初心者にも勧められる神リメイク『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』のカジュアルモードに感動していた
今回の記事は、もう徹頭徹尾褒めることにする。
最初から最後まで『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』を褒めまくりたい。褒めて褒めて褒めちぎりたい。
なぜなら、完璧だから。
リメイクとして完璧で、2024年に出すRPGとして完璧だから。
もう、それ以外に表現のしようがない神リメイクだから。
何度褒めても褒めたりないくらい、素晴らしいリメイクだから。
たった1回程度、ネットの場末の記事で褒めるくらいでは『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』という神リメイクに対して、その素晴らしさを伝えきれないほどに素晴らしいリメイクなのだから。
Steam版を購入しているが、Switch版や別ハードでも買っておこうかと思うほど、チップをあげたくなるくらいに「わかっている」リメイクだから。
それが『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』だから。
値段、完成度、グラフィック、初心者への配慮、追加要素、原作をわかってる感、バランス調整etc……。人を選びすぎる「サガシリーズ」のなかでも比較的万人向けだった『ロマンシング サ・ガ2』を現代にアップデートするうえで、はずしてはいけないものをはずさず、余計なものを足さず、それでいて原作のイメージを補完して膨らませることに成功している。
いくら褒めても褒めたりない。
これから生まれるリメイクは、本作を基準にしてほしいと思えるくらいスーファミ時代のRPGのリメイクとして完璧であり、今の時代にも新作として耐えられる。模範的にして、何も言うことがないリメイクが出てしまった。
それが『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』だ。
愛もなく、思い出を踏みにじるリメイクが多すぎる時代に生まれた、愛あふれる神リメイク
この世には、しょうもない移植やリメイク、リマスターがあふれている。今でこそ、作品を大切にするリマスターなども生まれるようになったが、それでもまだ冷たい目で見るしかない駄移植、駄リメイク、駄リマスターは後を絶たない。私は、元の作品が持っていた良さを欠片ほども理解していない、そうしたダメな劣化品を「ダメイク」と呼んでいるが、作品が持っていた「なぜ、当時そのゲームにユーザーが心動かされたのか」と言う点に無頓着で、作品の良さを台無しにするダメイクは残念なことに今でも多い。
音楽や物語を別物に差し替えて台無しにするものもあれば、なぜか原作を踏みにじる余計なエンディングやイベントをつけたすものもあり、かと思えばプレイヤーに有利なバグだけを消して新しく酷いバグが追加されたりする、雑なつくりのものもある。原作の演出を理解しないまま、適当に高画質化したせいで元の演出の意図がなくなってしまっていたり、版権を海外の適当なメーカーに丸投げして中途半端なリメイクが生まれたり……。洋の東西、メーカーを問わず、ダメなリメイクや移植、リマスターは数えきれないほどあるし、当然ながらスクウェア・エニックスにだって、片手では数えきれないほどに失敗移植、リメイク、リマスターが存在している。
あんなに楽しいゲームが、どうしてこんなことに……。
そう嘆いた人は多いだろう。私だってそうだ。明らかに原作の良さをわかっていない移植やリメイク、リマスターを仕事で紹介するたびに心が痛んだ。なぜ、どう見たって原作のファンが喜ばないと遊んですぐにわかるものを、ゲームが好きでライターにまでなった人間が己の心を殺してオススメしなければならんのか。どうして、ここまで酷い内容で自信をもって出せるのか。机の下で震える拳を抑えながら、貶さないように細心の注意を払いつつ言葉をひねり出して、リメイクの変化について質問することだってあった。それほどまでに、この世には酷い移植、リメイク、リマスターが多すぎる。
そんな悲しいリメイクが多い世の中で生まれた『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン(リベサガ)』は、ダメイクが何故ダメイクなのか、リベサガはなぜ成功したのか、深く考えさせられる作品だった。
見た目はかなり変化しているのだ。イラストは原作やドット絵のイメージを尊重しているものの、2Dだったドット絵のゲームを3D化するうえでかなり違うタッチになっているし、原作にはなかったテキストも増えている。戦闘システムも、連携などが加わって別物なのだ。ここまで変わっていたら、普通はわかってないリメイクと言われてしまうだろう。だが、そうではない。これは紛れもなく『ロマサガ2』の面白さをそのまま引き出したものだし、それでいて新しく素晴らしい『サガ』なのだ。なぜそう思ったのか。
イベントなんてほとんどないユウヤンの街中や、アバロンの大学の中まで、小物1つ1つを作りこんだ街並みに生活感が溢れているから、ロマサガ2だと感じられるのだろうか。SFC時代とは違って、背景をいちいち作りこむのが面倒な3Dのゲームなのに、生活感を出すための工夫が随所に凝らされているのは単純に気合がなければできない。下手したら、誰も見ないような民家の中までしっかり作りこんでいる。皇帝を継承して領土を拡大していく壮大な歴史ゲームでありながらも、細かい部分に手を抜いていないので、庶民的な目線を同時にもてるのかもしれない。作品世界が生き生きとしている。
思い返せば、SFC時代の原作を遊んでいたときも1つ1つの街で起きるイベントに生き様を感じていたし、歴史を紡ぐ壮大な物語と市井の小さな世界との対比に、ロマンを感じていた部分もあるのかもしれない。往年のRPGが進化したらこうなるだろう、という絵を素直に作ってきているからこそ、大きく変わった見た目でも『ロマンシング サ・ガ2』だと感じられるのだろう。
理不尽さや遊びにくさを徹底的に排除。現代のユーザーに向けた親切さと原作への愛が重要
自分は自他ともに認める『サガ』シリーズの大ファンであるが、ハッキリ言うと近年のサガは「自分は好きだけどオススメしづらい」ものが多かった。
とくに『アンリミテッド サガ』以降のTRPGの要素を取り入れた作品は、従来のサガとも既存のRPGともまったく違うプレイサイクルやゲームスタイルで、普通のRPGとは異なる遊び方を要求される。それが好きで好きでたまらない自分のようなファンも多いのだが、マップを歩いて店で装備を整えてダンジョンを探索して……という従来のRPG的な遊び方はいっさい出来ない。
近年の『サガ スカーレット グレイス』や『サガ エメラルド ビヨンド』に至っては、店や回復手段なども限られ、洞窟や町の探索などもバッサリとカットされた独特なスタイルだ。普通のRPGを想像している人にオススメするには、あまりにも尖りすぎている。もちろん、それはそれで楽しいし好きだ。
河津秋敏氏が手掛ける『サガ』シリーズは、昔から尖ったRPGとして有名ではあるのだが、正確に書けばゲームボーイやスーパーファミコンの時代はそこまで尖っていない。『ロマンシングサガ』シリーズも(当時のRPGを基準に考えれば)割とオーソドックスなスタイルではあるし、説明していない部分があっても、ゲームの遊び方自体はわかりやすいほうだ。
では、なぜサガシリーズ=尖ったRPGのようなイメージがついているのだろうかと言えば、それはもう『アンリミテッド サガ』以降の印象が強いからではなかろうか。ひと口に『サガらしさ』などと言っても、そもそもが毎回サガ感が違うシリーズなのだ。ただ、あえて共通している「サガらしさ」を語るなら、それは予算や納期の問題で起きるシステムやシナリオの説明不足、そこから生じる独特の「理不尽さ」「遊びにくさ」。これらを「サガらしさ」と呼んでしまってはいないだろうか。だが、ちょっと待って欲しい。
そんなのは別にサガらしさではないのでは? 本当に、サガの良いところは遊びにくいところなのだろうか。『アンサガ』も『サガスカ』も『サガエメ』も、仮にもっと遊びやすくしたら魅力は失われてしまうのだろうか。
そうではない、と思う。
サガの良いところは、理不尽などではない。
サガの良いところは、単純にRPGとして面白いところだ。
RPGとして面白いから、我々は『ロマンシング サガ2』が好きだったのだ。
皇帝を継承して好きなパーティを作って、自分だけの歴史を作りながら七英雄と戦っていく。負けたときにもドラマがあるし、強敵を撃破したときにもその人だけのドラマがある。ピンチの時に技をひらめいた時にも、その瞬間にしかないドラマがある。RPGとして、何度も遊びたくなる面白さこそが魅力だし、理不尽な要素や説明不足な部分は、ないならないほうがいい。
リメイクされて理不尽や遊びにくさがなくなるなら、万々歳である。
だとするならば、説明不足による理不尽さや遊びにくさなんて「サガらしさ」と考えるべきではない。バッサリガッツリ切り捨てて、遊びやすくしてもサガはサガである。元の面白さを膨らませて、多くのユーザーが遊べるようにしたほうが、サガのファンだって当然喜ぶに決まっているのだ。そう、喜んでいる。こんなに遊びやすくて最高の『ロマサガ2』が出るなんて。
『リベサガ』の素晴らしいところは、それが出来ているところだ。
元々の『ロマサガ2』が持っていた、皇帝を継承して帝国を大きくしていく大河シミュレーションのような壮大さ、ひらめきで新たな技を覚える快感、好きなパーティを作り、どんどん時代に合わせて入れ替わっていく戦略性、
そうした要素をきっちりと残したうえで、遊びにくい部分にはガンガン手を入れている。死なない限り交代できなかったパーティは酒場でいつでも変更できるし、皇帝を殺さなくても生前退位で継承できる。
ファストトラベルは原作よりも親切だし、支配していない地域にも飛べて探索も楽になった。次にひらめく技も電球マークがついててわかりやすく、イベントのフラグなども確認できる。マスターレベルなども目に見えて至れり尽くせりだ。とにかく、シリーズのなかでもダントツに遊びやすい。そして何より単純にRPGとして面白い。原作の面白さが2倍、3倍に膨らんでいる。
遊びやすくなったうえに、原作の演出が軒並みパワーアップしている。レオンから皇帝を継承するシーンはイメージイラストを再現しているし、細かいイベントが3Dでうまく作られている。当時遊んでいたイメージを膨らませて再現してくるうえに、破壊していない。リメイクのバランスが絶妙なのだ。
カジュアルモードだから遊び応えがないわけではない。手ごわさを感じられるほど良い難易度
『アンリミテッド サガ』を発売日に買って掲示板で意見を交換しながら7周して天翔ける翼を聞き、『サガ スカーレットグレイス』を無印から遊び続け、『サガ エメラルド ビヨンド』を仕事という名目で発売前から10周したり、ノリノリで写真撮影しながら企画記事を書いたりしているくらい、公私ともにサガシリーズが好きではあるが、今回はあえて「カジュアルモード」で1周目を遊んだ。難易度オリジナルではなくカジュアルである。
なぜ、カジュアルモードなのかと言えば、それは公式が推していたからだ。
今回、やたらとカジュアルモードを推してサガだけど難しくないよと公式が推している。それなら、やはりカジュアルモードがどんな感じなのか確かめなくてはならない。カジュアルなロマサガは本当に面白いのだろうか?
シリーズファンなら難易度「オリジナル」だろうという声が上がりそうだし、自分もオリジナルで遊んだほうが楽しめそうだとは思ったのだが、個人的にカジュアルの遊びやすさがどれくらいなのか気になっていたので、カジュアルで遊んでみたところ、実に考えられた難易度だと感心してしまった。
RPGの低難易度は、やり過ぎなくらいやり過ぎなことが多い。ボタンを連打しているだけで勝ててしまったり、回復すらいらなくてゴリ押しで勝ててしまったり、流石に人を馬鹿にしているのではないかというほどの優しさは、逆に初心者を遠ざける。カジュアルであっても、手ごわい敵には苦戦している感じが欲しいし、戦っている感覚は欲しい。人間はわがままなのだ。
本作のカジュアルモードは、あくまでも簡単な難易度なのでバフデバフがなくても勝てる程度のバランスである。だが、回復だって使う必要があるし、無駄なレベル上げをしなくても良い代わりにサクサク進むとそこそこボスやラスボスで苦戦するようにできている。正確には苦戦している、回復を使いながら手ごわい敵を倒した、くらいの感覚である程度考えて戦っている感覚が得られるくらいのバランスだ。
これは、とても絶妙なバランス調整だと感じた。カジュアルではあるが、バカ向けではない。あくまでも、カジュアルにサクサクと楽しめる難易度に調整されているだけで、RPGとして成長させる喜びや強い技を覚えた喜び。強敵は強敵だと感じられる程度のダメージも受けるし、けれどあっさり全滅するようなことはほぼない。手加減されている感は(流石に強すぎる技を食らうとダメージの桁が少なく感じる時もあるが)薄く、ちゃんと遊んでいる感覚が得られるのである。初心者にカジュアルでいいよ、と言えるのだ。
たいていのRPGにおける低難易度は人をバカにしているレベルでボタンを連打していれば進む。それこそ育成の必要がまったくないほど単純だ。難易度が低いというよりも、もはやゲームになっていないレベルのイージーモードが多すぎて、遊びの楽しさ自体がなくなってしまう場合が多い。その点、本作のカジュアルモードは絶妙だ。あくまでもヌルいし、鍛えれば勝てる。回復もしっかりしていれば当然楽勝なのだが、適当に進めていると苦戦する。
だが、苦戦して勝てないではなく、苦戦するけどなんとか勝てるくらいの感覚をカジュアルモードのユーザーでも持てるくらいのダメージ調整なのだ。
オートパリィでしのいだり、回復を使ったり、RPGしている感覚が失われていない。これは、相当に考えられたバランス調整なのではないだろうか?
そうしてカジュアルな感覚で余裕をもって世界をめぐると、本当にこまかく作りこまれていることに気がつく。近づくだけで会話が出る町のモブキャラクターは、配置から生活感を感じられるようになっているし、街ごとに置いてあるものや荷物の積み方も異なる。まるで、本当に世界中を旅行しているようなSFC時代のRPGの感覚を、そのまま現代化できているのだ。
当たり前だけど、誰もが酷いリメイクを作りたいわけじゃない。原作を破壊しても、それが理想だと信じて作ってしまうのだろう。愛があればよいものができるわけではなく、愛がなくてもそこそこ良いものも生まれる。
だけど、年々酷い物を見続けて心をすり減らしてしまうくらい、ゲームライターとしてあまりにも多くの思い出を踏みにじるリメイクを見てきた。ゲーム業界は、多くの人間の思い出に残る作品を作る業界でありながら、その思い出を足蹴にしても気にしない罪深さに対して、あまりにも無頓着だ。
もちろん、数多のダメイクもあるが、良いリメイクもある。
それは、かつて作品が好きだった人たちが作り手になっただけではなく、何を切って何を残すのかを仕事人としてしっかり考えられる人が作り手に回っているのも大きいだろう。近年では、『リベサガ』のようにこなれたリメイクも増えたし、リマスターや移植で喜ばれるものも出てきている。
そうしたなかでも、本作は見た目を3Dでガラッと変え、システムなどにも手を入れた大幅なリメイクでありながら、原作の面白さを何倍にも膨らませた理想的なリメイクと言えるだろう。河津ゲーのクセがあるところを飲み込みやすくしたうえで、当時の面白さを当時の印象のまま、現代化できている。
ラスボスのフレーズが差し込まれる最高の七英雄戦アレンジや、ボス戦前にドット時代と同じポーズをとるこだわりなど、随所に愛と「わかってる感」があるのがいい。まったく違うシステムなので、このゲームのあとに昔の『ロマサガ2』リマスター版を遊んでも楽しめるし、ずっとリメイク版を遊んでいてもいいくらい、リメイクとしての存在意義がある。
これから生まれるリメイクが、すべて『ロマンシングサガ2 リベンジオブザセブン』くらい愛情と「わかってる」取捨選択によって作られたものであってほしいと願い、筆をおこう。これからサガシリーズを遊ぶ初心者には、間違いなく『ロマンシングサガ2 リベンジオブザセブン』をオススメする。
リメイクばかり望むのも失礼な話ではあるが、この開発チームは、ぜひ『ロマサガ3』のリメイクも作って欲しい。きっと良いリメイクになるだろう。