【小説】珍しい緑の雷に遭遇した

 その日の午後、私はいつものように自宅近くの公園を散歩していた。空はどんよりと曇り、雨が降り出しそうな気配が漂っていたが、涼しい風が心地よく感じられた。
 突然、遠くで雷鳴がとどろき、空が一瞬明るくなった。私は空を見上げ、これから始まるであろう嵐に備えて、早めに帰宅しようと歩みを速めた。

「え…?」
ピシャーン!

 その時、何かが異常に輝いていた。目の前の空が一瞬、緑色に染まったのだ。驚きのあまり足が止まり、呆然と立ち尽くしていると、突然、緑色の雷が私の目の前を通過していった。
 普通の雷とは違う、鮮やかで美しい緑色の光が一瞬にして空を切り裂き、その後に轟く雷鳴が地面を揺るがせた。

「カッコいい…」

 思わずその言葉が口をついて出た。自然の力が生み出すその神秘的な光景に心を奪われていた。しかし、同時に「もし当たっていたら…」という考えが頭をよぎり、全身に冷たい汗がにじんだ。
 雷に当たるという恐ろしいシナリオを頭の中で思い描くと、恐怖で体が震えた。

 この不思議な緑の雷について知りたくなり、帰宅後、早速インターネットで調べてみることにした。検索を始めると、緑色の雷は非常に稀で、特定の条件が揃わなければ見られない現象だということがわかった。

 その日は、奇跡的なタイミングと気象条件が重なって、私はこの珍しい現象に遭遇したのだ。ネットの情報を読み進めるうちに、再びその光景が脳裏に浮かび、胸が高鳴った。
 あの瞬間、私は自然の壮大な力とその美しさに触れることができたのだ。

 翌日、私は仕事先で同僚たちにこの話をした。皆が一様に驚きと興味を示し、話題は大いに盛り上がった。
「そんなことが本当にあるのか?」と疑問を持つ者もいれば、「すごい、見てみたかったな」と感嘆する者もいた。

 その日の帰り道、私は再び公園を訪れ、あの場所に立ち尽くした。昼間の明るい公園は、昨夜の嵐の名残も感じられないほど穏やかで、鳥のさえずりが響いていた。
 しかし、私の心にはあの緑色の雷の記憶が鮮明に残っていた。自然の力がいかに強大で、美しいかを改めて感じながら、私はこの奇跡的な体験に感謝した。

 数日後、私は気象学に詳しい友人に会う機会があった。友人にあの緑色の雷の話をすると、彼は興味深げに耳を傾けてくれた。
「それは本当に珍しい現象だね。緑色の雷を見るなんて、君は運が良かったよ。」友人はそう言いながら、自分の持つ気象学の知識を駆使して、詳しく説明してくれた。

 その後も、私はしばしば公園を訪れては、あの日のことを思い出した。緑色の雷は、私にとって忘れられない出来事となり、その後の私の自然観を大きく変えるきっかけとなった。
 自然の力は恐ろしいものでもあるが、その美しさと神秘には心を奪われるものがあるのだ。

 ある日、私は図書館で気象現象に関する本を手に取った。そこには、私が経験した緑色の雷についても詳しく書かれていた。
 その本を読んでいると、ますます自然現象への興味が湧き上がり、もっと多くのことを知りたいと思うようになった。

 この出来事をきっかけに、私は気象観測を趣味とするようになった。日々の天気予報や気象ニュースに敏感になり、雷が発生しそうな時にはカメラを持って外に出かけることが増えた。
 もちろん、雷の危険性を十分に理解した上で、安全を最優先にしている。

 また、SNSを通じて同じように気象現象に興味を持つ人たちと繋がり、情報交換をするようになった。
 中には、プロの気象学者やアマチュアの気象観測者もおり、彼らとの交流は私にとって新たな学びの場となった。

 緑色の雷を目の当たりにしたあの日から、私の生活は一変した。自然の力に魅了され、その神秘を探求する旅が始まったのだ。
 これからも、私は自然の驚異を見つめ続け、その美しさと恐ろしさを忘れずに生きていこうと思う。そして、いつの日か再びあの緑色の雷に出会えることを夢見ている。

 そして私はストームチェイサー(嵐の追跡者)になるのとを決めたのであった。そのために今の仕事も辞めた。
 緑色の雷は、私にとって単なる一瞬の出来事ではなく、生涯にわたって追い求めるべき目標となったのである。
 ストームチェイサーを続けていれば、きっとあの一瞬で魅了された緑色の雷にまた出会える気がするから。

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