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雑文・出品 モブ・ノリオさんの芥川賞正賞メルカリ出品について

 YO、FUCKIN’ 朋輩(ニガー) ! こんにちわ舞城王太郎です。嘘です。モブ・ノリオです。モブとノリオの間には絶対「・」入れるんやぞ! 入れなかったら、ラルクアンシエルの事をラルクアンシェルと言われたときのhydeみたいにブチ切れっからな! 脱ぎ捨てたシークレットブーツを凶器にして、おまえの頭をカチ割ったる!! やんのかコラ! ああ、やったるで!! 以上、どうやら頭の方がおかしくなった容疑者は、靴を片手にぴょんぴょん飛び跳ねているところを通報され、先程現行犯逮捕されたのでした。法治国家日本万歳!!

 というわけで、久々にモブ・ノリオさんの名前を拝見したのですが、なんと芥川賞受賞の際の正賞である懐中時計をメルカリに売りに出したという、一見信じ難いような内容のニュースが報じられたのです。一体どういうことなんだってばよ!? と、本題に入る前にモブ・ノリオさんが芥川賞を受賞した頃の話を解説致しましょう。モブ・ノリオさんが受賞したのは、第131回ですが、そのひとつ前の第130回は綿矢りさ、金原ひとみの最年少女性コンビが受賞したという事で、めちゃくちゃ話題になっていたのです。130回の候補者は、受賞した2人以外でも、島本理生(何度も芥川賞候補になるが、最終的に直木賞受賞)、絲山秋子(後に芥川賞受賞)、中村航(私がメインで作品発表の媒体にしてるステキブンゲイを運営されてる方)と、現在でも現役バリバリで活躍されている作家揃い。この回の選評において、「今回は受賞者無しでよいんじゃない?」と石原慎太郎はのたまったそうだが、なかなかどうして、この第130回芥川賞で文学界隈は大盛り上がり、実際私自身も、「19歳の女の子が芥川賞獲れるんだ!」と純文学に興味を抱くきっかけとなったのだった。この回は直木賞受賞者も、京極夏彦、江國香織と強力な布陣。マジで文学界がアツかったのだ。その130回の次の、第131回芥川賞を受賞したのが、今回紹介するモブ・ノリオさん。冒頭で舞城王太郎の名前がありましたが、この第131回の候補者に舞城王太郎の『好き好き大好き超愛してる』がエントリーするも、選評で石原慎太郎が「なんだこのタイトルはふざけとんのか!」とブチ切れるという愉快なエピソードがあったのです。慎太郎、おまえも勃起した陰茎で障子をブチ破る破廉恥な描写がある『太陽の季節』で芥川賞を受賞したんだから、そんくらいで暴れるなよ、とモブさんが思ったのかどうかは知りませんが、こんなエピソードを踏まえ、モブさんは受賞者スピーチの際の第一声が「こんにちは舞城王太郎です」だったのです。なお、これは舞城王太郎が正体不明の覆面作家だったがゆえのウィットに富んだジョークでもあるのですが、この受賞スピーチと、ハッパをキメながら祖母を介護するという内容や、ファッキンなど過激な単語や、後期谷崎潤一郎のような異常に長いワンセンテンスの文章といった特異な作風で、受賞作『介護入門』はかなり話題になりました。ただ、この受賞作以降、目立った活動をしていなかったためか、一発屋芥川賞受賞者的なイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか?

 そんな中、今回のメルカリ出品騒動。消えた芥川賞作家が、金に困って芥川賞正賞の懐中時計を売却するのか!? と揶揄されることも多いでしょうが、ちゃんとモブさん本人がご自身のブログで、メルカリ出品に至った経緯を語っております。芥川賞を冒涜するような意味での行為ではない、という事がわかります。本腰を入れて執筆するための資金は必要だという事もわかります。また、一発屋的なイメージとは別に、モブさんが文学に対して熱い思いをお持ちなことは、ブログを読めばわかります。中上健次、古井由吉、大江健三郎らの名前が登場し、素人がノリで書いたらたまたま受賞しちゃいました方ではなく、文学に真摯に向き合っているからこそ、なかなか新作が書けないのだと思います。でも、全く小説を執筆してないわけではなく、不定期に文芸誌の『すばる』等に短編、掌編、エッセイなどを寄稿しておられます。ブログも、やはり芥川賞受賞者だけはあり、読み応えがあって面白いです。シェキナベイベーこと内田裕也さんへの敬意が示された諸々のエントリーは、モブさんの純粋な人柄をうかがえ、私も裕也さん好きだったなあ、スキャンダラスな人だったけど、奥さんの樹木希林さんとの関係性含めて本当に魅力的な方だったと懐かしくなりました(指原と裕也さんのコラボCDは買いました)。大江健三郎の追悼特集を読んでたら、同じ号に後に芥川賞を受賞する市川沙央の『ハンチバック』が載っていて、何度も読んだ、と興奮しながら綴るエントリーを見て、大丈夫、モブさんはふざけた意味で今回のメルカリ出品を行ったわけではないと確信しました。

 というわけで、今回のメルカリ出品の件、おそらくなんらかの媒体でモブさん本人から、さらなる詳しい経緯が明かされるでしょう。そして、本格的な執筆活動再開への契機となってくれるなら、話題となることもまたよしと思うのです。モブさんの新作小説に期待しています! あ、余談ですがモブさんのモブって、最近の異世界転生物とかでよく使われる「モブキャラ」の「モブ」が由来みたいですね。

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