第3回市民対話を開催しました
こんにちは、すさきのすづくり編集部です。
2024年11月21日木曜日、須崎市の図書館等複合施設の運営を考える第3回市民対話を開催しました。今回のテーマは「こども・若者の声をきこう」。須崎総合高校生を含む11名のみなさんにご参加いただきました。
酒井さんと考える「地域にこども・若者の居場所、図書館があること」の意味
第3回市民対話では、ゲストに「育つ会とおわ」の酒井紀子さんをお迎えしました。酒井さんたちが運営する四万十町十川の「旧小鳩保育所」は、利用者の80〜90%がこども・若者とその親世代です。人口約2,300人、超高齢化が進む過疎地域に、こども・若者の居場所ができた経緯をお話しいただきました。
この先ここで育つこどもたちはどうなるんだろう?
酒井さんが結婚を機に十和へ引っ越してきた当時、図書館や遊具、東屋のある公園など、とくに子ども連れの人が集える場所がありませんでした。小さな図書コーナーはあっても、置いてある本は古いものが多く、交通アクセスも悪く、よく活用されているようには見えなかったそうです。この状況に、高知市出身の酒井さんはびっくり。高知市にいれば身近に手に入る情報や居場所がなく、「これからここで育つこどもたちはどうなるんだろう?」と不安を感じました。
地域に図書館がないことによる情報格差の問題は、1人目のお子さんが生まれたことでより深刻に迫ってきました。今のようにインターネットも普及していないなか、初めての育児をするにあたり、知りたいと欲することが知れない状況に焦りました。ペット関連のお仕事をしていた経験から、生き物はその生態を知らないと育てられないということ、知識不足の危険を痛感していた酒井さん。育児の合間を縫って周囲に相談をし、本には知識を求めました。
1人目の育児の経験から、酒井さんは子育てサークル「さんまの会」を立ち上げ、この活動を10年ほど続けました。「さんま」には、子育てには3つの「間」──時間、空間、仲間が欠かせない、という思いが込められています。
必要な場所は自分たちでつくる
酒井さんに3人目のお子さんが産まれた頃、四万十町に図書館を含む文化的施設をつくる計画が立ち上がります。酒井さんは検討委員会の公募に応募し、検討委員となりました。検討委員会には託児もあり、教育長や次長が赤ちゃんを見ていてくれたこともあったそうです。
文化的施設の整備検討と並行して、図書館とはどんなものかを地域の人に知ってもらう取り組みも始めました。「育つ会とおわ」という団体を仲間と立ち上げ、まずは地域の情報や県内外の図書館を紹介する「とおわと育つ会通信」の発行からスタートしました。
そして、2022年5月に旧小鳩保育所がオープンします。図書室では町立図書館の本を毎月300冊入れ替えており、約1500冊以上の寄付本とともに、ボランティアスタッフが貸出のお手伝いを行っています。本の貸出には、カリコレという簡単な操作で貸出を行えるサービスを活用しています。月1回は「夜の旧小鳩」を行うほか、さまざまなイベントも開催しています。旧小鳩保育所の様子は前回の記事でも紹介しています。
オープンから2年半で地域の人口を上回る約3,800人の利用者があり、最近では中学生と赤ちゃんの利用が増えているそうです。スタッフがスマホやPCの使い方を教えたり、美大卒の町民やボクシング東アジアチャンピオンの町民と一緒に部活動を行ったり、多世代の人々が主体的に集うなかで自己効力感を得られる場になっているというお話が印象的でした。
須崎総合高校生の声をきこう
今回の市民対話では、事前に須崎総合高校生に向けて図書館等複合施設の説明とアンケートを実施しました。対象生徒数362名のうち回答数は271、回答率は驚きの74.8%! 高校生の期待や関心が大きいことがうかがえました。
また、56.8%の生徒が現図書館を年に1回以上利用しており、予想以上に図書館が利用されていることもわかりました。
複合施設に期待すること・やりたいことへの回答では、「勉強+スペース」というキーワードが最も多くみられました。これについて、アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)代表の岡本真さんはこう分析します。
「こどもたちにとって“勉強”というのは実は方便で、端的に言えば自分たちの居場所が欲しいということだと思います。図書館で勉強しながら、友達と話をしたり恋バナしたりする時間こそ、その時にしかできない一番の勉強です。」
列車を待つ場所が欲しい
続いて、参加者の高校生にも意見を聞きました。須崎市外から通学している生徒からは、列車を待つ場所が欲しいという声が挙がりました。列車の本数が少ないため、現在は学校で時間をつぶしているそうです。
複合施設は須崎総合高校から徒歩30分近くの場所にできる予定です。学校から図書館への移動をどうするか、往復バスを出す? シェアサイクル自転車を置く?など、参加者同士でアイデアを出し合いました。車で移動できる大人だけでは気づかなかった視点です。
大きな広場の使い方についても、高校生に尋ねてみました。「芝生に寝転んでみたい」「虫が苦手だから草がたくさん生えているのは嫌」「常緑のヤマモモを植えて大きな木陰をつくっては?」「その日の気分によって芝生もコンクリートも選べると良い」など、さまざまな意見が交わされました。
声を上げる大切さ
最後に、酒井さんから参加者の高校生や若者に向けてメッセージが送られました。「どんなに素晴らしいものでも、ときに大きな声や反対意見に潰されてしまうことが世の中にはあります。今は若者の人口が少ないからこそ、自分たちに本当に必要なもの、役に立っているものは『これは良い』と表明することが大切です。遠慮せず声を大にして言って良いんだよと伝えたいです。」
初めてのゲストを迎えての市民対話は、少人数ならではの意見交換がすすみました。ご参加いただいたみなさま、アンケートにご協力いただいた須崎総合高校のみなさま、そして酒井さん、ありがとうございました。
次回の市民対話は、2025年2月中旬頃に再びこども・若者中心の会を予定しています。大人に混じって参加するのはきっと勇気がいると思いますが、わたしたちはこども・若者のみなさんを心から歓迎します。今回参加できなかった方も、お気軽にご参加ください。