2 「神鳥 イビス」 篠田節子著
篠田節子さんは私の好きな作家です。
彼女の著作はほぼほぼ読みました。大作が多いです。
兎に角面白い。めちゃくちゃ面白い。スケールが大きい。読みごたえがあります。
「神鳥」は本当に怖いと思ったホラーです。何が怖いって、解決しないんですよ。怖さが。普通追い詰められて助かって、それで「ああ良かった」になるじゃないですか。それが解決しない。これも三回くらい読んでいますが、終末が分かっていても怖い。
正に悪夢です。悪夢が現実に物理的な実行力を伴って追い掛けて来る。
ずるくないですか。それ。
フェアじゃ無いと感じます。でも、この世界にフェアなんて存在しないのかも知れない。
悪夢は自分が生きている限りどこまでも追い掛けて来るのです。
主人公は逃げる。
相方がいるというのが心強い。だが、いつかは喰われてしまう。相方も自分も。それが分かっていても逃げるのです。
「朱鷺飛来図」。
夭逝した明治の日本画家・河野珠枝の妖しい幻想画。
それに魅せられて佐渡から奥多摩へ。
またこの画が怖い。朱鷺の肉感や羽搏きの音、ぎょろりとした鳥類の目。生温かい体温さえも感じられる程です。耳障りな怪鳥の声まで想像出来ます。
尖った長い嘴。
絵の中にはピンク色の牡丹の花が咲き乱れ、そこに生き生きと舞う朱鷺の姿が描かれています。躍動的で魅力的だが、どこか禍々しい。
どうして?
主人公は絵の秘密を探ります。
「他種」を根絶やしにしてしまう程の力を持つ人間。それも無自覚に。
結局喰っちゃうのでしょうね。
まあ食べ尽くしてしまう訳ですよ。何もかも。全てを消費してしまう。
「種」を抹殺してしまう程。
人間以外の種にとって、正に人間こそが悪夢なのかも知れないですね。