低レベル美味しんぼ。コンプラ縛られ劇団。ルールふわふわ戦争とカードバトル。俺の好きな『百英雄伝』ミニゲーム
『百英雄伝』のミニゲームはイカレている。
誤解がないように書いておくと、自分は『百英雄伝』が大好きだ。
かつての『幻想水滸伝』が持ち、失ってしまった味がちゃんとする。余計な調味料や生焼けの部分もあるが、下地にはきちんと味がある。ところどころ腐りかけだが、PC版はかなりトリミングされているので可食部は多い。
作る側も遊ぶ側も『幻想水滸伝』のお約束にとらわれ過ぎている節があり、『幻想水滸伝』の流れで見ると違和感のある部分も飲み込めるのだ。
諸国連合と帝国の戦争は、『幻想水滸伝III』の未来を思わせた。仮に、真の紋章に選ばれながらも力を行使せず、無名諸国とハルモニア神聖国の戦争を戦い抜いたら……と想像すると、腑に落ちる点は多い。幻水と同じ流れのようでいて、すぐに加入するライバルや、ずっといる指導者など、差別化を図った部分も「もし『幻想水滸伝』の続編だったら」とすると理解できる。
作り込みやボリュームの面でも『幻想水滸伝』であり、故に今は亡き村山吉隆氏への追悼を込めた補正値と、かつてのRPGを望んだ自分のように、最速でキックスターターに飛びついたほどのファンなら楽しめる部分も多い。
ゴタゴタもかなりあったので、素直に楽しめない人も多いかもしれないが、補正込みで手間やボリューム面での作り込みはわかるし、自分は楽しめた。
補正が入った場合こうなるが、それはそれとして完成度としては非常にガタガタであるし、自分はPC版で遊んだあと「キックスターターで届いたSwitch版」を遊んでみたが、ロード時間と店でのフリーズの差に驚いてしまった。
見たかった夢は見せてもらったし、値段分はちゃんと楽しめたので自分は本当に『百英雄伝』自体は大好きだ。だが、夢はいつか覚めるものでもある。
PS版ですら施設に入ったときなどに読み込むが、実はPC版だと画面右下のローディング表示が間に合わないくらい、読み込みの速度が劇的に違う。快適さがまったく異なっているので、家庭用ゲーム機とPC版で遊んだ人とで感想が180度異なるのではないかと心配である。マルチゆえの弊害だろう。
シナリオは『幻想水滸伝III』以降、人を殺す作品ではなく冒険ものに振り続けてきた村山氏の傾向からか、戦記物としての勢いはそがれている。冒険ものとしても『アライアンスアライブ』のほうが芯が通っているが、『幻想水滸伝III』以降、もし村山氏がシナリオを書き続けていたら「人と紋章との戦い」へシフトしていったはずだ。その流れとしては、確かに納得がいった。
臆病な愚王が、愚かなまま王権を丸投げする「いくらなんでも、そうはならんやろ」みたいな展開もあるが、描きたかったことはわからなくもない。これまでの『幻想水滸伝』にはなかった展開でもあり、差別化として、いやいくらなんでもそうはならんやろ! ユンマ、成長しないのかよ!
物語が終わったら、間違いなく革命が起きて処刑される筆頭だと思う。兵士たちが戦場で命を散らしたあと「みんな無事でよかった!」とのたまう辺りは、このゲームのシナリオで一番ヤバいところかもしれない。
若さゆえの情熱がなく、戦争の悲惨さが見えない守りに入ったシナリオなので、もしも村山氏がもっと若く、そのまま無名諸国とハルモニアの戦いとして描いていたら、もっと違っていたのかとも想像してしまう。それでも最後まで楽しめる地力があったのが悲しい。生きていれば、今回の作品をベースに、より戦争を描いたIIを書いてくれたかもしれない。そう思っている。
だけど、人は若返らないし、生き返らない。
チャンスは、生きている者にしか訪れないのだ。
戦争の描写に関しては、最後まで「そうは! ならん! やろ!」とツッコミを入れつつも、ペリエール周りの話などはかつての味がしっかりあった。
仲間を集めきれない展開のほうが、自分はかつての作品らしさを感じたくらいだ。どうにも現代的な配慮をし過ぎているように思える。あったこともない前作主人公みたいな立ち回りの妹も、もうちょっとこう……ね……! 『幻想水滸伝V』のリオンが後ろをついてこなくていつもどこかに消えてるような感覚のキャラで、スタッフからの愛され方を感じるが、こっちはどんな人物なのかよくわからない。この娘、心情が全然描写されてないよね?
それでも、仲間集めや本拠地が拡大する高揚感。王道ながら、戦争に勝って原初の魔導レンズ(真の紋章)を仲間の力で否定する展開。仲間集めによって変化する悲劇。そうした『幻想水滸伝』から摂取したかった栄養は取れたし、最後まで遊びきれるポテンシャルはあった。やはり、自分は好きだ。感想としては、なんだかんだ言っても面白いRPGだったと思う。
ツッコミを入れつつも、求めていた精神的続編要素は満たせている。それはそれとしてヘン。村山さんが描きたかったことも納得できたけど、それはそれとしてヘン。良くできてるところとヘンなところが混ざり合っている。
キックスターターにお金を払っているので、流石に少しは言いたい。
「サントラのリワード、いつ来るんですか?」
『百英雄伝』のミニゲームはイカれている
自分は、RPGにミニゲームが入るのは嫌いではない。よく言われる『ファイナルファンタジーVII リバース』のミニゲームも、べつにトロコンなんてしないから気にはならなかった。質にムラがあるとは思うが。
『百英雄伝』の場合は、仲間集めというゲームの進行上で避けて通れないものがあり、なぜかベーゴマと料理勝負に至っては、ミニゲームの(ほぼ)完全なクリアを求められる。原作……という言い方はよくないが、『幻想水滸伝』シリーズの場合は、ミニゲームの触りだけ遊んで加入するので、余裕をもって遊べたものが、強制になるので印象が悪くなってしまうのだろう。
あと、やたら難しかったり、ゲーム終盤で強いベーゴマ拾ったほうが早かったり、バランスがおかしいのも気になるところだ。しかし、下手に修正されるとバランスが悪いほうに崩れそうな気もするので、放置で良いと思う。仲間の加入タイミングさえ早めれば、おそらく欠点は気にならないはずだ。
それはそれとして、『百英雄伝』のミニゲームはイカれている。
まず、イカレているのがカードゲームである。
ぱっと見で、全然ルールがわからないし、カードを組み合わせたコンボなども存在するのだが、基本的には強い補助効果があって数字が大きいカードを連番で出せばいいだけである。同色連番、もしくは同色同数が望ましい。ない場合は、別の色が入ると補正がかかるカードを出していこう。
画面の中央にある王冠の数で、勝利時のポイントに補正がかかる。王冠3つのところに8か9を置くのが基本だ。カードバトルは勝利しなくても仲間が加入するので、トロコン以外は趣味でやればいいだけだから安心である。
それを知ったのは、戦える相手の9割くらいを倒してカードバトルを終えてから、攻略サイトをのぞいた時だったのだが……。
これはゲーム内のヒントが極めて悪い。「カードの道の終着点でお主を待っているようじゃ」と言われるから、てっきり対戦しないといけないと思って仲間たちを打ちのめしていた。加入の条件は勝利数ではなく、店で買えるカードの種類を120種類集めることなんだとさ。なるほど。
マジ、ふざけんなよバババ(占いでヒントをくれる人)!
ぶっちゃけ、定石さえわかればあとは運ゲーでしかなく、このカードゲームはあまり奥が深くない。強いカードは強く、強いデッキは強い。身もふたもなく、自分と同じデッキ(リーン)で初めて互角に戦える。負ける要素がほぼないので、ずっとプレイしているとだんだん修行僧のような気持ちになるだろう。とはいえ、息抜きとして遊ぶなら仲間全員のボイスもあるし、楽しめると思う。決して真剣に続けて遊んではいけない。カードは仕事だ。
だが、仲間集めのワナさえなければ割と好きなミニゲームである。
もう二度とプレイしないとは思うが、遊んでいる間は楽しかった……楽しかった? 楽しかった??? 楽しかった!??!??! 楽しい!!!!
『百英雄伝』のミニゲームはマジでイカれている
百英雄伝嫌いなミニゲーム選手権の1位を争いそうなのが、ベーゴマバトルだ。このミニゲームは、町にいるベーゴマ好きと戦い、イベントの発生地点で四天王を倒し、ラストに待つボスを倒すことで、やっと仲間のリードが加入する。ラスボス後は隠しボスや裏ボスもいるが、ラスダンに配置するな。
空気を読め!
リードは、出会ってもすぐに去っていくし、四天王戦からは毎回主人公に先を越されては、こちらが打ち負かした相手に連戦を仕掛けて話を聞かない。やっていることがハイエナじみていて、あまりにもライバル感がないキャラだ。さっさと加入して欲しいので会うたびに殺意を抱くが、これはミニゲームを最後までやらなければならない仕様が悪い。リードは悪くない。
108星加入特典を自分で選べるなら、俺はリードを生贄にするくらいには加入時に最悪の印象を持ってしまったが、リードは悪くない。悪くない。
ベーゴマ自体は、息抜きとして用意されたミニゲームとしてなら楽しめるものだと思う。数値や補正もあるが、結局は強いベーゴマに弱いベーゴマは勝てない。最適解は終盤まで適当にやって放置すること。激つよベーゴマが手に入るダンジョン「大岩亀ヴィルシュヌ」が解禁されたら、博士をサポートに入れて(入れないと低確率過ぎてマジでドロップしない)モンスターを倒し、金色の強いベーゴマを入手してわからせるのがベストだ。
ゲームバランスというよりも、物語の進行度との兼ね合いがボロボロ。
ポケモンみたいなデザインの四天王たちのほうが、1回しか戦わないので印象が良く、なんでこっちが仲間にならないのか疑問を抱くレベルである。
ところで、カードバトルのグレンと、ベーゴマのリードのキャラデザインって逆の方がしっくりこないか? どう見てもカードバトル顔じゃないか?
だが、リードが早く仲間にさえなれば割と好きな……す、すきな、ミニゲームだと思うような思わなくもないような。周回しても、もう二度とプレイしないミニゲームなのは間違いないが、遊んでいる間は楽しか、楽し、たのしめ、たの、たたの、たのし、たのたのたのたのたのたたたのたたたた
『百英雄伝』のミニゲームはテストプレイしてないと思うくらいマジでイカれている
ミニゲームのなかで、もっとも力が入っているのが「劇場」だ。『幻想水滸伝III』でもあった人気のミニゲームだが、なんと全員ボイス付きで配役も入れ替えられる。台本も複数あるという気合の入れようである。
そこに力を入れるより、ほかに力を入れるべきと言われそうなくらい、尋常じゃない量のボイスと手間がかかっている。こういう無茶は嫌いじゃない。
昨今の事情に配慮しているのか、支配人のクラークはコメントが優しい。演者にも気を使っている。Sランク報酬もどうでもいいものばかりで、バランスもそこまで厳しくない。好きな配役で適当な劇を楽しむコンテンツとなっている。このゲームで、もっともマトモなミニゲームなのは間違いない。
褒めて終わらせたいところだが、台本の入手が「確率で道具屋に並ぶ」というものなのが困る。この抽選する仕様は、本当に必要だったのだろうか。
あと、2周目で仲間を引き継ぐと最初の台本が入手済み扱いで手に入らず、町でずっと悩み続けているクラークがいるのは面白かった(本来だと引継ぎした場合でも、条件を満たすと加入イベントが起きる)。
ミニゲームの中で、一番良くできているのは間違いなく劇場だろう。
『百英雄伝』のミニゲームはテストプレイしてないし、推敲もしてないんじゃないかと思うくらいマジでイカれている
このゲームにおいて、イカれたミニゲームの代表格が「料理勝負」である。『幻想水滸伝II』の人気ミニゲームだった料理勝負を下地に、まともな話をイカレた内容に差し替え、ゲームバランスをくるわせたものが本作だ。
イカレすぎて奇跡のバランスで面白さが成立している。
先に書いておくと、俺はこのミニゲームが一番好きだ。
まず、話がイカれているのが良い。料理漫画のように次々と襲ってくる刺客を料理で退けたり、勝手にゲテモノ料理を出して自滅したり、勝手に殺されて死体をさらしたりする。当たり前のように人が死ぬし、なんなら味方の料理人が勝負に勝ったあとライバルを撲殺する。味方が殺しちゃうの!?
人殺しが作った料理はうめえな!
血の味がする卵焼きは最高だぜ!!!
おっと、ポーチドエッグに血が入っちまったか!
自分たちで殺しておいて、ライバルが遺言を言い切れずにこと切れたと思えば、すかさず「ダメだ、もう死んでいる……」と言い放つのも切れ味が鋭い。それは自殺じゃないと成り立たないだろ。厨房で殺人事件を起こすな。
ハイ・ヨーだってドン引きするぞ。
全体的に推敲してないような展開が多いゲームではあるが、料理勝負の推敲されないままお出しされたテキストは、もうそういう味になっている。幻想推敲伝。狙ってる部分は普通の料理漫画より浅い描写なのだが、素で気がついてない倫理観の欠けた展開が、料理勝負に激辛スパイスを加えた。
ゲームバランスは公式でもアナウンスされているように、現状だと全体的にバグっている。好物以外には低得点をつけるので0点が連発され、好物でも0点が頻発し、同じ料理を出しても状況によって0点になったりする。
まあ、人が死んでる店だし。人が死んでた場所の上で、人殺しが作る料理を審査している時点で、味なんてわからないだろう。殺されそうだし。
審査員全員が偏食家で好みがバラバラ、かつ好みでも味オンチになっているので、敵も味方も低得点の争いがよく起こる。死ぬほど低レベルな料理対決が繰り広げられるので、見ていて飽きない。そう思いきや、たまにバグって満点が出たりする。どうやら、料理ごとにいろいろバグっているようだ。
安定して勝てるのは、好みに差が出にくい卵料理。卵料理で組み立てれば負けることはほぼない。下手に好物を出そうとすると、マズいと言われて涙目になってしまうだろう。素人vs素人の料理対決と化している。面白すぎ。
この料理勝負を最終戦直前まで進行させないと加入しない仲間がいるので、面倒なミニゲームの筆頭でもあるのだが……。奇跡的な面白さがあり、自分は一番好きなミニゲームだ。ただ、バランス調整が心配でもある。余計なことをして、ただ難しいだけのゲームになりかねない予感もあるので。
百、ミ、イ
『幻想水滸伝』から失われて久しい、戦争のミニゲームもある。フレーバーみたいなもので、勝てている理由もわかりにくくあまり機能はしていない。
していないが、戦争ミニゲームがあるだけでも自分はうれしい。
これが、ほかのJRPGと大きく違う部分だったからだ。だから文句を言うことはないが、それにしても未だにバランスがよくわからない。何をどう弄ったら、どう影響して3すくみなどが成立しているのか。モードも謎である。
ふわっとした配置とふわっとした感覚で勝ててしまうので、本当はもっとやり込んだら面白さが見つかるかもしれない。ふわっとしている。
百、ミ
砂漠で遊べるシャークシップレースは、動かしにくい船をうまく操作してレースするタイプのミニゲームだ。難易度は、本来そこまで高くない。
本来と書いたのは、(おそらく)バグっているからである。
このレースは、スティックで遊ぶと操作がおかしくなりやすい。時々反転するときがあるのだ。なぜか、十字キーで遊ぶと普通に操作できるので、アナログスティックで操作がおかしくなるのは、仕様ではないと思われる。
最大の謎は、船に乗って移動するマップがあることだ。砂漠は、初見時だとイベントで船に乗り、自動的に目的地へつく。だが、実は船を操作して移動するマップも用意されている。すでに訪れてファストトラベルできる場所以外には、とくに行く意味がない釣り場しか用意されてない。
豪快なマップの無駄遣いだが、もしかすると最初は自分で船を操作して次の街へ行く。そういうイベントだったのかもしれない。なぜ、スキップした?
百
『エッグフットレース』は、『幻想水滸伝III』にあった「ゆかいな牧場」というレースゲームを思わせるミニゲームだ。加入条件がやや面倒な程度で、やらなくてもよいミニゲームという、このゲームとは思えない内容である。
トロコン以外では、やってもやらなくてもいいミニゲームがたくさんあるのが、かつてのシリーズにあった本拠地の良さでもある。そうした意味では必要なものだろう。
やらなくていいものまで、作り込んでいるのがウリでもある。
極めようとすると、これもしっかり作られているし、そうした部分に力を入れているのは、とても懐かしい。強制感はなく、悪い印象はない。面白いとも言えないが、つまらないわけではなくて、ただただ影が薄い。
イカレているが愛している
こうしてみると、1つ1つのミニゲームはボリュームも多くて作り込んでいるし、寄り道の要素としても多彩だ。良い意味でイカれているものと、ただただイカれているだけのものが混ざるが、強制感さえなくなれば素直に楽しめそうなものも多い。何より、ここまで本拠街の要素がちゃんと用意されているのは、やはり待ち望んでいたものではあるのだ。
だから、俺はこのイカれミニゲーム群が好きである。
駄目なところも含めて、良い意味での懐かしさもあったのだから。
夢は覚めるときがくる。でも、悪い夢ではなかった。あの時遊びたかった夢の続きは、ちょっと歪なところもあるけどきちんと見られた。敬意と尊敬をもって故人に感謝を捧げ、面白かったという言葉を送って終わりにしよう。
ゲーム代にあてます