整体屋の開業方法
1.整体屋のペイライン
マンガの単行本を出すためには、SNSのフォロワーが1万は必要だそうな。
編集さんにそう言われる。
ペイラインがそのくらいになるのだろう。
1,000冊~2,000冊を刷って売り切れるラインが単行本を出す最低数だとして、フォロワーが10倍必要。
新刊を買ってくれるのはフォロワーの10~20%前後だ。
それ以下の売り上げは電子書籍じゃないと商売にならないと。
でも整体なら、ネットのフォロワーはこんなにいらない。
せいぜい100人で間に合う(そもそもSNSにネタを上げてもフォロワーが付きづらい業種だし)。
2~3か月スパンで実際にお越しになる常連さんが10人いれば、あとは入れ替わり立ち替わりする浮動層でなんとか回していける。
商売の難易度としてはもっとも低い方ではないか。
この「常連さん10人」というのは家賃を確保するための固定層で、単価5,000円なら家賃は5万前後だ。
赤塚の物件もここら辺を逆算して決めた。
月に10人診たら、あとはボーナスみたいなもの。
うちなら稽古にも人は来るし寄居本院にも分散して来るから、実際の操法ノルマはもっと軽い。
分院だけで月5人くらい?
週1人か2人で間に合う。楽だな。
こんなに楽してるのは木島整体だけだ。
もちろん光熱費や通信費もあるのだが、飲食業みたいに経費がめっちゃかかる仕事に比べたら、やはりノルマは低い。仕入れ損がないのが大きい。
それでも業界の生存率は10年で5%くらい。
みんな生活水準の要求が高すぎたり、技術がへぼだったり体力がなかったり、辞める理由は様々だろう。
経営センスがないのと実力がないのが半々だろうな。
2.開業準備資金
開業にあたって100万くらい用意しておくといい。
これは物件の審査に受かるための準備金でもある。
またお客さんが付き始める1年ほどの初期閑散期を、バイトと両刀でしのぐためにも貯金が必要。1年目が一番大変なのだ。
3.物件探し
物件は、3路線乗り入れるターミナル駅から3分くらいだと初期費用が30万以上することもある。うまく探すと20万前後でいける。
ただそういう場所はたいてい条件が悪い。あってもすぐ埋まってしまう。
地道に探さないといけない。
整体ならテナント用物件専門サイトを探すよりも、SUMOなどに出てくるふつうの居住用賃貸物件で「事務所利用可」の物件を条件で絞る。
そして出てきた物件の担当不動産屋に「整体業利用できますか?」と問い合わせメールを送りまくる。
これはSOHOなど小規模事業主にも貸し出しをしてくれる賃貸物件だ。
絶対数は少ないが、テナントよりも圧倒的に家賃と初期費用が安い。
都市部の整体屋の場合、看板を見てくる人なんてほとんどいない。むしろ人通りの少ない静かな場所で、ネット集客だけに絞った方がコストパフォーマンスは圧倒的にいい。
また駅から徒歩5分以上は絶対に避けたほうがいい。
浅草駅から22分のダメ立地に開業した整体屋、その夜逃げ後の写真が物件サイトに残っていたのを見かけた。
生々しかったな。気がひきしまった。
場所は地方だろうが実家もタダで使えると、ランニングコストが浮くので失敗率が劇的に下がる。家賃ゼロの整体屋なんてどんなバカでも負けない。
現実と理想のギャップを知るためにも、コストゼロの自宅開業は勉強になる。人の来ない(名前がまだ売れていない)開業初期はものすごく有効。
4.まとめ
ひっくるめると、整体屋は経営的センス(≒生活力と金銭管理能力)がなくてもつぶれるし、実力がなくてもつぶれる。
だが営業力がなくても実は問題ない。
というのも実力さえあれば、お客さんが勝手にお客さんを連れてきてくれるからだ。操法の結果がいいとそれが自然に広告になる。
なので一番大変なのは、やっぱり修行時代だ。500回くらい練習する必要があって、最低3年くらいかかる。
私の先生が営業力皆無なのを修行中に横で見ていて、「あれほど社会性と社交性のない人間でも都市部でやっていけているのだから、私が負けるはずはない」と私は踏んだ。
いやな弟子だ。