【自転車とカレーが生むイノベーション 「シコーバイシクルサービス×スパイスカレー ウチマサラ」】 SURUGA Cycle Journal Vol.62
こんにちは、スルガ銀行サイクリングプロジェクトの深田と申します。
今回の記事は、自転車界隈にいる私の友人、石井美穂さん(以下、「ちゅなどん」と呼びます)が起点となっているため、私目線の文章で書かせていただきます。どうぞ最後までお付き合いください。
始まりはいつも突然
SNSで流れてきたBiCYCLE CLUB(バイシクルクラブ)さんのニュースが始まりでした。
~自転車乗りが相談できるカレーショップ「スパイスカレー ウチマサラ」横浜にオープン~
「ほほう、いろいろなことを考える人がいるなあ」とニュースを開くと、冒頭「各自転車メディアで活動しているちゅなどん(石井美穂)さんが2020年8月1日、横浜市南区井土ヶ谷にスパイスカレーウチマサラをオープンする」と。「へ?ちゅなどん、カレー?は?」と、かなりの驚きとともに、続けてちゅなどんのニュースリリースの内容を拝見(お、おう、ニュースリリースあるんかい)。
「わたしが美味しいと思うカレーを提供~」「よってカレーも副菜も日替わりで~」「内容は当日のSNSで~」。こ、これは、(それらしく書いてあるけど、行き当たりばったりってことじゃん!)と心の中でツッコみながら読み進めます。「ライフスタイル系サイクルショップ シコーバイシクルサービスに併設しております」と。おう、これは新しい組み合わせ、と思うと同時に「ライフスタイル系サイクルショップ」という初耳なカテゴリーがしばらく脳内にこだましていました。
そもそも、個人がカレーショップをオープンするという話が自転車メディアに取り上げられることに驚き、そしてウケました。あらためてちゅなどんのインフルエンサーぶりに感心するとともに、BiCYCLE CLUBさんの自転車メディアとしての粋な姿勢に賛辞を送りたくなりました。何はともあれ、私はこのニュースを読んで気持ちがほっこりし、元気になりました。インフルエンサーとメディアが、世の中で正しく機能した例だと思います。
さて、再びニュースに戻ると、締めの一文が「ちゅなどんに自転車相談もできる。『これから自転車を始めたいけれど、いろいろあって何を選べば幸せになれるのかがわからない』という方にはきっと楽しんでいただけますよ」って。これってエンターテイメント業界の締めですよね。
▲オープン告知のフライヤー
聞きたいことがいっぱい
ちゅなどんとは仕事を通しての友人です。2015年から当社のサイクルステーションで開催しているライドイベントにスタッフとして参画していただき、ときには一緒に運営をしてもらったり、ときには当社で開催したセミナーにスピーカーとして登壇してもらったり、WEB記事のナビゲーターとして登場してもらったりと、2017年までの3年間、多方面で助けてもらっていました。特筆すべきはそのトーク力で、ちゅなどんはときに親友であり、母のようでもあり、落語家のようでもありました。まさにイリュージョントークと言ってもいいでしょう。すべての仕事は、ちゅなどんの多彩な才能とサイクリストとしての経験値に裏付けされたもので、ちゅなどんにしかできない役割を見事に果たしていました。
そして2年半後の今、カレーショップをオープンするというニュースを見て驚いたところです。
2020年は世界中の誰もが例外なく新型コロナウイルス感染症による影響を受けた年でした。生活様式が変わり、常識が変わり、価値観が変わりました。人の流れが抑制され、ビジネスにおいては多くの業種が打撃を受けました。今振り返ってみると、私自身も内向きなマインドになっていたなと思います。ウチマサラのニュースを見て、なぜこの時期に始めるのか、なぜカレーなのか、勝算は、ライフスタイル系サイクルショップとは?などなど、疑問がいくつも浮かんできて、ちゅなどんの口から答えを聞きたくてアポイントを取りました。そしてぜひ、シコーバイシクルサービスのオーナー・佐々木氏ともお会いしたいとお願いしました。
ライフスタイル系サイクルショップ シコーバイシクルサービスへ
ウチマサラはシコーバイシクルサービスのイン・ショップとしてオープンしました。
このシコーバイシクルサービスとは一体どんな自転車屋さんなのか。訪問日までの数日間、私は予習のためTwitterをチェックしていきました。「今月の支払い金額しびれるわ~」「支払いの現金がいるのでセール始めます」などの飾らないつぶやきが微笑ましく、こちらの興味はますます高まり、緊張感は消え去ります。また、「一定額の月会費をいただいて自転車の整備をするのってどうかな」と、今までの自転車業界にはないビジネスアイディアがつぶやかれていたりもしました。
そして8月、酷暑の中、横浜市南区にあるシコーバイシクルサービスにおじゃましました。オーナーの佐々木さんは外出中で、ちゅなどんが元気よく迎えてくれました。
▲いつも変わらず元気なちゅなどん
ほどなく佐々木さんが戻り、店内をぐるっと見せてもらいました。
▲奥行のある店内、いちばん奥はカレーを食べるスペース
▲天井が高くかなり広い店内
▲楽しげな自転車が並びます
▲ほっこり
▲温かみのある店内
▲欲しくなるTシャツ
▲ウチマサラ厨房&カウンター その1
▲ウチマサラ厨房&カウンター その2
▲店内奥の食事スペース
▲ちゅなどん作のサイクルキャップも販売中
▲夏らしい(おじゃましたのは夏)素材とデザインが並びます
お客さんの望みを叶えたい
名刺に書かれた佐々木さんのお名前が「佐々木 至高(しこう)」さん。あ、なるほど店名はお名前からきていたんですね。それにしてもかなりカッコいいお名前です。
▲佐々木さん 言葉を選びながらしっかり答えてくれました
佐々木さんがこちらで開業したのは2013年5月。知り合いの不動産屋さんから声がかかりやってみることに。それまで多店舗展開の自転車店に勤めていたこともある佐々木さんですが、自分のやりたいことができる環境を求めての開業でした。物件は元からキッチン付きだったため、カフェを営む方も入居して、カフェ併設の自転車屋さんとして営業していました。
店内に並んでいる自転車を見ると、イケイケのカーボンロードは無く、MTBがメインのようだけど、中にはカテゴリーがはっきりしない自転車もあります。「グラベルクロスバイクかご付き」みたいな。私が今まで見てきた自転車屋さんのどれとも合致しないスタイルです。佐々木さんご自身はMTBをメインに時々シクロクロスにも乗るというスタイル。10~2月の秋冬の間はほぼ毎日、早朝に地元のトレイルに行くそうです。では、店のコンセプトは?
佐々木さん曰く、「コンセプトかどうかはわかりませんが、自転車にちゃんと乗ってもらいたくて街の自転車屋をやっています。『近くに修理してくれる自転車屋がない。修理したいけど自転車屋に持っていくのは面倒。持っていったら修理を断られた。通販で買った自転車の点検どうしよう。』など、だんだん面倒くさくなってしまいには乗られなくなる自転車たちがいっぱいあります。そんな自転車を一台でも多く修理して使ってほしいと思っています」と。実際、インタビュー中もママチャリに乗った近所のおじさんが修理に来て、佐々木さんと楽しそうに話しているのを見て納得しました。一方で、お客さんの細かなオーダーに応えるため手組ホイールを組んでいる姿を見ると、お客さんの層が広いのは容易に想像できます。
「今考えているのは『お客さんの望みを叶えたい』ということだけですね」という佐々木さん。土日には、作業中の佐々木さんをお客さんが取り囲んで待っている状況もあるそうで、食事すらできない日も多いようです。お客さんの話しに耳を傾ける姿勢と、飾らない話し方がファンを増やしているのだと思います。この10年、ネットの進化であらゆる産業に変革が起こりました。小売業では店のショールーム化が進み、C to Cにおける二次流通も活発になりました。自転車業界も例外ではありません。だからこそ対極にある、「お客さんに向き合う、寄り添う」姿勢が、今の世の中でもお客さんを引き寄せているのかもしれません。
ウチマサラ誕生のきっかけは
ちゅなどん自身に飲食店で働いた経験はなく、カレーは自分用に自宅で作るのみだったそうです。きっかけは2019年夏の終わり、知人のカレー研究家と共催したイベント「間借りカレー」でした。佐々木さんとちゅなどんは元々知り合いだったため、カフェが退店したシコーバイシクルサービスでの限定出店です。ただただ疲れたという最初の「間借りカレー」の感想は、後からじわじわと湧いてくる「楽しかった」気持ちに塗り替えられていき、その後ポップアップやイベント出店を幾度か重ね、疲れを楽しさが上回るようになりました。そして再び、シコーバイシクルサービスで週末限定の常設店舗として復活することになったのです。
▲お互いをリスペクトするおふたり
復活オープンの1か月前は毎日カレーを作っていたと話すちゅなどん。作った種類は、作った回数分だと笑っていました。試作品の画像を見せてもらいましたが、料理をしない私には試作品ではなく「完成品」に見えます。
▲試作カレーたち
▲試作カレーたち
▲試作ビリヤニ
人生、前に進むコツ
しかし、飲食店で働いた経験のない人が、いきなりひとりでカレーショップを始めるというのは、かなりの勇気と思い切りが必要だと思います。言葉にすると陳腐になりますが、そんなに簡単なことじゃないとも思います。オープンから5か月経った今、ちゅなどんの言葉を借りると「やってみなきゃわからないことをやってみた。英語がわからないまま、ちょっとアメリカに引っ越してくるわ、みたいなノリで無謀無茶もいいところ。でもチャレンジってそういう感覚でやれるといいですね。気負うものがなくてストレスフリーだ。笑い飛ばしていこう、みたいな」
このバイタリティ。あらためて、なんて自由でしなやかな生き方なのかと驚きます。しかもコロナ禍でのスタート。
ちゅなどん曰く、「8月に始まったウチマサラは、Beforeコロナの世界を知らずに産声を上げたことだけが幸いだったのかもしれません。比較の対象がないおかげでコロナの存在を無視して、ただやれることだけをやる、というピュアさを保てたことが世界的な悲観を遠ざけ、なんだかんだ健全な気持ちで取り組めた理由のひとつだろうと」
話していて、プラス思考という名の激流に飲み込まれてしまいそうになりました。
さらに、「ぐったりと疲れている時でも、玉ねぎを炒め始めると楽しくて、気がついたら超ハイ!でノリノリになっています。そんな自分に気づくとき、あぁ、このカレーは食べたら元気になるだろうなぁ、と素直に思えるので、これはひとつ、私がやるべきことなのだろうと肯定する理由です」という。
▲カレーは日々進化中とのことです
お客さんの望みを叶えたい佐々木さんと、カレーを食べた人に元気を届けたいちゅなどん。おふたりの話を聞いていると、世の中の閉塞感はどこ吹く風で、日々の大変さもすべて含めて楽しんで仕事をしているなと感じました。いえ、もしかしたら、すでに仕事とも感じていないのかもしれません。おそらく、没入感のある濃密な時間を過ごしているのだと思います。
そして気になる相乗効果は
ひとつ屋根の下で営業する狙いをおふたりにお聞きすると、こちらが拍子抜けするほど力みがないことに驚きます。それどころか、お互いを気遣い、相手が忙しいときに助けになれていないことに歯痒さを感じていました。おふたりを見ていて、相手に求めずに寄り添う姿勢こそ、相乗効果を生み出す近道なのかなと思いました。してくれないことをお互いに責め合ってもうまくいくはずはありません。おふたりにはこのままのスタンスでやり続けて欲しいなと思いました。
▲お店の前で
これまで人の幸せは、モノを所有する豊かさで考えられてきましたが、コロナ禍の今、経済最優先から、命、人権、自由、教育といったいろいろな軸の重要性が再認識されました。そして、大きな将来のミッションやビジョンだけでなく、その人の「楽しい」「うれしい」「面白い」といった感覚的なバリューが人をつなぐ原動力になっています。おふたりを見て、まさにそう思いました。
▲オリジナルTシャツを手に
最後に。
シコーバイシクルサービスとウチマサラが近所にある人は幸せだと思います。
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