スロウ

『I≒YOU』 短編小説のようなものを書いています。 物哀しい表現の作品が多いですが少しでも読んでいただけたら嬉しいです。

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最近の記事

【解説エッセイ/光明与えるフォロワー様】消えたくなったら会いにいく

こんにちは。 私は1ヶ月前から趣味の一環として短編やショートショートを書き始め、他のクリエイター様の作品も拝読させていただいています。その中で偶然読んだらとんでもなく刺激を受けたエッセイと出会えましたので紹介したく思います。 プロのシナリオライターとして活躍されている梅芳さん。 私自身まったく考えた事もなかった内容をわかりやすく丁寧に、目線を合わせて説明してくださりました。文章がお金になるなんて微塵も想像していなかった。1つの選択肢をハウツーではなく『悪知恵』と仰る軽妙さ

    • あの日に還りたい【短編小説】

       急にみんな、互いの言葉がわからなくなった日。ほら、世界が終わる寸前の夜だったね。  これまで普通に話していたのに一人一人の言語が変わってしまう、理解できなくなる、なんて変なウイルスが流行ってしまったもんだ。  伝わらない苛立ちは爆弾のように拡散して人は争い、遂にはしてはいけない事に手を出した。  あいにく僕は鉄とアルミとゴムで出来ているからへっちゃらだったけど。  暴徒によってあちらこちらで火が上がって、自分以外は人じゃないみたいに殴り合って。仮装もしていないのにハロウ

      • 【解説エッセイ】冬と浮遊

        こんにちは。 私に限った事ではないと思うのですが、自分が書いた創作系って完成後しばらく経つと本当に自分が作ったのか?ってなりませんか。 私はプロットとかあまり考えず、おぼろげに浮かんだストーリーを書きながら形にしていくのですが、出来上がるのはいつも自分じゃない誰かが作った作品のような気になります。 おかげで、読者目線で読み直す事もできるし、自身の作品を自身で考察するというわけわかんない楽しみ方ができるんですけどね。 途中「これ面白い?」と疑問を抱いても必ず最後まで書き終

        • 消えたくなったら会いにいく【短編小説】

           犬がいた。遠目から見た時、置物だと思った。玄関ドアの前で鎮座する陶器製の犬。  誰がこんなイタズラをしたのだと苛立ちを覚えながら近づいたら首がくるっとこちらに向いた。  ゴールデンレトリバーを思わせる艶めいた金色の毛並みにピンと立った耳。ふさふさの長い尻尾を持つ中型犬くらいの体格。何より印象的なのは宇宙を想起させるようなエメラルド色の瞳。  噛まれる。咄嗟に逃げ出そうとするが、考えに身体は相反して尻もちをついた。ゆっくりと迫って来る犬に身体が硬直し、目をつむる。  暗闇の中

          【解説】間違いあい/救いあい【短編小説】

          こんにちは。 私はここ最近、YouTubeにてゲーム実況の閲覧にハマっています。 実況者の言語スキルがすごく秀逸でゲームの内容よりそちらに集中してしまいます。ワードセンスはもちろん、視聴者を魅了する感情の起伏や言い回し。日常では聞かないような語彙がたくさん。 ケラケラ笑いながら言葉を勉強できるっていいですね。で、そのまま寝落ちする毎日。 尺稼ぎの前口上はこれくらいにして『間違いあい/救いあい』の解説でも。 私はこの短編が大好きです。自画自賛。 自分で書いておきながら愛しちゃ

          【解説】間違いあい/救いあい【短編小説】

          冬と浮遊(日々は風船後日譚)【短編小説】

           あれから何ヶ月も経った。  かつて占領されていた団地は、今では驚くほどのんびりした時間が流れている。多くを失った悲しみを帯びる風が吹いたり、恐怖に縛り付けられた緊張が一気に解けた安堵だったりと多種多様な雰囲気が装飾されてはいたが、それも季節の移り変わりと共に落ち着いていった。  ナ国は撤退した。その速さは脱兎の如くであったらしい。  聞いた話によるとこうだ。  団地を奪取しようと都市軍が工作員を送り込んでいた。彼らはナ国の上層部が重用していた有能な兵士を惨殺し、さらに団地

          冬と浮遊(日々は風船後日譚)【短編小説】

          【解説】≒エイリアン【短編小説】

          こんにちは。 11月の初日ですね。 季節の移り変わりは早いもので、ついこの間まで暑い暑いとうわ言のように唱えてたのに、今となっては秋物の服を着込んだ生活をおくっています。 あと2ヶ月ほどで今年も終わるなんて嘘みたい。この前始まったばかりじゃん。 大切にしなくちゃいけないものほど、呆気なく流れてしまいますね。 さて、先日書いた【≒エイリアン】の解説でも。 エイリアン(イマジナリーフレンド)目線の物語です。 エイリアンの推し活のようなものでしょうか。悩める主人公を肯定しながら導

          【解説】≒エイリアン【短編小説】

          間違いあい/救いあい【短編小説】

           どうしてこうも間違っていくのだろう。喜びよりも哀しみに割合が偏っている。情熱は擦り減り、虚しさに慣れ、愛する人が夢に溺れた。  変化は遅効性の毒のように日常を蝕み、弾力を感じた確かさは徐々に磨耗する。  彼女はとても真面目な人だった。どんな困難に対しても最善を尽くし、理不尽な出来事が起ころうがじっと耐えられる、心の生かし方と殺し方の使用法が上手な人。  僕は誰からも好かれる彼女を当然のように好きになった。不思議と彼女も僕に惹かれたようだった。 「あなたの淋しそうで疑り深

          間違いあい/救いあい【短編小説】

          ≒エイリアン【短編小説】

           外を歩く時、視線は足もと半径五メートル。  俯きながら延々と続くアスファルトばかりを見つめている。車や自転車の気配がある時だけ周囲を伺う。  見上げれば青い空が一面に広がっているのに、重力に似た憂鬱が頭を押さえつける。  君は今日もそうやって細々とした予定を消化するためにマチを行く。  電車ではなるべく端に座り、文庫本を開く。  心のざわめきに邪魔されるから、内容は全然入ってこない。文字列に目を滑らせ続ける。  ほとんどの乗客はスマホを覗き込んでいた。まるで自

          ≒エイリアン【短編小説】

          【解説】日々は風船【短編小説】

          こんにちは。 爽やかな少し肌寒い日曜日ですね。 気温が落ち着いてきたせいか、食欲が荒ぶります。お昼からは外出して、そのとき胃が求めたお店でランチでもしてこようと企んでいます。私はこの季節が一番好きです。 それまでは暇なので先日書いた『日々は風船』の解説でも。 少し長い物語でしたので解説だけ読めば本編を読まなくてもいいように心がけます。 3行で説明すると 「逃げて 爆発して 飛んだ」 意味不明ですね。ちゃんとします。 舞台は軍事侵略された団地群。 軟禁化された住民の脱出譚

          【解説】日々は風船【短編小説】

          日々は風船【短編小説】後編

           あれからどうしたのかはあまり覚えていない。  自室に居るということは逃げ帰ってきたのだろう。約束通り、彼女を置いて。  耳鳴りが止まない。呼吸がうまくできない。匂いを感じない。体温が足りない。心臓がひどく、痛い。  銃声の爆発音。彼女の頭から血液が吹き出す。彼女を肩に担ぎ、去っていく赤髪の兵士。  その先の記憶はない。永遠にも感じた時間。網膜に焼きついた光景。  罠にかけられていたんだ。浅はかだった。あの赤髪の兵士はわざと持ち場を離れ、脱走者を監視していた。任務を

          日々は風船【短編小説】後編

          日々は風船【短編小説】前編

           ナ国の侵攻にあっさりと俺たちの住処は奪われた。戦える者はバットやナイフを握り、ナ国の兵士へ突貫していったが瞬殺と言っていいほどの速さで返り討ちにあった。  奴らの持つ自動小銃には近距離戦闘など羽虫をあしらう作業と大差ない。  ここは十余棟あまりが立ち並ぶ団地群。小高い丘に建てられているので周囲の景色が見通しやすく、奴らの拠点とするにはうってつけの立地だったのだろう。  屋上から見渡せば団地をぐるりと取り囲む四メートルの鉄柵が防御壁となり、敷地内に入る出入り口は五つほど

          日々は風船【短編小説】前編

          【解説】再生の儀式【短編小説】

          はじめまして。 先日書いた『再生の儀式』の解説をしてみたいと思います。 【解説】と言ってはいますが、その時どんな気持ちでいたのか、何を思っていたのかを残しておく為の日記みたいなものです。 きっといつか忘れてしまいますからね。 この作品は私が一番辛かった時期を客観的に『彼』に投影した切り取りのようなお話です。 1200字程度にぎゅっとおさめたので時間軸は短く感じますが、実際は三年ほど経っています。 何もかもうまくいかなくて、悪いことばかり頻繁に起きて自暴自棄の真っ只中を漂うだ

          【解説】再生の儀式【短編小説】

          再生の儀式【短編小説】

           彼は今日も眠れない。なにか成さねばならないという一日の終わりは、結局なにも成せぬままベッドの中でくすぶっている。寝つきの悪さは日々、悪化の途を辿っているようだ。  カーテンからのぞく薄い隙間が白々しい顔で、今日から抜け出せないままでいる彼に明日を放り投げてくる。 「眠れないなら眠くなった時に寝たらいいじゃん」  そんな無責任な言葉を何度聞いただろう。そしてその次に続く声はこうだ。 「どうせ明日も休みみたいなものなんだからさ」  確かにそうだ。他人から見れば彼はただの怠け者に

          再生の儀式【短編小説】