

ぎふメディアコスモスの2階にある岐阜市立中央図書館は、仕切りのない大きなワンフロアの図書館です。

ぎふメディアコスモスの初代プロデューサーを務めた吉成信夫さんは、「子どもの声は未来の声」と位置付け、図書館に集うさまざまな世代の人が、お互いの過ごし方を許容する場にすることを求めました。

私たちが大切にしたいこと「子どもの声は未来の声」

私たちの図書館では、本を通じて子どもたちの豊かな未来へとつながる道を応援したいと考えています。
就学前のお子さまから、小中学、高校に至るまで、子どもたちの育ちを末永く見守る場所でありたいと思うのです。
だから、私たちは館内で小さなお子さまが少しざわざわしていたとしても、微笑ましく親御さんたちといっしょに見守ります。 来館されたみなさまも、どうぞそのような考え方をもった図書館だとご理解いただければありがたいです。
そして、小さなお子さまのお父さま、お母さまにもお願いです。  ここは公共の場所です。遊び場、運動場ではありませんので、公共の場所でのマナーをお子さまに教えていただく場としてもご活用いただければ幸いです。
みんなでお互い様の気持ちを持ち寄る場所にしていきましょう。
岐阜市立中央図書館「図書館の理念」より

吉成さんはこの文言を刻んだ金属プレートを作成して、担当者が変わっても図書館が大切にし続けたい指針として掲げました。 

また、館内では子どもたちや若い世代と交流するさまざまな接点がつくられていました。「きらら」と「にゃん吉」と名付けられた犬と猫の形のブックカートや、本を読むとレベルアップしていく「本のお宝帳」、YA(ヤングアダルト)交流掲示板での中高生と司書のコミュニケーションなどなど……。

写真:おおきな猫型のカートを囲む人たち
ねこ型のブックカート「にゃん吉」
写真:読書の記録をする手帳と、レベルアップの道を描いたシート
子どもたちからは館長さんにたくさんのお手紙が届きます
写真:掲示板の投稿の一部
YA交流掲示板では、読書だけでなく進路や恋愛相談も
写真:ピンク色の本の形の紙に好きな本を書いて、木に花を咲かせる展示
写真:靴を脱いでこどもが遊べるコーナー
写真:ヤングアダルト専用席。利用する人は席に旗を立てます。
YA専用席

こうした取り組みが功を奏し、40歳以下の若い世代の利用者が旧館時代の29.7%から47.4%まで伸びたそうです。

市民の「やってみたい」が呼応し合う場

ぎふメディアコスモスでは、「みんなの図書館 おとなの夜学」をはじめとする市民参加の企画プログラムも数多く行なっています。

「まちライブラリアン養成講座」では、次のまちライブラリースポットを探すフィールドワークや、自分の追求したいテーマで選書から飾り付けまでを行う「じぶん本棚」を作るワークショップを開催しています。

写真:「カラスってすごい!」というタイトルの小さな本棚。カラスや野鳥にまつわる本が並んでいます。
段ボールを本棚に見立てた「じぶん本棚」には、それぞれの世界が詰まっています

みんなのlibrary ~おいてみま書架~のコーナーでは、おすすめ本を自由に紹介することができます。紹介された本は誰でも借りることができ、本を通じた自己表現や利用者同士のコミュニケーションが生まれていました。

写真:みんなのlibraryの投函ポストと、展示例

ぎふメディアコスモスの立ち上げから9年間、施設のプロデュースと図書館長を務めた吉成さんには、退任前に貴重なお話をたくさん伺うことができました。現図書館長の長尾勝広さんをはじめ、ご対応くださったメディアコスモスの皆さん、ありがとうございました。

写真:天蓋のようなドームの下のソファで、吉成さんを囲む人たち