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日本とユダヤ 〜日ユ道祖論を考察する

「日ユ同祖論」というのをご存じでしょうか。
日本人の祖先が、2700年前(紀元前8世紀)にアッシリアに追放されたイスラエルの失われた十支族の一つとする説です。

明治時代に来日したスコットランド人のニコラス・マクラウドが提唱し始めた論説で
英ユ同祖論など、ユダヤ人と他民族文化を関連づけて論じられるユダヤ人同祖論のひとつがこの日ユ同祖論。

ちなみに、正確にいうとユダヤ人ではなく、ユダヤ人と共通の先祖ヤコブを持つ兄弟民族なので、「日ユ同祖」というのは本来はちょっと違うんですが、便宜上ここでは脇におきます。

紀元前1000年前後にイスラエル王国を作り上げたダビデ王
そしてその次のソロモン王

この二人の時がイスラエル王国の絶頂期でしたが
ソロモン王の死後、イスラエル王国は
・北のイスラエル
・南のユダ王国

に分裂します。
このうち、北イスラエルが紀元前722年に、オリエントに大帝国を築いたアッシリア帝国に滅ぼされるんですが、その一部が各地に逃れ、流浪したとされています。

そのうちの一部が日本にまで渡来。
物部氏、倭漢氏、秦氏などとして古代日本の国づくりに協力し、相応の地位を築いていったと言うのが日ユ同祖論の概略です。


日本人の祖(の一つ)がユダヤ人であるというこの日ユ同祖論の根拠として取り上げられるのが、ユダヤ教の祭祀と神道の共通点。

・日本もユダヤも、水や塩で身を清める禊の習慣がある
・古代ヘブライ神殿と日本の神社の構造が似ている
・古代ユダヤの聖櫃(アーク)と日本の神輿(みこし)が似ている

などなどいろんな類似点が列挙されます。

特に有名なのが諏訪大社。
諏訪大社のお祭りである「御頭祭」は、最愛の息子・イサクを神に捧げたアブラハムの故事をもとにしたお祭りとされ、諏訪大社の御神体である守屋山には、イスラエルの大使が駐日大使として就任すると真っ先に訪れるとされています。

時期的なものを考えても
のちのシルクロードの存在もあり
今ふうにいうと亡命イスラエル人が遙か東の太陽が昇る国に流れついた、というのは
まあありえなくはないかなと思います。

自分たち(日本人)にない技術を持ってやってきた集団を渡来人として迎え入れ
国づくりに役立てた、というのは、古代から日本人がやってきたことですしね。

ただですねえ。
たしかにユダヤ人(の一部)が日本にやってきて
日本の文化や政治・技術に影響を与えた可能性は高いんですが・・・

日本人の祖先がユダヤ人と同一、というのは
正直無理がありますね。

遺伝的な関係は否定されているみたいですし。

そもそも日本列島は地政学的に
北・西・南からの人の移動を受けやすい。
ある意味、新天地を求めて移動する人たちが最後に集まる場所といえます。

縄文人の一部は南から海流に乗って日本にやってきたようですし
朝鮮半島経由で、中国・朝鮮半島の人がどんどこやってきたのは常識として知られている。

そのうちの一部が西方から流浪してきたユダヤ人の集団で
彼らを受け入れた結果、異文化が古代日本に流入してきた
そしてそれは日本の文化などに取り入れられ、日本化していった

それくらいの話だと思うんですよね。

芥川龍之介がその著書『神々の微笑』で述べているように
日本文明の特徴の一つは”つくりかへる力”にあります。

つくりかへる力。
日本にやってきた外来の文化は
日本の風土や文明に合うように作り変えられるというもの。

仏教然り
儒教然り
文字然り
法律然り。

ユダヤ人のもたらしものもその一つであり
確かに古代日本に影響は与えたでしょうが・・・

日本人の祖先がユダヤ人、というのはちょっと無理があるかなと思います。
もちろん、これから研究が進むともっといろんなことがわかるのかもしれませんけどね。


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