自作IoTシステムの構築 基礎編10:「ケース」をどう選ぶか?
『自作IoTシステムの構築 基礎編』では、私自身の経験をもとに、IoTデバイスを自作するために必要な知識の全体像と、各要素の選択肢や選び方を整理して解説しています。
今回は"屋外"使用を前提としたケースとケース周りの部品選びです。"屋内"であれば、簡易なケースでも問題ないのですが、屋外で使用する場合、色々と考慮すべきポイントがあります。このことについてまとめます。
■ 屋外IoTにおいて考慮すべきポイントは?
自作するIoTデバイスが屋外に設置される場合、どのような点を考慮する必要があるでしょうか?一般的には、防塵性・耐水性、耐候性、難燃性、耐衝撃性・耐振動性、耐熱性・耐寒性、および現場施工性などを考慮する必要があります。
これらを踏まえ、防水樹脂ケース、樹脂ケース内底面に用いる取付ベース、ケースを現場に設置するための取付部材、ケースに配線を通すためのケーブルグランド、ケーブル同士を接続するための防水コネクタ、などを選定していきます。
色々と選択肢がありますが、タカチ電機工業(以下、タカチ)は、上記全部品を扱っており、モノタロウやマルツなどの通販サイトで購入できるため、気に入っています。下記サイトから、タカチの紙カタログを取り寄せ、全体像を掴むことをおすすめします!具体的な設置事例の写真も豊富で、必要な部品がイメージできます。
https://www.takachi-el.co.jp/catalog/form_catalog
PDF版もあります。
http://testweb.sanbi.co.jp/sanbiwork/2022-24Japanese/original.pdf
■ 防水樹脂ケース
◎ 樹脂の素材はどれがいいか?
まず樹脂ケースの素材について考えます。タカチ製樹脂ケースで主に使用されている素材を、一覧にまとめました。
◎ 開閉タイプのケースの場合
ケースの形状として、開閉タイプのケースと、ネジ止めタイプのケースがあります。単管等に固定するような現場では、開閉式タイプのケースが使いやすいです。工具不要で開閉ができ、設置や電池交換が楽です。
下記に、色々と商品があります。ルーフ付き、鍵付き、高防水性など、色々と種類があります。
https://www.takachi-el.co.jp/cat/hinged_plastic_boxes
この中でも、BCPR/BCAR/BCPC/BCAPシリーズが使いやすいと思っています。これらは、ルーフの有無と、ポリカーボネート樹脂製かABS樹脂製かで、商品ラインナップが4つに別れています。
紫外線や降雨の影響を受ける環境下で長期駆動させたい場合は、ルーフ有りのポリカーボネート製(BCPR)が安心です。一方、紫外線や降雨の影響が比較的小さく、安価にIoT化したい場合はルーフ無しのABS樹脂製(BCAP)がいいかもしれません。ここは、現場事情に合わせて選ぶと良いです。
◎ ネジ止めタイプのケースの場合
次に、ネジ止めタイプのケースです。地面に置きたい場合などは、このケースが使いやすいです。下記に、色々と商品があります。
https://www.takachi-el.co.jp/cat/universal_plastic_boxes
この中でも、私はBCAL/BCASシリーズよく使っています。4本のネジにケース上面からアクセスでき、蓋を取り外しやすいです。これも、ポリカーボネート樹脂製かABS樹脂製かで、商品ラインナップが別れています。紫外線による変色を許容できる場合は、ABS樹脂製が安価です。ただし、ABS樹脂は紫外線によって、結構変色します。
また、ケース上部からネジにアクセスできないのですが、ASA樹脂製のWPシリーズもあります。スッキリとしたデザインです。
■ 取付ベース
ケース選定とともに、ケース内底面に取り付ける取付ベースを利用すると、IoTデバイスの各パーツをケース内底面から浮かすことができ、安心です。商品ラインナップとして、樹脂製/金属製/木製がありますが、最初は、樹脂製の取付ベースがおすすめです。貼付型スペーサーを用いて基板を取付ベース上に両面テープ固定すると、基板配置の自由度が高いです。
■ 取付部材
上述した開閉タイプのケースを、単管等に固定したい場合、下記の取付部材を用いると簡単です。
■ ケーブルグランド
◎ 一般的なケーブル用
ケーブルグランドは、ケースの中から外のケーブルを出したい場合に防水性を担保するために用いられます。これもタカチから色々と商品が出ています。
https://www.takachi-el.co.jp/search?text=ケーブルグランド
この中でも、私は、タカチの耐候性ケーブルグランド RMWシリーズを好んで使っています。ケーブル径によって様々なサイズがありますが、よく使うのは、適合ケーブル径3.5~7mmのRMW12S-7です。ケースにM12用の穴を開ければ、OKです。樹脂ケースにM12用の穴を開けるためのドリルは、これを用いています。ドリル中央が鋭利になっており、センターを取りやすく使いやすいです。
また、多芯型のケーブルをケース内に通したい場合、多芯型のケーブルグランドもあります。耐候性が謳われていませんが、これを用いています。
◎ USB等のケーブル用
USBケーブル等を通したい場合、スリッドの入ったケーブルグランドもあります。これは、日本エイ・ヴィー・シーの商品ラインナップが豊富です。
■ 防水コネクタ
ケーブル間をコネクタで接続したい場合、防水コネクタを選ぶ必要があります。下記がタカチの防水コネクタのラインナップです。私はこの中から選んでいます。一例として、THB381Eシリーズの写真を貼ります。
https://www.takachi-el.co.jp/search?text=防水コネクタ
また、七星科学研究所の防水コネクタも有名です。
■ まとめ
本記事では、屋外IoTを実現するために考慮すべき外部環境と、耐環境性や現場施工性を担保するために必要となる部品を具体的にご紹介しました。私も自作IoTを始めた時は知らない部品ばかりでしたが、タカチのカタログで全体像を掴んでからは、部品選定が楽になりました。まずは、タカチの紙カタログを注文することから、初めてみてください。
自作IoTシステムの構築〜基礎編〜シリーズも、これで第8回となりました。第1回から第8回の知識を組み合わせれば、IoTシステムにおけるIoTデバイスの部品選定方針は定まるはずです!次は、「各部品をどこで買えば良いのか?」について取り上げます。
この記事が参考になった方は、スキ、コメント、フォロー頂けると励みになります!ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
■参考
・防塵防水の規格としてIPが使われますが、タカチのカタログに説明があります。
http://testweb.sanbi.co.jp/sanbiwork/2022-24Japanese/?pNo=1134&detailFlg=0
・難燃性の規格としてUL94が使われますが、タカチのカタログに説明があります。
http://testweb.sanbi.co.jp/sanbiwork/2022-24Japanese/?pNo=1136&detailFlg=0
・自作IoTシステムの構築 基礎編の各記事を、マガジンにまとめています。