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IoTわな作動通知システムの開発3〜SORACOM LTE-M Button Plus x マイコンで構築する〜

友人から依頼があり、イノシシやシカなどの狩猟用わなに取り付けるIoTわな作動通知システム(以下、IoTわなシステム)を開発しています。IoTわな作動通知システムの開発シリーズ」では、開発過程をまとめます。
今回は、SORACOM LTE-M Button Plus x マイコン編です。
前回の通信モジュール編では、通信モジュールとして①SORACOM LTE-M Button Plus、②Wio BG770Aの2つの選択肢を示しましたが、本記事では、①を選んだ場合のマイコンの考え方についてまとめます。前回記事の続きですので、下記も参照ください。


■ 実装したい機能

IoTわなシステム開発にあたり、マイコンに関わる実装した機能として、下記が挙げられます。

  • わな作動通知を確実に届けるため、通信エラーになる場合も考慮し、一定間隔ごとに通知させたい

  • わな設置時に通信確認および動作確認のため、通信させたい

  • 電池切れやデバイストラブルを検知するため、バッテリー残量計測や死活監視を行いたい

1つ目を補足すると、わな作動時の1回だけの通信では、その通信時に通信エラーが発生した場合、通知が届かないことになります。わな設置場所は山間部であり、通信環境が不安定なことが多く、確実に通知を届ける必要があります。そのため、わな作動時には複数回通信させ、そのうち1回でも通信が成功すれば通知が届くという仕組みにしたいと考えています。

■ SORACOM LTE-M Button Plusだけではこれらを実現できない

SORACOM LTE-M Button Plusは、シングル、ダブル、ロングの3種類の接点信号状態に応じ、clickType=1or2or3がクラウドに飛ぶというシンプルなデバイスです。わなにSORACOM LTE-M Button Plusを接続した場合、わな作動と同時にロングクリックされ、clickType=3という情報がクラウドに飛びます。これをトリガーとしてメールやLINE通知することで、シンプルな通知システムを実現できます。

「わな作動時に1回のみ通信させたい」という仕様で問題なければ、SORACOM LTE-M Button Plusを用いた方法がシンプルでおすすめです。これは以前まとめた「機械設備の異常検知システム」と同じ考え方ですので、下記をご参考ください。

一方、SORACOM LTE-M Button Plus単体では、通信エラー時に自動的に再送信したり、複数回通信を行うような高度な制御はできません。そのため、「わな作動通知を確実に届けるため、通信エラーになる場合も考慮し、一定間隔ごとに通信させる」を実現するには、マイコンを追加して、再送信条件や通信タイミングを柔軟に設定する必要があります。

■ SORACOM LTE-M Button Plusにマイコンを追加する

マイコン種として、入手性が高く、安価で、必要最低限の入出力ピンを有し、低消費電力なATtiny13aを選びました。下図の上段がSORACOM LTE-M Button Plusのみを使用したわな通知システム、下段がマイコンを追加した通知システムです。マイコンを追加することで、clickType=1,2,3を送信する条件やタイミングを自由に決めることができる点が、最大のメリットです。

この考え方については、以前開発した「機械設備の異常検知と復帰通知システム」と同じ考え方ですので、下記をご参照ください。

なお、マイコンに書き込むコードに関しては、IoTわな通知システムの現場ニーズに合わせて変えています。

■ EasyEDAとJLCPCBでマイコン用プリント基板を自作

マイコン用プリント基板を、初心者ながらEasyEDAという設計ツールで図面を描き、JLCPCBというプリント基板製造会社に基板発注しました。

設計ツールとしてはEasyEDAのほかKiCADが有名ですが、知人からEasyEDAが初心者には使いやすいと聞いたので、今回はEasyEDAを使いました。EasyEDAはWebベースで利用でき、シンプルなインターフェースで回路図の作成やPCBレイアウトができる点が魅力的でした。また、プリント基板製造サービスも多々ありますが、EasyEDAと連携しているJLCPCBが安価であったため、JLCPCBを選びました。

JLCPCBを利用することで、少量生産でも低コストでプリント基板を製作できる点が非常に便利だと感じました。EasyEDAから直接データを送信でき、発注のプロセスがスムーズに進むことも魅力の一つです。こういったモノを個人レベルで作ることができるって面白いですね。

自作したプリント基板。モノができると嬉しい。

■ まとめと今後の課題

「わな作動時に1回のみ通信させたい」という現場ニーズであれば、SORACOM LTE-M Button Plus単体で実現できます。

一方、「わな作動通知を確実に届けるため、通信エラーになる場合も考慮し、一定間隔ごとに通信させたい」など、現場ニーズに応じて通知条件やタイミングを任意に設定したい場合は、マイコン追加が解決案です。

個人的には、機械設備の異常検知を開発した時の考え方が、わなに応用できたことが面白いなと感じました。

本記事では、通信モジュールとしてSORACOM LTE-M Button Plusを選択した場合のマイコンの考え方をまとめました。通信モジュールとしてWio BG770Aを選択した場合のマイコンの考え方については、Wio BG770Aが発売され次第研究し、noteにまとめます。

次回は、センサー編です。わなの作動という動きを、どのセンサーでどのように捉えるのかについて考えます。

■ 参考
・IoTわな作動通信システムの開発シリーズをマガジンにまとめています。




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