ディス、陰口(9月エッセイ①)
大学生の時、フリースタイルバトルの動画を見ているという話をした。そしたら、サークルの女の子に、「えー、あれって人の悪口言うやつでしょ。私そういうの嫌。」と言われた。まぁたしかに、相手をディスるのはバトルの要素だから、間違ってはいないし、それが受けつけ難いという気持ちは理解できる。
だけど、その子がサークルの先輩に対して、テクニカルな悪口をよく言っていることを僕は知っている。陰で悪口を言っていることをその場で指摘するわけにもいかないので、苦笑いでやり過ごした。
裏で悪口を言うよりも、表で悪口を言っているフリースタイルバトルは偉いという話をしたいわけではない。表だろうが、裏だろうが両方悪口であることに変わりないはずなのに、他人同士が悪口を言うことには拒否反応を示すところが気になった。
フリースタイルバトルで競っているところは、相手をいかにディスるかだけではないということを伝える以前に、彼女の反応が引っかかる。
大人になるにつれてなのか、人となりを知れば知るほどというのか、同じコミュニティにいると聞こえてくる陰口の数が増える。陰口が増える一方で、本人の抱えるイライラが減じるようなことをほとんど聞かない。いつも同じ陰口を叩いている人を見ると、もはや話のネタにするために、わざと放置しているのかとさえ思う。
この人は何かを良くしようという気概が一切無いのかもしれない。
ディスという行為には、相手を馬鹿にしたり、見下したりするニュアンスが強くある。でも、その一部分には何かをより良いものにしていくために、ダサいものや間違っているものを否定するという側面があるように思う。
勤務態度の悪い社員がいるとして、陰口を言うだけの上司は嫌だ。直接悪口を言うのもそれはそれでパワハラになるけれど、裏で言ってるよりは直接言ってくれる方が幾分かマシだ。間違っていたら、言い返せるわけだし。
もちろん良識ある言葉で指導してくれたら一番良い。本来、陰口もディスも別に必要ないはずだ。伝えたいことを適切な言葉で伝えられたら良い。「えー、あれって人の悪口言うやつでしょ。」と言われたら、「たしかに、君が裏でやってるのと似てるね」と答えてしまわないように、できるだけ適切な言葉を探す。
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