自分の為「だけ」にゲームを遊ぶ雑記(2024年7月)
ゲームをもっと自由に遊びたくなり、思い切ってXのアカウントを消した。
今の自分は、知らない誰かのためや購入のきっかけに迷う誰かのために、身を削ってゲームの話をする気が湧かない。開発者を応援するために身銭を削るのも、人生を削って作品を探すのも、現役のゲームライターに任せたい。
自分は今、自分のため「だけに」ゲームを遊びたいのだ。
だから、ここで書くのは最近遊んだゲームの感想だ。本当は書く気はなかったのだが消息不明説や死亡説が出そうなので、たまに書こうと思う。
レビューではない。あなたに合うかどうかは、わからないし、知らない。
『真・女神転生V Vengeance』
明らかに未完成な部分はありつつも、もともと自分は無印の時点で好意的だった『真・女神転生V』の完全版。客観的に見ても完成度が高いRPGになっている。(元)信者目線抜きで、最高傑作と断言して良い出来だった。
ペルソナばかりが注目されるなか、メガテンシリーズの信頼を取り戻すに足る内容ではあるし、ペルソナとは違う良さを作れているゲームでもある。
プレイ時間はSwitch版1周目クリア時点で50時間、難易度ハードでDLCによるレベル上げには頼らず(DLC悪魔のコノハナサクヤは終盤に加入させたら、便利すぎてビビった)、「復讐の女神篇」をクリアしたあと分岐前のセーブデータを使って別のエンディングを見たあと、「創世の女神篇」の変更点を確かめるべく途中まで遊び、高画質&ロード時間の短い機種で遊びたくなったので、Steam版を購入してまた復讐篇(実質4周目)からプレイ中。
いわゆる「謎の少女」にあたる尋峯ヨーコの存在意義も申し分なく、復讐編ではほかのキャラクターの掘り下げにも成功している。毎回これくらい、意味のある追加要素なら……と思わなくもないが成功している。神話を絡めた会話もある「悪魔の裏庭」は、メガテンの方向性としても、270体以上の悪魔の個性付けとしても成功していると言えるだろう。悪魔の扱い方や、神話の小ネタを取り上げる会話もよく書けていて感心した。ただ、どちらかと言えば悪魔が文明を破壊して人間を蹂躙していくナンバリングよりも、現代社会の裏で戦うデビルサマナー系列で取り入れて欲しいシステムではあるが。
レベル補正の緩和、終盤ボスのパズルギミック、ナビ悪魔の増加、マガツロなどなど、全体的なバランス、シナリオも含めて今回はとくに文句がない。
復讐篇は、ロウカオスニュートラル(真Vの場合は厳密には違うのだが、無印攻略本の試し読みで確認してもらえばいいので、便宜上こう呼ぶ)の分岐ではない。ライトロウヒロイン(タオ)とライトカオスヒロイン(ヨーコ)が事あるごとに論争し、選択肢でその思想にどれだけ共感したか、どちらに賛同していくかで道中の属性が変動していく。創世篇よりもわかりやすい。
良い意味でメガテンとは思えない王道な展開もある。「悪魔の裏庭」での会話によるフォローや、丹念に友情を積み上げる展開からのメガテンは、古き良きメガテン感も十分にありつつ、ちゃんと現代的になっている。
前作を遊んでいなくても、まず「復讐篇」から遊んだほうがいいだろう。無印のストーリーにあたる「創世篇」も、復讐篇では省略されがちな(裏の話になっている)部分の相互補完的な役割を担っており無駄になっていない。
完全版を作る場合は、いっそのこと『真・女神転生IV FINAL』のように無印終盤から分岐した完全な続編や、『デビルサバイバー2 ブレイクレコード』のように続編的な別シナリオを収録するのが一番無難だと思う。今回はそうした形とは異なり、蛇足ではなく対比構造と足りない部分をはめ込んだ追加シナリオの作り方だ。まともな理屈を構築できていない追加女性キャラが、説得力皆無な蛇足展開で台無しにするような内容ではないので安心である。
インタビューを読んだときは「本気で言ってるのか?」くらいに疑っていたのだが、当初からいたけどボツにしたという話は、たぶん本当なのだろう。
終盤の「こういうのでいいんだよ」と各地でオタクが言っていそうな良い意味で王道のメガテンらしくない展開も、丁寧に友情を積み重ねてからメガテンらしい展開をするのも、令和になっていろいろと表現の規制が厳しいなかで、よくやっているほうではなかろうか。
混迷を深める現代社会こそが混沌(カオス)という視点からの創世(ロウ)は無印からの構造ではあるのだが、よりわかりやすくなった。角を持つ牛神と蛇神の復讐、男性に虐げられてきた女性の復讐、さまざまな対立や復讐が比喩として盛り込まれているようにも見える。復讐篇での男性陣の扱いに対して、敵味方ともにメインを貼る女性陣の扱いは、とても現代的だ。
「神話上の属性」がライトロウとライトカオスへと傾いていく、未来に希望を抱くライトロウ属性と、未来に絶望を見るライトカオス属性のヒロインを挟んだ思想で揺れるのも、意外とこれまでなかった新鮮な分岐である。『真・女神転生NINE』のパートナー分岐に近いところもある。前作のサブクエストに続きを用意しているものも、作り込みとしては納得だろう。
とはいえ、自分だけが楽しいゲームになっている可能性もあるかもしれない。そう思ってSteamを見たら、圧倒的好評を維持していた。レビュー数も着々と増え、3000は超えそうだ。顧客が望んでいたものを出せている……!
少ない不評意見には『P5』と比べているものが多く、コミュなどを求めている辺りからも、海外では『P5』から入ったファンが多いことがうかがえる。YouTubeでも「日常パートがない」という意見があり、コメント欄で海外ファン同士がケンカしていた。なぜか懐かしい気持ちになるやり取りだ。
もともと未完成な部分があったとはいえ、丁寧な作りとメガテンとしての目の付け所は間違っていない作品だったので、完全版になる意味はあった。
結果的には、初心者にも問題なく勧められるメガテンとなっているだろう。
ただ、Switchの無印版を定価で買った100万人がいるという信頼の削り売りと引き換えの完成度ではある。最初からこれを出すのは無理かもしれない。完成版を作らざるを得ないのだとしても、そろそろ信頼を損なわない立ち回りは必要だろう。『メタファー』は完全版待ち、という人もいるのではなかろうか。
2024年のアトラス作品は、『ペルソナ 3 リロード』から始まり、ヴァニラウェアの『ユニコーンオーバーロード』、本作と総じて完成度が高い。立て直しができたのか、一時期のどこか詰めが甘い作品ラッシュはなんだったのかと思われる出来だった。だが、自分はもう一喜一憂するのに疲れてしまったので、今後積極的にアトラスのゲームを話題にするつもりはあまりない。
実は、別にどこかに送る予定などはないものの、クセで本作のレビューを書き溜めている。下書きだけで5万字を越えてしまったが、昔の自分のように全面的に褒めている内容だ。noteで公開するかどうかも未定だが、これを書いているうちに、数えたら10万字を超えていた。誰が読むんだ、そんなの。
『Dragon Ruins』
ダンジョンRPGのだいご味を極限まで削り落としても、人はどこまで楽しめるのか。深く考えさせられた、疲れている人のための3DダンジョンRPG。
まさに、疲れ果てた自分にピッタリのゲームであった。
オートで進む戦闘と、トラップも宝箱もないマップ。敵を倒してお金を集めてレベルを上げる。移動した場所がオートでマッピングされていく。ただそれだけなのに、間違いなく3DダンジョンRPGなのだ。
いや、待てよ。
それは3DダンジョンRPGと言っていいのか。本当に、どこまで削っても3Dダンジョンで、RPGなのだろうか。レア装備や宝箱がなくとも、面白さの本質は確かにあるし、ここまで削っても楽しめた。しかし、これ以上削ると、もうゲームを遊ぶ必要すらない「無」に行きつきそうな不安すらある。
疲れた人のためのRPGだが、遊んだことで「疲れすぎて行きつく先は無」であるという深淵を覗いた気持ちにもなった。もし、ここまで簡略化されても遊べないくらい疲れ果てているなら、いったん寝たほうがいいだろう。
このゲームを遊んだ弊害としては、自動で処理されていくことに慣れ過ぎて普通の3DダンジョンRPGがかったるく感じてしまうことだろう。同じ開発者が作った前作は、自分の手で方眼紙にマッピングする必要があるコテコテの3DダンジョンRPGなのだが、これのあとに遊んだせいで面倒くささを感じてしまった。戦闘だって自分でコマンドを入力しなくちゃいけないんだ!
こんな感じで『Dragon Ruins』に慣らされ過ぎた結果、ゲームの作業を楽しむ感覚を取り戻すまでにとても苦労した。やはり、疲れていてもゲームはある程度自力で作業する部分があったほうが楽しめる。ときには、疲れているからこそ、重く、疲れるゲームを遊ぶことが必要なのかもしれない。
『Dicefolk(ダイスフォーク)』
地味な良ゲー。短いステージ×4の構成。ダイスのカスタマイズはあるが、デッキ構築要素はなく、キメラと装備品の組み合わせ、ダイスの運で戦うデッキ構築型ローグライクっぽいゲームとなっている。毎回ゲーム的には中盤くらいかな……ここからパーティがうまく構築できて強敵と戦えそう……くらいの感覚で終わるので、良い意味ではサクッと終わるし、悪い意味では少々盛り上がりに欠ける。体力の削りあいになりやすく、1つ1つの戦闘が重めだ。
気になる点を上げるとしたら、戦闘に入っても音楽が地味なことだろう。ずっと眠くなるようなBGMが、せっかくのゲームのテンションを下げてしまっている。BGMの大切さを思い知る作品であったが、良くできていると思う。
『霧の戦場のヴェルディーナ』
今年買ったなかでは、もっとも微妙な気持ちになったパッケージゲーム。
意気揚々とインディーゲーム市場に乗り込んできたものの、これまで出してきたインディーが、どれも何とも言えないアクワイア。そのなかでも、とくに『霧の戦場のヴェルディーナ』は、すべてが噛み合っていなかった。
SRPGとデッキ構築型ローグライクを組み合わせた結果、噛み合っていない。奇跡的なバランスで、S・RPGとデッキ構築両方の良さをつぶしている。
S・RPGとして考えると、戦闘を仕掛けてもカードを引く運に左右されすぎるのでダメージ計算が成り立たず、職業のバリエーションも少ない。仲間を増やしていく楽しさもなく、ステージごとにレベルがリセットされるのも噛み合っていないため、とってつけたようなS・RPG部分が機能していない。
ストーリーはかなり薄い。同じボスとマップを3回ずつ使いまわしているのに、ボスとの会話すら足りない。盛り上がらないので無に近い感情を抱く。
デッキ構築型カードゲームとして考えると、種類が少なく構築の幅が狭い。ノーコストで引き直しできるカードや完全回避、ラスボスにすら効く麻痺、ただでさえ少ないカードの種類に、使えるものとゴミカードの差が激しすぎてシナジーが生まれない。最終的にコストを増やしてゴリ押していく。
100種類のカードをうたっているが、半分くらい強化版の数値違いなので実質50種類くらいしかなく、デッキ構築の幅が極めて狭い。そもそも、職業に特化した構築が意味を成していないし、デッキが全員共通なので職業ごとに組めない。ビルドの幅が狭く、デッキ構築型としても中途半端である。
などと言っていたら、アップデートで個別デッキが組めるようになったようだ。中断セーブも追加されたらしい。中断セーブなし、共通デッキでもクリアできるゲームだと言えば、大味さがわかってもらえるかもしれない。
結局、肉(「力の源」というコストが増えるカード)を食べてデッキをノーコストで回すゲームなので、個別デッキも意味を成さない予感はある。S・RPGとローグライクは相性が良くないのかも……と思わされるゲームだった。
アクワイアインディーの中で、どれか1つだけオススメするとしたら、間違いなく『スカーズ・オブ・マーズ』だろう。自分はまったくハマらなかったが、おそらくコレは評価が悪くないはずだ。あとは『Hookah Haze』も良さそうではあるが、これはデモにも触れていないので、まだわからない。
『Leap Year』
2.4時間でクリア。ジャンプした高さと同じ高度に着地するだけで死亡するというスペランカーのような主人公を操作して、カレンダーの日付を集めていく短編メトロイドヴァニア。天井に頭をこすってから着地して衝撃を和らげたり、高さを調節してしなないようにしながら、先へ進む。ジャンプのみで、よくここまでアイデアを思いつくなと思えるし、値段も600円しない。
アイデアは素晴らしいのだが、カレンダーである意味がとくに何もなかったのは意外だった。『TUNIC』や『outer wilds』を好きな人たちが話題にしていたので、もっとこう大仕掛け的な謎を解くことがあるのかと思っていたのだが、そういう意味では素直に謎がないアクションだった。変に身構えていたので、少々肩透かしだったが誰も悪くないし、ゲームのせいでもない。
安価かつアイデアのあるメトロイドヴァニアとして、非常に優秀である。
【以下、プレイ中】
『Staffer Case:超能力推理アドベンチャー』
途中で放置していたが、周囲で急に評判になり始めてネタバレが怖くなり再開したゲーム。良い推理ゲームでも、疲れてるとなかなか進まないものだ。
良ゲーなのは間違いなく、ネタバレされる前にクリアしなくてはならない。
『Poker Dungeon : Joker's Madness』
『Balatro』っぽく見えるが、中身はパーティを組んで戦うデッキ構築型ローグライクゲーム。アーリーアクセス中。自分は面白いと思うが、まだまだバランス調整中といった感じだ。
もっと書こうと思ったし、まだまだ遊んだゲームはある。
だが、とくに筆が乗らないのでまたいつか。