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マンガ:『ベルリンうわの空:ウンターグルンド』、一人ひとりのちがったひととして描くこと。

先週金曜の夕方、週最後の仕事である打ち合わせが終わり、先方を送り出し、ふぅ…とトイレに行ったら、ズボンのチャックが外れた。個室でズボン脱ぎ、なおそうとしてもなおらず。持ち合わせのクリップで留めても不自然。諦めて、傾聴するアナウンサーみたいにずっと股間の前で手を組んでゆっくり歩いて帰った。とほほ。さて、本日はマンガ。

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■ 『ベルリンうわの空 ウンターグルンド』
作 者 香山 哲
発行所 イースト・プレス
発 行 2020年
状 態 通しで1回読んだ

北丸雄二、小袋成彬、近藤聡乃、佐久間由美子、ブレイディみかこ、町山智浩、渡辺由佳里……などなど、海外在住(みんな英語圏だけど)のライター、ジャーナリスト、クリエイターによる情報発信を楽しく読んでいる。彼らの情報は、いま自分が生活している場所とは別の生活や価値観があることを教えてくれて、ここに足りないところはいいなあと思ったり、逆に自分が恵まれているところを再確認する。

本書の作者も、ドイツ・ベルリンに移住したクリエイター。マンガのほかに、イラストやゲームの制作、プログラミングなど、幅広く活動しているようだ。本書は、自身のベルリンでの経験をもとに、一部エッセイ、一部フィクションというかたちで描かれている。

読むとベルリンで暮らしてみたくなる。街中に広大な公園がいくつもあったり、まだ使えるけど要らなくなったものをシェアするボックスがいたるところにあったり、見知らぬ人同士でもナチュラルに助け合っていたり。お金をかけない暮らし方も、ひとつのライフスタイルとして認められていていいなあとおもう。東京の都心部だと、やっぱり家賃が高いし、コミュニティづくりも難しいし……こういう暮らし方はちょっと想像できない。

前作を読んだとき、マンガという媒体で、こんなポップに、多様性の大切さをメッセージとしてはっきりあらわしていることに驚いた記憶がある。いま、そういった書き手が出てきて、それを読む読者がいるのだ。

こんなポップに、というところに新鮮さがあった。人種の多様性、持続可能性、公共性、本作に関係するテーマはややもすると、マジメすぎる話になってしまう。でも本作の場合、ロバート・クラムやスージィ甘金の系譜に連なる画風で、ストリートをいきいきと描いている。その地べたの視点がストリートワイズで、ポップなのだ。

また、登場キャラクターをそれぞれ、犬っぽいやつだったり、花っぽいやつだったり、猫っぽいやつだったり、バケツ被ってたりと、別のかたちで描いてるのがイイ。お話にからまない通行人もそう描いているから徹底している。人種、性別、職業そういった属性で人をついついカテゴライズしてみてしまいがちだけど、それぞれ別の個性をもっている。そんな作者の考えがマンガでも貫かれている。

しかし、前巻はベルリン一人暮らし日記という感じだったが、この巻では、けっこうベルリンに根を張ってる。これからどんなことをやるんだろう。

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