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自作IoTシステムの構築 基礎編8:「LTE-M対応IoT SIM」をどう選ぶか?
『自作IoTシステムの構築 基礎編』では、私自身の経験をもとに、IoTデバイスを自作するために必要な知識の全体像と、各要素の選択肢や選び方を整理して解説しています。
前回LTE-M対応通信モジュールの選び方を解説した続きとして、本記事ではLTE-M対応のIoT SIM選定に焦点を当てます。
IoT SIMの選び方は案外難しく、IoT SIMの商品紹介ページにLTEと書かれているものの、LTE-Mと書かれていないため対応しているのかがわからない、何を基準に選べばいいのかわからない、通信モジュールとSIMの組み合わせで注意点はないかなど、色々と考えることがありました。これまでの経験を基に、評価基準やIoT SIMの比較結果をまとめます。長文になりましたが、IoT SIM選びの参考になれば嬉しいです。
■ IoT SIM選びの評価基準は何か?
何を評価基準として比較検討すればいいのかを整理します。
◎ 日本だけかグローバルでも使うか?
IoT SIMには、「日本向けSIM」と「(日本を含む)グローバル向けSIM」の2種類があります。日本以外の国で使う場合は、グローバル向けSIM一択です。一方、日本で使う場合は、日本向けSIMに加えグローバル向けSIMも選択肢となります。
グローバル向けSIMを使う場合は、ローミング機能に対応しているデバイスが必要になります。(どの通信モジュールが対応しているのか詳しくありませんが、これまで私が使ってきた通信モジュールは、すべてローミングに対応していました。)
今回は、日本国内のみで使うことを前提とし、IoT SIMを選びます。
◎ 接続したい通信キャリアはどこか?
スマートフォンのSIMを選ぶ場合も、NTTドコモ、KDDI、SoftBankなどの通信キャリアを選びますが、IoT SIMも同様に通信キャリアを選びます。複数の通信キャリアに対応したSIMもあります。
例えば、山間部等で電波環境が悪く、ある特定の通信キャリアのみ繋がるという場合、特定の通信キャリアを選びたいと思います。また、どこに設置されるかわからない、あるいは移動するデバイスの場合、複数のキャリアに繋がることに優位性があるかもしれません。
◎ 相互接続性試験 (IOT)をパスしているか?
通信モジュールと通信キャリアとの相互接続性を評価する試験があり、これを通過している通信キャリアを選ぶと安心です。技適と違ってマストではなさそうなのですが、相互接続性試験を通過していない通信キャリアを選ぶことのリスクを、いまいちわかっておらず、コメント頂ければ嬉しいです。
執筆時点で、SIM7080はKDDIとSoftBank、BG770AはNTTドコモとSoftBankの相互接続性試験を通過しています。相互接続性試験を通過しているデバイスは下記から調べることができます。最新情報は下記をご参照ください。
相互接続性試験(IOT) (NTT ドコモ)
IOT 完了製品 (KDDI)
通信モジュール製品情報 (ソフトバンク)
◎ 省電力機能であるeDRXやPSM に対応しているか?
IoTデバイスの省電力化の方法の一つとして、sleep時に通信モジュールの電源を切り、復帰時に再度通信キャリアと接続するという方法があります。しかし、下記『ソラコム デバイス実装ガイドライン』を見ると、この方法は推奨されていないようです。
LTE は、IoT 通信モジュールの電源を頻繁にオン・オフするようには設計されていません。モジュールの観点からは、オンとオフの切り替えプロセスは非常に迅速に行われますが、ネットワークの観点からは、信号メッセージが大幅に増加し、セルラーネットワークに大きな負担がかかります。
代わりに、LTE-M通信の特徴の一つである省電力機能(eDRX/PSM)を用いることが推奨されています。
もちろん、オン/オフのスイッチング頻度によっては、電力を節約するためにIoT通信モジュールのスイッチを切ることが理にかなっている場合もあります。しかし、eDRX(Extended Discontinuous Reception)やPSM(Power Saving Mode)といった省電力ネットワーク機能(LTE-MやNB-IoTテクノロジー、最新のLTE cat1bisテクノロジーの機能)の導入により、IoT通信モジュールを完全にシャットダウンする必要性はさらに低くなりました。代わりに、これらの省電力機能を有効にすることで、ネットワークに新たな負担をかけることなく、IoTデバイスの省電力化を実現することができます。
省電力機能(eDRX/PSM)を用いる場合、これに対応したIoT SIMを選ぶ必要があります。
◎ 必要SIMサイズはナノ・マイクロ・標準のどれか?
使用する通信モジュールによって、必要なSIMのサイズが決まってきます。注意点は、IoT SIMを注文する際、SIM カードのサイズ (ナノ・マイクロ・標準) を選択IoT SIMもあれば、ナノ・マイクロ・標準サイズに対応している 3 in 1 方式の IoT SIMもあることです。後者のほうが自由度が高いですね。
これまで使ってきた通信モジュールは、すべてナノサイズだったのですが、最近使っているSIM7080Gモジュールはマイクロサイズなので、3in1方式が便利だったりします。
◎ 想定通信量はどの程度か?
通信量が小容量(月数MB以下)なのか、中容量(月数10〜数100MB以下)なのか、大容量(GBオーダー)によって、コストメリットのあるIoT SIMが変わってきます。定期送信するデバイスの場合は、1回通信あたりの通信量を計測し、月々の通信量を想定します。
◎ 料金体系は?
初期費用、基本料金、データ通信量を比較します。在庫としてSIMを持っておく場合など、利用していない期間は基本料金がかからないIoT SIMもあります。通信量や使い方によって、コストメリットのあるIoT SIMを選んでいきます。
長くなりましたが、検討したい評価基準を洗い出しました。色々と検討項目がありますよね。これらを踏まえ、いよいよIoT SIMを比較します。
■ IoT SIMを比較する
これまでSORACOMのIoT SIMを使ってきており、それ以外のIoT SIMに詳しくないため、今回は、SORACOMのIoT SIMを比較していきます。
◎比較表
調べた結果、グローバル向けSIMの中でLTE-Mに対応しているSIMは、plan01s、plan01-LDV、planX3 X3-5MB、planP1です。日本向けSIMの中でLTE-Mに対応しているSIMは、plan-D D-300MB、plan-KM1です。これら6このIoT SIMを比較表にまとめました。じっくり見てみてみると、SIMごとに特徴があることがわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1737880410-IMaLqP59bWehrsnBQ2uZJ6D7.png?width=1200)
*1 150円/USDで計算
*2 通信料の課金単位は、1KBごとに課金されるプランや100KBごとに課金されるプランがあるため、詳細は公式ドキュメントを参照
*3 ステータス変更手数料は、使用中→利用開始待ちに変更する際に必要となる手数料
*4 SORACOMカバレッジテストを見る限り、省電力機能(eDRX/PSM)に対応していない
*5 2024年12月にサービス終了
*6 SORACOMカバレッジテストでは、Guaranteed(保証あり)ではなく、Validated(テスト実績ありだが保証なし)となっている
*7 SORACOMカバレッジテストには、plan-KM1が省電力機能(eDRX/PSM)の対応可否情報が記載されていないが、plan-KM1の公式ページにはその記載があるため、対応していると判断
◎ 利用料金と通信量の関係
表だと、基本料金+通信料がわかりにくいため、グラフにしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1737879941-Gs17Kyb5Df9zTpMxw4toOXeC.png?width=1200)
横軸は通信量[KB/月]で、縦軸は利用料金[円/月]です。利用料金は、基本料金+通信料で計算しています。また、横軸縦軸ともに対数表示ですのでご注意ください。横軸の一番右の目盛りが1,000,000KBであり、1GBです。縦軸の一番上の目盛りが100万円です。
注意したいのはplan-KM1です。おおよそ1,000KB=1MBまでで使う分には良いですが、10MB,100MB,1GBオーダーになると、月額料金が恐ろしいほど高くなっています。以前、電池耐久試験のため高頻度で通信させたら、びっくりする金額の請求になったことがあります。数100MB以上使う想定であれば300MBがバンドルされているplan-D-300MBが安心です。
■ 結局どれが良いか?
小容量通信という前提で、LTE-M通信対応IoT SIMを選ぶ場合の個人的な見解を、下記の総合評価列にまとめました。主要評価基準も併記しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1737881758-0cwiokgLdT5qZPlG8VWnvNAK.png?width=1200)
主にNTTドコモ回線を利用したいのであれば、5MBが含まれるplanX3-5MBを私は選びます。月150円で5MBが含まれますし、5MBを超えたら通信を止めるような設定にしておけば、毎月の支払いの目論見をたてやすいです。
主にSoftBank回線を利用したいのであれば、plan01 LDVが安価です。低容量であれば月100円以下で運用できますし、約1MBまではplanX3-5MBよりも安価です。
主にKDDI回線を利用したいのであれば、plan01s-LDVかplan-KM1が選択肢になります。plan01s-LDVのほうが安価ですが、PSMに対応していません。PSMを利用するか否かが判断基準になるでしょうか。
上記は、小容量の通信を想定していましたが、中容量であればplan-D-300MB一択です。上述したグラフの数10〜数100MBを見ると、plan-D-300MBの安さよくわかります。
■ まとめ
書いているとなかなかの長文になってしましましたが、LTE-M対応IoT SIMをどのような評価基準で選べばいいのか、そしてその評価基準で比較検討した結果、結局どれが良いのかをまとめました。NTTドコモ回線ならplanX3-5MB、SoftBank回線ならplan01s-LDV、KDDI回線ならplan01s-LDVかplan-KM1、中容量ならplan-D-300MBが、現時点での私の結論です。
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■ 参考
・IoT SIM選びの注意点は、この記事も参考になります。
・『ソラコム デバイス実装ガイドライン』です。通信の考え方が参考になります。https://soracom.jp/files/device_guideline.pdf
・SORACOMのカバレッジテスト結果です。どのプランがPSMに対応しているかが記載されています。
・SORACOMの SIM比較です。「eDRX / PSM に向いているユースケースについて」など参考になります。
・グローバル向けIoT SIMの利用料金は下記です。
・日本向けIoT SIMの利用料金は下記です。