IoTわな作動通知システムの開発1〜企画構想編〜
イノシシやシカなどの狩猟において、くくり罠や箱罠などが用いられますが、現状、これらのわなを定期的に見回る必要があります。山間部の広いエリアに設置されたわなを一つ一つ確認するのは、時間と労力がかかります。そこで、IoTシステムを後付けし、捕獲と同時にスマートフォン等に通知が来るシステムを自作したいと考えています。「IoTわな作動通知システムの開発」(以下、IoTわなシステム)の一連の記事では、開発の過程をまとめます。まずは、企画構想編です。
■ 狩猟わなの見回りを効率化したい!
先日、狩猟をしている友人から「狩猟わなの見回りを効率化できないか」という相談を受けました。上述の通り、わなを定期的に見回るのには、大変な時間と労力がかかります。そこで、IoT技術を活用し、見回りを効率化する仕組みを作りたいと考えています。わなにセンサーと通信機能を搭載し、獲物がかかった際にスマートフォンに通知が届くようにすれば、効率的に現場に行くことができます。まさに、IoTが得意とする領域です。
■ SORACOM LTE-M Button Plusを用いたシステムがシンプルだが課題も…
私が調べる限り、下記のSORACOM LTE-M Button Plusを用いたシステムが、自作できる最もシンプルなシステムだと思います。
これは、SORACOM LTE-M Button Plusという既製品と、マグネットスイッチを組み合わせ、通知システムを構築しています。
上述した友人も、この方法に習ってIoT導入していました。しかし、実際に狩猟の現場で用いると、
・現場によってはKDDIの電波が悪く、通知が届かない場合がある
・(友人の)狩猟仲間のスマホ通信はNTTドコモが多く、NTTドコモ通信であれば電波強度を確認しやすい
・センサーの誤作動がたまに発生する(風等の影響?)
・現状はメール通知としているが、狩猟仲間のグループLINEに通知させたい
などの課題があるようです。
他にも、
・IoTデバイスの死活監視ができない
という課題もあると思います。
■ 既製品のIoTわなシステムはどのような仕様か?
まず、既製品のIoTわなシステムはどのような仕様なのか、調べることにしました。農林水産省の鳥獣被害対策に活用出来る機器情報のページに、一覧表でまとまっています。これらの機器を通信方式で分類すると、機器単独通信するタイプと、親機子機の2台間で通信するタイプがあります。前者の方が小規模や自作に向いていると判断し、前者の通信方式を採用した機器を抜粋しました。なお、書き間違いや、価格等の変更がある可能性がありますので、一次情報を参考ください。
センサーとして磁気センサーが用いられていることが多いようです。
コストは、No.4のSORACOM LTE-M Button Plusを除けば、イニシャルコストが約4-7万円、通信費が約300-400円/月です。
No.3は、ダッシュボード上で地図や表形式で可視化することができユニークです。
■ 自作IoTわなシステムの企画構想
No.4のSORACOM LTE-M Button PlusによるIoTわなシステムをベースに、現状の課題や既製品仕様も踏まえ、自作IoTわなシステムを以下の通り要件定義しました。
【通信】現場によってはKDDIの電波状況が悪いため、NTTドコモを選択できるようにする
【マイコン】わな作動通知を確実に届けるため、通信エラーになる場合も考慮し、一定間隔ごとに通知する
【マイコン】わな設置時に通信確認および動作確認のため、通信させる
【マイコン】電池切れやデバイストラブルを検知するため、バッテリー残量計測や死活監視を行う
【センサー】センサーの誤作動をなくすため、センサー仕様やマイコン通信仕様を見直す。磁気センサーのほか、接点スイッチを用いたセンサーを比較検討する
【構造】防塵防水仕様で、木にくくりつけやすい仕様とする
【クラウド】通知方法は、LINE通知もしくはメール通知とする。データ活用も視野に入れ、データ蓄積、可視化を行う
【価格】イニシャルコスト〜2万円代、ランニングコスト300-400円/月で実現する
■ まとめと今後の課題
次の記事以降、通信、マイコン、センサー、構造、クラウド、価格を順番に整理していきます。
いやー、こうやって課題解決するモノを考えることは、楽しいですね。
(2024/10/13追記)
次の記事を公開しました。
■ 参考
・鳥獣被害対策に活用出来る機器情報がまとまっています。シンプルな通知システムの他、カメラを用いたシステムなども一覧で掲示されています。