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1 「レベッカ」 デュ・モーリア著

 「ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た」
という印象的な文で始まる物語。

 10年以上前に読んだのですが、最近また読み返しました。
素敵な本です。
本のカバーには「ゴシックロマンの金字塔」と有ります。

 若くて身寄りのない「わたし」は20も年上の貴族のマキシムとモンテカルロのホテルで出会う。マキシムは故郷の「マンダレー」で妻を亡くし、傷心の旅に出ていたのだ。そこで「わたし」は彼の妻に迎え入れられる。

 美しく有能な彼の前妻「レベッカ」。大倫の薔薇の様な女性。
マンダレーにやって来た「わたし」を追い詰めるのは、女性としても貴族の奥方としても完璧だったレベッカ。亡くなってなお城の至る所にレベッカの気配が色濃く残る。レベッカを慕う家政婦長は「わたし」が主人の妻にも、マンダレーの女主人にも相応しくないと感じて敵意を抱く。

 若くて何もかもが未経験な頼りない「わたし」。自分がみすぼらしく、幼く、マキシムには釣り合わないと感じる。マキシムはまだ深くレベッカを愛している。マキシムにとって「わたし」は一体何なのか?
「わたし」はレベッカに嫉妬し、そして苦しむ。マキシムを愛しているのに、彼は自分を子ども扱いをする。まるでペットの犬を撫でる様に「わたし」の頭をなでる。
「わたし」の苦悩は深まるばかり。
すれ違う二人の感情。

そして決定的な事件が起きる。

「わたし」の孤独や切ない気持ちがマンダレーの自然描写と相まって美しい情景を描きます。
一文を上げてみましょう。
「・・・細い道の両側に並んでいるのはアザレアとツツジだった。私道を真っ赤に染めていた巨木は打って変わった美しく優美な姿をして、サーモンピンクや白や山吹色の、繊細でたおやかな頭を柔らかく初夏の雨に垂れている。」
新潮文庫 「レベッカ」 茅野美ど理訳。P219より


まるでその場所にいる様な気がします。花の甘い香りや樹木の清々しい匂いを感じます。
深い森。
マンダレーは美しい庭園と深い森に包まれ、その外側には海が広がります。
海は時に美しく、そして時に恐ろしい。
そのどこにいようと「レベッカ」は「わたし」に囁く。
「マキシムが愛しているのはあなたでなくて、私なのよ」と。

若くて純粋な「わたし」の自我の弱さとレベッカの強さ。
「わたし」を取り巻く人々の悪意。好奇心。妬み。愚かさ。
そしてマキシムの情熱と愛はどこに。

悪魔っているんだな。って思います。読むと。
ロマンチックでサスペンスに満ちた恋愛小説だと思います。
英国の優雅な貴族の生活が脳裏に浮かびます。
そして夏でも寒冷なマンダレーの気候を感じます。

これ、最近読んだ中で一番ですね。



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