IoTわな作動通知システムの開発2〜通信モジュール編〜
友人から依頼があり、イノシシやシカなどの狩猟用のわなに取り付けるIoTわな作動通知システム(以下、IoTわなシステム)を開発しています。「IoTわな作動通知システムの開発」シリーズでは、開発過程をまとめます。今回は通信モジュール編です。開発に至った背景や目的については、第1回目の下記記事をご参照ください。
■ LTE-M通信を選択した理由
通信の選び方を、IoT基礎シリーズの#04にまとめています。この記事をお読みいただいた前提で、IoTわなシステムの場合、どの通信がよいかを考えます。結論としては、LTE-M通信を選択しました。
◎ デバイス子機→デバイス親機→クラウドではなく、デバイス→クラウド
通信方式として、大きく2つの方式があります。
1つ目は、デバイスからクラウドに直接通信する方式です。
2つ目は、デバイス子機からデバイス親機に通信し、その後デバイス親機からクラウドに通信する方式です。
今回のIoTわなシステムでは、どちらの方式が最適でしょうか?
2つ目の方式の場合、1つの山に数多くのわなを設置する場合はコストメリットがあったり、デバイス子機が圏外であっても、デバイス親機が圏内であればクラウドに通信できるメリットがあります。しかし、デバイス子機からデバイス親機の通信強度を考慮する必要があり、この点が不確実です。
今回は、シンプルさを重視し、1つ目の方式を採用しました。また、デバイス設置場所が圏外の場合を考慮し、NTTドコモ、KDDI、SoftBankという複数の選択肢を用意し、これらがすべて圏外の場合は諦める、という方針にします。諦めも肝心です。
◎ 山間部の通信は、SigfoxよりLTE-M
デバイスからクラウドに通信する方式かつ、電池駆動を実現したい場合、選択肢となる主な通信はLTE-MとSigfoxです。
Sigfoxの方がより消費電力が小さいものの、山間部や過疎地の通信に弱いという弱点があります。IoTわなシステムは山間部に設置されるため、LTE-Mが有用と判断しました。
■ LTE-Mに対応した通信モジュールの選択肢
2024/10現在、LTE-M通信に対応した通信モジュールのうち、自作IoTに適したモジュールにはどのような選択肢があるでしょうか?結論としては、KDDI版はSORACOM LTE-M Button Plus、NTTドコモ版はWio BG770Aとすることにしました。
◎ SORACOM LTE-M Button Plus
KDDIのLTE-M通信に対応した、IoTデバイスです。マイコン書き込みはできないものの、接点信号を通信する用途であれば、最もシンプルです。
◎ Wio BG770A
記事執筆現在、この通信モジュール(開発ボード)は、まだ販売されていませんが、私自身非常に注目しているLTE-M対応の通信モジュール(開発ボード)です。マイコンが一体となっており、マイコン書き込みによって、現場ニーズに応じた実装が可能です。NTTドコモのLTE-M通信であれば、SORACOM IoT SIM (planX3)や特定地域向け IoT SIM (plan-D)、KDDIのLTE-M通信であれば特定地域向け IoT SIM (plan-KM1)を選ぶと良さそうです(現物確認未)。通信キャリアを選択できることが、大きなメリットです。2024年11月頃販売でしょうか???販売され次第試します。
◎ 【販売停止】Wio LTE M1/NB1(BG96)
Wioシリーズには、LTE-M通信に対応したWio LTE M1/NB1(BG96)という商品もありました。これを別プロジェクトで使っているのですが、2021年ごろ?販売停止になり、入手できません。
◎ 【販売停止】LTE-M Shield for Arduino
Arduinoマイコンに重ねることができるLTE-M Shield for Arduinoという商品もありました。これも別プロジェクトで使っているのですが、2024年夏頃?に販売停止になり、入手できません。辛い。。Wio BG770Aの販売が待たれます。
◎ 【日本で販売停止】グローバル版 Soracom LTE-M Button
上述したSORACOM LTE-M Button Plusは、日本版のボタンですが、グローバル版のボタンもありました。これはNTTドコモとSoftBankのLTE-M回線に対応しているため、NTTドコモ版のIoTわなシステムは、これを用いて作ることを構想していました。しかし、2024/10/2に、技適の関係で日本では使えないとの公式アナウンスがありました。選択肢が絶たれました。
■ 開発要件から考える通信モジュール
1つ前の記事で述べた通り、開発要件のうち通信モジュールに関連するものは、
【通信】現場によってはKDDIの電波状況が悪いため、NTTドコモを選択できるようにする
【マイコン】わな作動通知を確実に届けるため、通信エラーになる場合も考慮し、一定間隔ごとに通知する
【マイコン】電池切れやデバイストラブルを検知するため、バッテリー残量計測や死活監視を行う
でした。これらを考慮し簡単に表にまとめました。
総合的にWio BG770Aが良さそうなのですが、まだ販売されていないことから、2024年10月現在では、SORACOM LTE-M Button Plusを用いた開発を進めることとします。
■ まとめと今後の課題
通信方式としてはLTE-Mを採用し、通信モジュールにはSORACOM LTE-M Button Plusを使用して開発を進めることに決定しました。また、Wio BG770Aが販売され次第、Wio BG770Aによる開発も進めることとしました。
次の記事以降、マイコン、センサー、構造、クラウド、価格を順番に整理していきますが、次の記事では、SORACOM LTE-M Button Plusにマイコン機能を追加する方法についてまとめます。
■ 参考
・IoTわな作動通信システムの開発シリーズの第1回の記事です。