裁判員裁判 証拠写真を見て急性ストレス障害 刺激的な写真をイラスト化していいのか?
2013年に、強盗殺人事件で裁判員を担当した女性が、遺体の写真を見て急性ストレス障害になったとして、損害賠償を求めて国を提訴した。
証拠写真をそのまま用いるか、イラストを用いることを許容するか、現在も意見の対立がある。
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裁判員裁判とは
裁判員制度とは、刑事裁判に市民の視点を取り入れるために、国民の中から選ばれる裁判員が刑事裁判に参加する制度である。
裁判員制度の対象となるのは、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪などの重大な犯罪の疑いで起訴された事件である。
裁判員制度が導入されて12年が経過した。
証拠写真のイラスト化
刑事裁判における遺体等の証拠写真が裁判員にとって刺激的すぎるといった理由から、遺体や傷口の写真といった生々しい「刺激証拠」の代わりに、裁判員の心理的負担を減らそうとイラストで立証する手法が定着している。
転機となったのは、2013年に裁判員経験者が起こしたある裁判である。
強盗殺人事件で裁判員を担当した女性が、遺体の写真を見て急性ストレス障害になったとして、損害賠償を求めて国を提訴した。
判決は、裁判員制度そのものは合憲とする一方で、「裁判員を務めたこととストレス障害発症には因果関係がある」との判断を示した。
この判決以降、裁判所は遺体の写真など「刺激証拠」の採用に慎重になった。
検察の危機感
刑事訴訟法が掲げる法の目的は「事案の真相究明」である。
最も証明力の高い証拠が使われないのは、被害者や遺族の心情にも反するのではないかという意見がある。
問題となるのは、証拠写真とイラストでは、事件に対する印象が大幅に変わってしまうことがあるということだ。
加工写真は悲惨さを減殺させる点で被告に有利になるとされる。
例えば、殺人事件で被告人の殺意の有無が裁判において争点となった場合、基本的には殺傷部位がどのような凶器でどの程度の深さで、何回刺されたのか、などが審理の中心となる。
その際、遺体の殺傷部位の写真を見て、裁判員らは殺意の有無について判断を下すことになるが、これがイラスト化されると傷の大きさや生々しさが伝わりにくくなると同時に、証拠による事実認定という刑事裁判の鉄則を破りかねないともいわれる。
悲惨さこそが公正な裁判にとって重要ではあるが・・・
遺体の殺傷部位の悲惨さこそが(被害者や遺族にとっても)重要なのであるが、しかし、証拠写真をすべて写真のまま出すと、先に述べた急性ストレス障害を発症した女性のように、裁判員の健康状態などへの懸念が生じる。
裁判員の心理的負担を減らそうとイラストで立証する手法は定着しているが、公正かつ妥当な判決を導くべく証拠写真をそのまま用いるか、裁判員への精神的ショックを考慮してイラストを用いることを許容するか、現在も意見の対立が見られる。
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