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栄養を考える際の注意点!ニュートリショニズム(栄養主義)にはなるな!

こんにちは、パーソナルトレーナーユウ(Twitter:@supps-jiten)と申します。

簡単に自己紹介しますと、大学で栄養学や運動生理学を専攻し、現在はパーソナルトレーナーとして働いています。

運動(特に筋トレ)が好きで、筋トレ歴は6年になります。自身が理系の大学院卒であることからもわかるように根っからの理論派です。筋トレやダイエットにまつわる様々な説、理論を検証するのが好きで、様々な文献を読んでは、それを私が運営する「サプリ辞典」というサイトで発信しています。

今回のnoteでは私が栄養学を学ぶにおいて最も印象に残っている「ニュートリショニズム(栄養主義)」について紹介します。

食べ物を栄養素の集合体として考える考え方を「ニュートリショニズム(栄養主義)」と言います。これは様々な観点から批判の対象になるような考え方です。しかし、サプリメントや栄養について考えていくと自分が知らず知らずのうちにニュートリショニズムに陥っていることも少なくありません。ここでニュートリショニズムの考え方について学習し、自分を客観的に見られるようになりましょう。

ニュートリショニズム(栄養主義)とは

「ニュートリショニズム」とは2008年のジョージー・スクリニス博士の論説「ごめんね、マーガリン」に初めて登場した言葉で、日本語では「栄養主義」と言われます。

その考え方とは「食べ物を栄養素としてのみ、あるいは栄養素の集合体としてのみ捉える考え方」と定義されており、栄養素がどれだけ含まれているかが食べ物の価値を決める、という考え方がその根底にあります。

私はこの考え方に反対です。

当然、ジョージー博士もこの考え方を批判する文脈で「ごめんね、マーガリン」を書いています。この考え方には以下のような問題点があります。

問題点① 食べ物に対する評価が二転三転し、それに対して一喜一憂する

ニュートリショニズムは食べ物を栄養素の集合体として考える考え方なので、新たな栄養素に対する良い研究結果が発表されるたびに食物に対しての評価が上がります。

例えば、ベータカロテンに対する良い報告が発表されると、これを多く含む人参がスポットライトを浴び、メディアや本屋には人参を使った番組やレシピ本が並びます。

しかし、仮にベータカロテンに対する悪い報告がなされればメディアは人参を毒物かのように叩き、人参の売上は減るでしょう。

このように食べ物を栄養素としてしか見れなくなると、研究結果によって自分の食物に対する評価が二転三転するので自分の「軸」が定まらなくなるのです。

脂肪を多く含む食べ物は避けるべきと考えられていた頃は、アメリカでのアボカドに対する評価は低いものでした。ところが一価不飽和脂肪酸がコレステロール値を改善するとわかると、アボカドは健康的な食べ物という評価になりました(2)。
栄養主義(ニュートリショニズム)とはなんですか?より

問題点② 食材に含まれる栄養素の相互作用を無視してしまう

ニュートリショニズムでは個々の栄養素について議論がなされることが多いので、それぞれの持つ栄養素のダイナミックな作用を無視してしまうことがあります。

例えば、ニンニクのアリシンが疲労回復に良いという情報があります。コマーシャルやメディア情報でも良く聞きますよね、ニンニクの疲労回復や滋養強壮効果。

しかし、この効果が出るのはニンニクに含まれるアリシンという成分がビタミンB群の吸収を促進するからです。

つまり、ニンニクが疲労回復に効くのは体内にビタミンBが豊富にあるというのが前提となった情報なのです。

そのため疲労回復にと思ってニンニクをせっせと食べてもビタミンBが少ないと効果を感じられないかもしれません。アリシンとビタミンBは切っても切れない関係なのです。

にも関わらずアリシンだけをありがたがり、信仰しても意味がないですよね。

個々の栄養素ではなく、複数栄養素の相互関係も考えることが重要です。

食べ物は何十種類もの栄養素が一緒くたに含まれ、それらが相互作用することによって成り立っています。

また、仮に単一の栄養素が抜群の働きをしていたとしても、その優秀選手を何十種類もの栄養素の中から見つけ出すことは難しいものです。

「サプリはあくまで補助でできるだけ自然の食べ物から」と言われる一番の理由はここにあると感じています。

サプリメントだと自然界の含有バランスを無視した配合が可能ですし、単一の栄養素に着目したとしてもそのあてが当たっているとは限りません(研究や実験によって優秀選手を特定することは確かに可能ですが、研究に頼りすぎるのも問題だというのは①で述べた内容です)。

また、各栄養素の相互関係や前提条件が揃っていないと効果が見込めないことも先述した通りです。

これらの抗酸化物質が体内に消化吸収される時、どのような相互作用が起こっているのか、どの作用が健康効果をもたらすのかを特定するのは、非常に難しいことです。特定の抗酸化物質のサプリメントを摂るよりも、できるだけ食べ物から摂取することをポラン博士は薦めています。
栄養主義(ニュートリショニズム)とはなんですか?より

問題点③ 単一の栄養素に引っ張られて盲目的になる(主語が大きくなる)

先ほど、ベータカロテンの例を用いて説明したので、ここでもベータカロテンを使いましょう。

仮にベータカロテンの悪影響を報告する研究結果が出たとします。

すると、ベータカロテンを多く含むニンジン、ほうれん草、カボチャといった緑黄色野菜がボイコットの対象となるでしょう。この場合は、ベータカロテンなのでボイコットの攻撃範囲が狭い範囲で済んでいますが、これが「糖質」だったらどうでしょう?

デンプン質の野菜(ニンジン、カボチャ、イモ類)を含め、穀物、フルーツなどがことごとく矢面に立ちそうです。

確かに糖質過多といった点で摂らない方がよい野菜やフルーツもあるかもしれません。もちろん、個人の体質の問題もあるでしょう。

しかし、「糖質は悪」もして大きすぎる主語を掲げると問題も出ます。

例えば、ブルーベリーが持つ抗酸化作用、ニンジンが持つベータカロテン、ジャガイモのデンプンの持つ整腸作用…これらをすべて放棄することになるのです。

糖質を避ける代償としてこのようなメリットを放棄することになるのです。

これが私が糖質制限にあまり積極的でない理由です。

これも「糖質」という単体の栄養素のみを評価し、さらに糖質という主語が及ぼす範囲が大きすぎることによる弊害です。

実際の食物には「糖質」は存在しません(サプリメントではあるでしょうが)。糖質は栄養学上の分類に過ぎません。栄養素だけを評価し、議論するとニュートリショニズムに陥ることになります。

問題点④ 生鮮食品と加工食品の区別がつかない

栄養素がどれだけ含まれているかという軸だけで食べ物を評価し始めると、自然の食物よりも加工食品やサプリメントの方が優れているということになります。これらは栄養素や配合量を生鮮食品より変えやすいですからね。

つまり、ニュートリショニズムに則った場合、まいにちの食卓に並ぶのは加工食品とサプリメントだけ、ということなります。

多くの人が「イヤイヤ、それはマズイんじゃ?」と思うはずです。その違和感の根拠になっているのがニュートリショニズムなのです。

私の伝えたい事

確かにサプリメントの利点は数え切れないほどあります。

サプリメントを利用することで無駄な栄養素を摂取しなくて良くなるし、何より単一の栄養素を自分の考える摂取量で摂取可能です。

しかし、自分がニュートリショニズムに陥らないようにしてください。

サプリメントで単一の栄養素だけに注目してしまうと

「なぜあのサプリメントを摂ってるのに効かない?」

「あのサプリメントを摂れば○○が治るはずだ」

とサプリメントに過剰な期待を寄せることになってしまいます。

もちろん、サプリメントは栄養補助ですので、期待を寄せるのは問題ありません。そもそも期待しないサプリメントは買わないですよね。

しかし、人間の身体は様々な栄養素が組み合わさって出来ています。単一の栄養を摂ったからと言って何かがすぐ解消するほど単純じゃないのです。(もちろん、解消する場合もあります)

例えば、マルチビタミンを選ぶ際も単一の栄養素どうしを比べて買うのではなく、自分の体感を重視してみてはどうでしょう?

マルチビタミンAとBにおいて、ボトルに成分表示では明らかにAの方が優秀でも、Bの方が体感が良いということは往々にしてあるものです。

その根拠になるのがニュートリショニズムかもしれません。

(各栄養素のバランスや相互作用がBの方が優秀だったと言える)

ニュートリショニズムの考え方は私が栄養学の勉強をしてきた中で最も印象に残っている考え方です。ぜひ、皆さんも心に留めておいてもらいたいと思います。
それではここまで読んでいただきありがとうございました。


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