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ガタンゴトン(10月エッセイ②)
先日、ライブの遠征をするために始発で羽田へ向かった。まだ暗く人通りの少ない商店街をゆっくりと歩き、来週閉店する駅前の本屋を裏手から写真に納めた。少し感傷に浸りながら改札を抜けると、オール明けの大学生が10人くらいがやがやと溜まっていた。
始発の電車はすでにホームに到着していて、出発にはまだ5分ほどあった。乗換駅まで仮眠を取りたかったので、このままオール明けの集団がもうひと盛り上がりして、始発を1本見送ってくれたら、と淡い期待を持ちながら目を閉じた。
それは所詮淡い期待だった。電車の発車音が鳴り始めると同時くらいに、「急いで、早く!」と騒ぎながら、ガタンガタンと音を立てて、エスカレーターを降りてくる集団が近づいてきた。目を開けると、男女4人組が僕の乗っている車両に駆け込んできた。
電車は動きだし、乗ってきた4人は疲れを見せずに、大きめの声でしゃべり続けている。イヤホンで音量を遮ることができても、わざわざ発車ギリギリに乗り込んできたことに対してのイライラが頭の中から消えてくれない。乗るとしても余裕あっただろ、ゆっくり静かに乗って来いよ、もう乗ってこないかなってちょっと期待させるなよ、独り言を口には出さずに思い続けている。
あと10何駅ずっとこのままかと思っていると、一番よく喋っていた男の子がひと駅で降りて行った。そのあとすぐにもう1人降りた。残り2人になった途端、片方の女の子は大股を開いて爆睡し、男の子は青白い顔でスマホを睨みつけるような眼差しで見ていた。
もしかして最初に降りた男の子は家が一番近いから最後の元気を振り絞って、大きな声を出していたのだろうか。まだ元気が有り余っているのかと思ったけど、本当は4人とも限界で見栄を張っていたのだろうか。もっと言えば、改札口にいた全員が本当はとっとと帰りたいと思っていたら。
どうでも良すぎることに考えを巡らしていたら、あっという間に羽田に着いた。周りのせいにしたけど、うるさいのは自分の心の声だ。
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